ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2262話 気になっていた料理

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 夕食の時間になると、待ちきれないと言わんばかりに子ども部屋から飛び出したシンラたち。そんな状況でもしっかりと呼んでいた漫画を片付けできているあたり、シルキーたちの教育が行き届いている。俺はそこらへんはダメだから、少し尊敬してしまった。

 俺の部屋自体は綺麗だけど、それは物が少ないだけなのだ。邪魔だなと思ったら収納の腕輪とかにしまってしまうから、一見きれいに見えるだけだ。物が見えない押し入れに、色々な物を突っ込んでいるのと何ら変わりのない状況なのだ。

 収納の腕輪を整理すれば、余分なゴミとかが沢山あるだろう。それも定期的にダンジョンの廃棄物吸収エリアに捨てておしまいだけどな。

 有り余るDPでほしければ新しく召喚してしまえばいいという感覚ができてしまい、自分の部屋は余計に片付けられなくなっている。俺がキレイにしなくても1日1回ブラウニーたちが掃除をしてくれているので、ますます自分で片付けられなくなっている。

 自分の部屋はダメだけど、仕事場は綺麗にしていないと気が済まないのだ。なんか汚れてたりごみごみしていたりすると、気になってしまいすぐに片付けてしまう。

 俺の執務室がごみごみするのは、書類の束が机の上に積まれた時くらいなので、基本的には綺麗である。

 俺の執務室に行くまでに通る、庁舎のスペースがたまに散らかっているので、目につくとついつい片付け始めてしまうのだ。職員も放置したくて放置しているわけではないが、どうしても手が回らず俺が手を出してしまうことがある感じだな。

 収納の腕輪にいったん収めて、分類分けして取り出すだけでも十分に片付くのだが、物はそのまま残ってしまうので、必要な所へ届けてしまうところまでが1セットだ。

 自力で運ぶわけじゃないので、時間にすれば30分もかからずにすべてを終えてしまえる。収納系のアイテムは、マジで便利な道具だ。

 ミーシャたちと一緒に行こうと思っていたが、弟妹たちが気になるのか先に行ってしまったんだよな。お父さんはちょっと寂しいけど、姉弟思いのいい子たちに育ってくれて嬉しい。

 庭へ出ると、酒飲みエリアとそうではないエリアに、完全に分けられて全員が待機していた。俺が一番最後だったみたいで、カエデとリンドに早く早く! と席に着くように促される。

 近くに来て俺を誘導するのではなく、手招きで早く来いというあたり、早くお酒が飲みたいんだろうな。その中でドワーフたちが行儀よく座っている状況には、少し笑ってしまった。

 さすがシルキーたちの言葉が聞いているみたいだな。

 俺が席に着くと、挨拶をして食事が始まる。

 そのとたんに酒飲みエリアは、大混乱になった。外から見ている人間からすればそうなのだが、ドワーフたちからすれば統制の取れた動きらしい。いつ見ても違いが分からん。

 向こうは勝手に酒を楽しむだろうから、俺はバーベキューを楽しもうじゃないか。急遽予定が変更されてバーベキューになったので、いくつか料理を注文している。

 ビア缶チキン……この世界に缶ビールは無いけど、それっぽく作ってもらった1品。その他に、ダッチオーブンで作ったビーフシチューに、ローストビーフ、豚と玉ねぎのコーラ煮を作ってもらっている。

 ビア缶チキンは、シンラたちと一緒に食べたくて注文して、ビーフシチューとコーラ煮は、前にキャンプ漫画を見ていて気になったので、この際と思い注文してみたのだ。

 今日は子どもたちと一緒の机なので、子どもたちに料理を取り分けている。目の前に鳥がドンッ! と置いてあれば気になるし、食べたくなるのだろう。シンラたちの目は、ビア缶チキンに釘付けだ。

 本人たちが希望する部位を切り分けていき、残りの部分を俺が食べることになる。ウルも含めて8人なので、鳥が丸々1匹でもすぐに無くなってしまう。

 鶏肉の味わいながら、次の料理に手を伸ばす。

 ビーフシチューは野菜と肉がたっぷり入っていて、少し液体の部分が少ないが、これも希望通りなのでほくほくである。

 肉のうまみを吸ったシチューをパンにつけ口へ運ぶ……夕食にパンを食べる事なんてほとんどないが、今日はこれがしたかったので、なんか嬉しい。

 シンラたちも気になっているようだが、他にも食べたいものがあるようで悩んでいた。ミーシャたちは体を良く動かすので、よく食べるようになっているため、俺が食べている姿を見て同じ物! と注文してきた。1人ずつ渡していく。

 ミーシャたちは迷っているシンラたちに、一口ずつ食べてみることを提案している。

 その手があったか! と、3人は喜んで小さめのお肉と野菜を少し、最後にシチューを付けたパンと三口食べていた。その中でお肉が気に入ったのか、ビーフシチューのお肉だけを希望してきた。俺も好きだけど、今日はシンラたちに譲ってあげよう。

 シンラたちにお肉をあげると、残りは野菜だけになった。残りは取っておいて、何かに利用してもらえばいいかな? 野菜は美味しかったけど、さすがにこれだけでお腹いっぱい食べるつもりはないので、一旦タゲるように……

 ってあれ? いつの間にかダッチオーブンの中が空になっていた。

 犯人というのもおかしな話だが、残りを食べたのはミリーたちだった。

 酒飲みエリアにいたはずなのに、いつの間にか俺たちの近くへ来ていて、ダッチオーブンの中に入っていたビーフシチューのビーフ無しを食べていた。

 俺が子どもたちと仲良くしているのを見て、少し混ざろうと思ったらビーフシチューが美味しそうでつい……とか言われても、別に怒ってないし食べたければまた作ってもらえばいいだけだしね。

 野菜だけでいいのかと思ったが、酒飲みアリアの料理は大半がお肉だったので、ちょうど野菜が欲しかったんだとさ。肉のうまみをたっぷり吸っている野菜たちだけどね。

 注文していた最後のコーラ煮は、一見すればただの煮つけなのだが、コーラ独特の甘い匂いがあたりに漂う。ちょっと引き気味になってしまうが、口に入れてしまえば話は変わる。

 想像していた何倍も美味かった。ブラウニーたちが作るから外れは無いと思っていたけど、あまり期待していなかったんだよな。それが予想以上に美味くてびっくりした。

 シンラたちは、俺が取り分けたモノを食べた後は、ピザが食べたかったのか小さなサイズで3枚、1人1枚注文して切り分けて、3人で交換して食べるようだ。

 それならハーフとかクウォーターみたいにして焼けばいいのにと思ったが、どうせプラムとシオンに横取りされることを考えれば、始めから交換を前提にすれば、争う必要が無いと考えたのだろう。変なところで頭のいいやつだな。
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