ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
2,101 / 2,518

第2101話 シンラの受難

しおりを挟む
 橋を作りに拠点に戻ると、ゲートを作った部屋の入り口の外で、シンラが不貞腐れた顔で待っていた。対照的に両サイドにいるプラムとシオンは、ニッコニコの笑顔でくっついている。

 状況の理解できない俺は、その場に立ってシンラの様子をながめる事にした。

 状況が改善することなく、5分ほどが過ぎた。

 俺が戻ってきたことに気付いたミーシャたちが、俺の疑問に答えてくれた。

 どうもシンラは、起きた時にベッドにしていた俺がいなくなっていたため、不満オーラを爆発させていたらしい。爆発と言っても、可愛らしい癇癪だったと姉たちは笑っている。

 起きた時に俺がいなかったことに、腹を立てているだけで、それ以外に何かがあったわけではなさそうだ。それなら、放置しておけばいいか。

 人をベッドに使ったのに、いなくなったからって八つ当たりされても困るからな。

 どうやら、話には続きがあって、プリプリ怒っていたシンラを、ライラが注意したことで、両頬が風船みたいに膨らんでいるんだとさ。

 注意された理由は理解できたようだが、まだ感情を制御できないシンラは、見るからに不満があると全身で示すように、今の状況になったのか。

 気持ちは分からなくもないが、それ以上に気になるんだが……注意された理由が理解できた、ってところにビックリしているんだけど……地球には、大人だって怒られた理由が判らない奴も一定数いたんだけどな。

「とーたん、それはこの世界でも一緒だよ。お母さんたちが前に話してくれたんだけど、貴族やお金持ちで甘やかされた人たちって、常識が通じないんでしょ? そうなってほしくないから、常識はしっかり身に付けるようにって、聞いたよ」

 その通りなんだけど、まだ小学校に入る歳になっていないシンラと、クソ貴族や金持ちの脳足りんを一緒にしたらダメだろ。注意の仕方によっては、自主性が失われてしまうんじゃないか?

 シンラの将来に不安を抱いていると、

「そんなことにはならないから、安心して。しっかりと、自分がしていたことを自分がされたら、どう思うのか考えさせたわ」

 ライラが現れて、注意をしたときの話をしてくてた。

 今回は俺がベッド代わりにされていたけど、シンラがその立場になったら……と言う話をしたようだ。とはいえ、大人の俺がシンラの上で寝ることはないから、プラムたちに協力をしてもらって、理解してもらったようだ。

 プラムたちなら、シンラにくっつくようなことなら、喜んで協力しそうだな。その時のシンラの様子が目に浮かぶな。

 ……って、そのせいで俺に八つ当たりしてるんじゃないか?

 ライラは苦笑しながら、頬をかいていた。

 何となく、そんな気はしてたのか……出来れば、俺に影響が少ない方法をとって欲しかったな。

 その後の話もあったようで、協力したとはいえ、シンラは自分がされて嫌だったから、プラムたちに色々言ったそうだが、尽く通用しなくて不貞腐れたらしい。

 くっついて寝るのは疲れる! と言って、シンラがプラムやシオンを抱き枕のようにしたのだが、2人は反対に喜んでしまった。上に乗るようなことも、シンラには苦痛でも2人は、嬉しいことだったようで、話にならなかったんだとさ。

 この状況も目に浮かぶわ。

 ブラムとシオンに関しては、もう少し大きくなってから、妻たちや姉たちに色々教えてもらうといい。

 シンラを放置して俺は仕事に戻ろう。

 ……で、シンラよ。何故俺の行動を邪魔するのだ?

 そもそも、俺って何も悪い事してないんだけどな……

 さて、どうするべきかね。ライラも一緒にどかそうとしてくれるが、シンラはプラムとシオンを味方につけて抵抗してくる。こういう時は本当に仲がいいよな。

 少し相手をしないと、どうにもならないかな?

 橋は、少し無理をすればすぐに作れるし、シンラの相手をしてやりますか。で、シンラよ、何がしたいんだ。聞いたところで、この子たちはその時のノリで遊んでいるから、明確に何がしたいということは無いんだろうな。

 大体俺に付き合ってくれるのは、体を動かす系の遊びなんだよな。となれば、

「シンラ、外に行くぞ!」

 勢いとノリで、シンラたちを外へ連れ出す。一緒にミーシャたちも来てくれるのが少し嬉しい。

 途中で、今日の御守り担当の妻たちも合流して、グランドへ出る。

 運動を始める前に、準備体操をしよう。ラジオ体操第一で体をほぐしていこう。

 ミーシャたちは俺の真似をして、しっかりと体を動かせているが、下の子たちは……体操っぽいんだけど、短い手足で下手だけど頑張って、ツイストダンスをしているように見える。

 笑っちゃいけないと思うのだが、一生懸命やればやるほど可笑しく見えてしまう。耐えられずに笑ってしまうと、シンラから無言の圧力がかかる。だけど、まだまだ迫力が足りないな。

 下の子たちは、姉たちの真似をすることにはまっているので、ミーシャたちの訓練をすることにした。午前中は勉強をしていたみたいで、体を動かしていないのでちょうどいいだろう。

 さすがに模擬戦をするためには身長が足りないので、ボクシングのミット打ちみたいなことをしようか。

 脛と手と前腕にミットをつける。屈み腰になってミーシャたちのミット打ちの相手になる。

 妻たちの訓練を受けているだけあって、3人とも動きがいい気がするな。ミットの音もキレイにパンパンとなっている。

 その後ろで下の子たちは、姉たちの真似をして手足をワチャワチャさせている。その姿がまた面白いので、笑いそうになってしまう。

 シンラたちも、姉たちのようにミット打ちをしたいのか、必死にせがんでくる。こんな時ばっか可愛らしくなりおって……仕方がないな。無理はするんじゃないぞ!

 って言った瞬間に、コロッと態度を変えやがって! こんな高等テクニックを覚えたのやら……子どもたちに翻弄されるなんてな。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...