ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2008話 作戦会議が始まりそう

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「う゛ぅ……なんか頭痛いな。中途半端に寝たからか?」

 痛む頭を押さえながら体を起こす。何がどう痛いのか良く分からないが、頭の中が無駄に重い感じがする。目を瞑り両手で頭を包むようにする。回復魔法を発動する。痛みは取れていないような感じがするが、頭が重い感じがするのは無くなった。

 痛く感じているのも、記憶や神経にある残滓なので、実際にはもう痛みは治まっている。

 ゆっくりと首を回しコリをほぐし、時計を見る。

「もうすぐ、夕食の時間だな。っとその前に、バザールから作戦内容の連絡が来ていないかな……」

 タブレットを操作して、新着メールを確認する。1時間ほど前にバザールから、簡単な段取りについてメールが来ていた。綾乃のアイテムを実験するための計画も一緒に書き込まれている。

 本来の計画では、領主館も一緒に攻めて混乱させる予定だったのだが、催眠弾を使うことで攻めるのではなく、領主館全体を眠らせる方針にシフトしたようだ。

 勇者の方でも突入前に使う予定で、外気を完全にシャットアウトできるパワードスーツ持ちを中心に、部隊を組んだようだ。予想以上に効果が高かったみたいだな。

 囚人で何個か試してみた所、魔法薬としての効果を持っているため、呼吸による摂取でなくとも、皮膚につけば効果を発揮してしまうとのことだった。これには綾乃も頬をポリポリと掻くしかなかったようだ。

 呼吸による摂取よりは効果は低いが、それでもまったく体制の無い人間であれば、ものの数秒で眠りに落ちてしまうらしい。予想以上にヤバいな。霧状になって一瞬で広がるから、外気から完全にシャットアウトしないと、眠りに落ちてしまうということだ。

 多少隙間があっても、扉を閉めることで対応できるみたいなので、建物の中で使っても、どこまで効果があるか未知数だな。ビルみたいな空調設備であれば、隔離されていない限り全体に広まりそうだが、この世界の建物では、そうはいかないだろう。

 集合時間は、22時か。夕食を食べたら、少し子どもたちと遊んでお風呂に入ってからでも、間に合いそうだな。

 シンラの奇行を見ながら食事を食べ、ミーシャたちに連れられてウッドデッキに出て、一緒にプランターの観察をしたり、シンラに呼ばれ鉢植えをみたりした。もっと早く育つようにしろ! みたいな感じでシンラに訴えられたが、俺には植物に干渉する能力は無いので無理だな。

 お風呂では、俺がサウナに入ろうとするとシンラも一緒に入ろうとするため、母親たちに止めてもらったが頑として譲らないため、一緒に入ることにした。

 俺は熱いところにいるが、シンラは子どもたちの体が熱くなりすぎないように作った、水の流れている足湯のような場所で半身浴をしている。サウナに入って俺みたいに楽しむというより、俺が入るから対抗して入る……みたいな感じだな。

 乾燥した空気は体に悪いので、魔法で湿度を高めている。シンラの場所だけ、暑い夏の日にプールでくつろいでいるような状況になっていた。

 どちらが長く入っていられるか勝負しているわけではないが、俺の方が先に出ようとしたときに、少し勝ち誇った顔でこっちを見て、最後にドヤ顔を決めていたな。ちょっとイラっとする表情だったわ。

 そもそも勝負にならんのに勝った顔されるのは癪だが、シンラの事だからそれでもいいかと放置することにした。シンラの状況って、寒い日にコタツでアイスを食べるのと同じマッチポンプ感があるな。

 くだらないやり取りをした後、子どもたちは部屋に戻り、俺は早めに暗部のマイワールドへ向かった。

 マイワールド内では、出撃前のピリッとした空気は無く、程よく緩んでいる感じがする。実力から見ても、相手が反則級の武器でも使わない限り、怪我をする確率はほとんどないから当たり前か。

 そんな空気の中、進んだ先では少しピリッとした空気が流れていた……

「そこよ! やっちゃいなさい!」

 綾乃の声だな。何をしているのか知らんが、やれということは誰か模擬戦でもしてるのかね?

 声のする方へ歩いていくと、訓練場へたどり着く。その中心では、鬼人の1人と全身が革鎧に包まれている人型がいた。暗部の方は顔が見えているので判断できるのだが、全身革鎧の方は顔が見えないので人形と表現した。

 普通なら暗部の誰かだと思うのだが、綾乃がここにいてどうやら全身革鎧の方を応援している……

 鬼人が受ける時に重い音がするのは分かるが、全身革鎧が攻撃を受けるとたまに金属音の様なものが聞こえる。生身同士で殴り合っても、金属音の様な音がすることはままある。だけど、革鎧を装備しているのに、この音は聞かないよな。

 鬼人も物理系に特化しているから動きは早いのだが、全身革鎧の方は動きが早いというより反応が早いな。しかも鬼人が後手に回ることが多い。物理に特化している相手にこうも先手を取れるのは、この鬼人以上の物か人造ゴーレムだろう。

 今回はおそらく、人造ゴーレムなんだろうな。綾乃が応援しているということが、俺の中で確信を高めていく。だけど人造ゴーレムにしては、少し動きが鈍い気がするんだよな。鬼人が手を抜いてるのかね? それとも俺たちが訓練に使っている物とは別物かね?

 全身革鎧が投げ飛ばされて、関節をきめられた段階で試合が終了する。

 綾乃に聞いてみた所、人造ゴーレムの動きが鈍く感じたのは間違いではなかったようだ。鬼人たちの能力に合わせて、デチューンした人造ゴーレムだったみたいだ。筋肉に使ったマッスルメタルの合金が、本来の物より性能の低い金属を使ったんだとさ。

 革鎧を装備させていたのは、動きを多少制限する意味もあったようだが、それ以上に殴り合った時に金属むき出しのままだと、相手の拳やガードをされた際の効果を減らすためだとさ。確かに生身でやりあう時に、人造ゴーレムの攻撃を受けると、鈍器で殴られたような物だからな……骨や体の芯に響くんだよね。

 それでも、練習相手としてはいいので、たまに訓練で使っているな。骨折しても治せばいいだけだしな。

 次の対戦が始まり眺めていると、バザールが戻ってきたようで、ブリーフィングルームへ移動する。
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