ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
2,121 / 2,518

第2121話 試行錯誤は無駄だった

しおりを挟む
 胃に少し限界を感じつつ、食休みを取っている。さて、午後は何をするか? 確か朝に何かしなきゃと思ってたんだけど……何だったっけ? 朝に、治療師の人たちが来て……あっ、あれだな。部屋が足りなくなるかもだから、部屋を作るかって考えてたな。

 部屋の造りは、今ある奴と同じでいいだろう。変に部屋の形が違うと、トラブルになりそうだからな。もしなんかあるなら、俺が拠点に残っている間に妻たちが進言してくれるだろう。

 食休みを挟んで、拠点の中が落ち着いたら、部屋の増設に行こうかな。

 30分くらいすると、何か暴れていたシンラたちがスヤスヤと寝始めたので、防音設備が整っている俺たちのエリアへ連れていき、そこでシンラたちを並べておく。いつも通りすぐに抱き着く、プラムとシオン。

 ほっこりとする一幕を見て、俺は午後の作業を開始する。

 拠点を作った際の設計図を取り出して、何部屋作れるのかを計算していく。大体の大きさなので、1部屋前後のずれはあるかもしれないが、そうなったらそこらへんは誤差ということで勘弁してもらおう。

 壁の厚さを考慮に入れて……大体の部屋の位置を書き出す。土台を作り、その上に外壁部分になる場所を作る。その中に、イメージした部屋を土魔法を使い、作っていく。

「ん~、思ったよりいけるもんだな。部屋の枠を作ってその中を整えていたから、勝手が違うけどブロック式の考え的には、かなりいい気がするな」

 自分の作業を自画自賛して、悦に浸ってみる。ダマの呆れ顔が近くにあるが、放置である。

 部屋の枠を作るだけの作業なら、一気に1階分を作れるけど、それだと後で部屋の中を作っていかないといけないから、どっちがいいのかは難しいところだな。

 個人的な意見からすると、少数でやるなら1部屋ずつ、大人数でやるなら1階分ごとの方が、効率的かもしれないな。大人数だと、部屋の大きさを決めていても、ズレが生じる可能性があるからな。その点少数なら、その誤差も少なくて済むんじゃないかな。

 でも、こんな風に作ることなんて、稀なんだよな。土木組の子たちや、兵士の中の土魔法の工作員たちには、良い技術となるかもしれないから、しっかりと技術化するのもありかな?

 俺が使わない理由は簡単、こんな苦労をしなくても、DPでカスタムした建物を召喚できるからな。基本的に、こんな作業をする機会は少なくなっているから、そもそも機会が少ないのだ。

 3~4個作れば安定してきたので、どんどん作っていき1階部分を完成させる。通路が若干狭い気がするけど、人がすれ違うには十分な幅があるし、問題ないかな?

 設計ミスか? 少し気になったので少し調べてみると……

「あ~、部屋の壁の厚さが2倍になってるな……1部屋で完結するように作れば、そりゃ~、壁分の幅だけ狭くなるよな……そう考えると、パズルみたいにはめ込むように考えるか、壁の厚さを調整して作成できるようにするかだな」

 外枠に合わせてL字の壁の中に部屋を作る感じか、部屋の壁の厚さを半分にして、入り口を設置する側だけ通常通りにして、部屋を作る感じか?

 俺たちからすれば、厚さが均等の方が作りやすいから、L字の方がイメージしやすいけど、こっちの世界の人にはイメージしにくいから、壁の厚さが半分の方が作りやすいかもな。

 どうでもいい事を考えながら、色々試してみるが、やっぽりL字の方がイメージをしやすいな。今度、土木組の子たちにも意見を聞いてみよう。

 1人で頷いていると、

「シュウ、いたいた……って、何考えてんの?」

 後ろから綾乃に声をかけられた。

「この状況を考えるとでござるが……どうやって作るのが効率がいいか、悩んでいるのではないでござろうか? シュウ殿は、こういう事をよく考えるでござるからな」

 バザールに正解を言い当てられて、苦笑する。まぁ、中途半端に作られている部屋たちを見れば、この程度は分かるか……

「それで、何に悩んでいるの?」

「バザールの言った通り、効率について考えている。L字の方が俺たちにはイメージしやすいけど、この世界の人間なら、壁の厚さを半分にした設計の方が、1部屋ずつを作りやすいんじゃないかと思ってな」

 大分端折って説明をした。

「なるほどね。私的には、壁半分の方がイメージしやすい気はするけど、バザールはどう?」

「某は、シュウ殿と同意見でござるな。壁の厚さを分けてイメージする必要が無いでござるから、パズルのようにはめていける方が、イメージしやすいでござるが……こちらの世界では、そんなイメージをすること無いでござるからな~」

 綾乃は、壁半分の方が作りやすいのかね? 3人で色々試すことにした。

「あ~、ごめん。やっぱりL字の方がイメージしやすいわ。正面とそれ以外の壁の厚さが違うとイメージしにくいわね。厚さにバラつきが出るから、建築方法としては良くないんじゃない?」

「そもそもでござるが……1部屋を一気に作る必要あるでござるか? 1面ずつ壁を作っていけばいいと思うでござるが」

 身も蓋もない正論を言われた……軍の人間も、トーチカのような物は作れるんだから、知識さえ詰め込めばいいのでは? という話で落ち着いた。土木組に関しては、複数で行動するのが当たり前なので、俺が心配する必要ないってさ。

 無駄な時間を使ってしまった気がするが、イメージってしっかりしていても、得手不得手があるんだな。特に、大きさや厚さがここに調整が必要な物を、一緒に作るのは難しいみたいだな。

 橋は、部分によって厚さが違うが、1つの物として認識できているので、問題はないみたいだな。イメージを固めるまでが大変なんだろうけどな。現物を見たことある上に知識もあるから、俺たちには作りやすいんだろうな。

 っとそういえば、お前ら何か用事があったんじゃないか?

「そうでござった! 綾乃殿、シュウ殿に相談があったでござるよ!」

「そうだったわね、シュウが変なこと考えているから、ついつい時間を使っちゃったわね」

 それで、何の相談なんだ?

「ちょっと召喚してもらいたいものがあるんだけど、お願いしていいかしら?」

 ん? バザールがいるのにか?
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...