ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
2,241 / 2,518

第2241話 妻たちは……

しおりを挟む
 グリエルに呆れられるような表情で送り出され、俺は自宅へと帰る。途中で街のちびっ子どもに追いかけられたが、特に何かあるわけではなく、珍しかったので俺の周りを走り回っていただけだ。

 元気な子どもたちは、街の未来の象徴。すくすくと育ってほしいものだ。大阪のおばちゃんみたいに、飴ちゃんくうか? といって、10種類くらいの飴玉を出してあげると、大喜びだ。自分たちだけで独占しようとしないで、他の人も呼んでいいか聞くあたり、優しい子たちだな。

 そのおかげで30分くらい帰るのが遅れてしまったが、子どもたちの笑顔が見れたので良しとしよう。

 家に帰ると……迎えは誰もなかった。まぁ予想はできている。ミリーが帰って来ているから、それの話を聞いて獣人の妻たちを、みんなで押さえていると思われる。子どもたちはどうしているんだろう。放置ってことは無いけど、いつも通りってわけにもいかないよな。

 自宅の中を進んでいくと、子どもたちの声が聞こえてきた。

 この子たちは、お願いしてくれただけで、何が起こっているかは知らないので、はしゃいでいるのだろうか?

 妻たちの様子も気になるが、子どもたちも気になるので先に子どもたちに会いに行くことにしよう。

 子どもたちは、子ども部屋ではなく俺の部屋から声がするんだよな……何で俺の部屋なんだろうか?

 そっと部屋の扉を開けて中を覗く。

 7人が集まって大画面でアニメを見ていた。このアニメだと、シンラの好きなタイプのアニメっぽい。プラムとシオンは分からないが、ミーシャたちは基本的にアニメに好き嫌いは無いので、シンラに付きあっているんだと思う。

 下の子たちはアニメに釘づけで、上の子たちは小さな声で色々話しながら一緒に見ている。

 内容は、やっぱりこの部屋の音響機材はいいねとか言っているから、音の良いこの部屋に来たんだろうな。

 そういえば、俺の部屋って防音設備も備えているはずなのに、子どもたちの声が聞こえていたのは何でだ?

「ご主人様、ご主人様のお部屋に入る条件として、1つ魔法を使うことを約束してもらいました。その魔法で部屋の外に声だけが届くようにしています」

 なるほど、シンラたちがアニメを見ている部屋は、そこまで広くないから趣味部屋で自分たちも本を読みながら待機していたのか。ってか、入ってきた時には気付かなかったけど、お前ら趣味部屋のどこにいたんだ?

 本棚がたくさん並んでいるが、俺が好きな本しか並べていないので、見通しはいいはずなのに気付かなかったのだ。

 指を指す方向を見てみると……あ~人をダメにするクッションに埋もれてたんだな。そのせいで俺から見えなかったようだな。

 そのクッションの山の中に後5人のブラウニーたちが埋もれているようで、3人は交代要員として寝ているようだ。

 さて、どうしようかね。子どもたちは、特に問題は無いよね? だったら、何かあったら連絡してくれ、妻たちの方に行ってくるから後はよろしく。

 妻たちは……おかしいな、しばらく家の中を移動しているのに気配がない。どこにいるんだ?

 ん~、分からないので食堂へ向かい、キッチンで調理をしているシルキーの誰かに聞いてみよう。マップ先生で探すのでもよかったのだが、何となく止めておいた方がいいと思ったので、シルキーに聞くことにした。

「今日は……アマレロが担当なんだな。妻たちが見当たらないんだけど、どこにいるか知ってるか?」

「あっ、お帰りなさい。奥様方は、ダンジョン農園に行っていますね。一角に作った闘技場に集まっています。じっとしてられないと言って、体を動かしてくるとのことですね。スカーレットが一緒についていって、保護シールを大量に出しているので、ガチンコバトルをしていると思われます」

 マジか。いくら落ち着かないからと言って、妻同士で模擬戦をしているってことか? ミリーの心情的にそんなことしても大丈夫か? 大惨事になりそうなんだが!

 俺は慌ててダンジョン農園へ走って向かう。

 入り口から少し離れた位置にある闘技場へ……

 闘技場にはいると、ヤバい音が聞こえている。到底人同士が戦っている時に聞こえる音ではない。俺も自分でありえないような戦闘音を出すが、その音と全く同じと言っていいだろう。

 バトル漫画でよくある、戦闘音が聞こえているように表記されるような音だ。

 ドゴンッ! とか、 ガキンッ! とか、バキッ! とか、普通に戦っていたら、自分たちだけにしか聞こえない音が、闘技場全体に響き渡っているのだ。

 止めることは出来ないだろうが、心配なので戦闘の見える位置へ移動する。

 闘技台の上では、獣人の妻たちとシュリが素手で殴り合っている。シュリが1人で全員を相手にしている形だ。ステータスによるゴリ押しだな。頑丈な体と力で対抗している。

 普段の戦闘訓練を考えれば、ここまで一方的な試合になるのはおかしい。やっぱり獣人の妻たちは、精神的なものがあるのだろう。あと、シュリの闘い方が防御をせずに強引に攻撃に合わせて、カウンターをしている感じだ。

 後遺症が残りそうな戦い方だけど、気を晴らすために付き合っているのであれば、この方法が一番なのだろう。

 ただ、スカーレットが付いているので、もしものことは無いと思う。後遺症が残ることになっても、魔法もあるしエリクサーを点滴しても治るので、体の問題は大丈夫だろう。問題は、精神的なものが残らないかが心配だ。

 俺は大人しく見守ることにした。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

処理中です...