ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2299話 午後の模擬戦(反則は無い)

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 娘たちと妻たちが模擬戦をしている……訓練だから違うが、見ようによっては親子喧嘩か?

 アホなことを考えていると、妻たちがミーシャたちを投げようと仕掛ける。子どもたちは投げられないように耐えたりしている。

 壮絶な親子喧嘩……ではなく、壮絶な足技の応酬をしている。先ほどまでは耐えるだけだった子どもたちが、投げようと攻めている。ミーシャとスミレは投げられてしまったが、ブルムだけは回避して軸足を払って投げていた。

 投げらてたサーシャは、受け身をかろうじて取れたが投げられた後に畳の上で、目をパチパチしていた。

 自分が投げられたことは理解しているが、どういう風に投げられたのかを分かっていない様子で、ポカーンとしていた。

 再度、模擬戦を止めて、ダンジョン機能を使った過去映像を引っ張り出して、サーシャが投げられた様子を再生する。

「あ~、こんなふうにして投げられてたんだ。ブルムちゃんに投げられたのは、畳に寝た自分がいたから分かってたけど、どんな風に投げられたか全くわからなかったのよね。見事に軸足を払われて、キレイに投げられてたみたいね」

 サーシャも映像を見て、こんな感想を漏らしていた。お手本にできそうなくらい見事に投げられていたのだ。

 子どもたちと妻たちの反応は全く違った。

 子どもたちは、自分たちの投げられていた映像を見て、自分たちは何処がダメだったのかお互いの意見を交換し合ってる。それに対して妻たちは、カウンターを狙われたことは分かっているが、躱された後の攻撃にどうやって対応するのか悩んでいる様子だ。

 カウンターをされたら防ぐのは難しい。ならどう対応するのがベストかと言えば、カウンターをされないように対策する……という方法がいいと思われる。

 自分の攻撃にあわされて反撃されるのがカウンターなので、あわされて反撃されない努力が必要になってくる。反撃する隙を与えないほどの攻撃か、カウンターをできないような攻撃をするしかなくなってしまう。

 奇襲に近い形でカウンターを仕掛けるわけだから、誰かに成功してほしいとは思っていたけど、実際に成功するとは思ってなかったんだよな。期待していたから、心の中でも成功すると無理やりに考えていたんだよな。ブルムが成功したから、本当に嬉しい。

 サーシャには悪いけど、ブルムにとっては良い成功経験になったと思う。戦闘経験が子どもたちより長いから多少プライドはあるだろうけど、子どもたちはやっぱりかわいいから、助言したくなっちゃうよね。

 ミーシャもスミレも悪くなかったんだけど、口頭での説明では難しかったんだと思う。ブルムの映像を見て、納得している様子もあったから、次のチャンスはもっとうまくできるようになっているかもしれない。

 妻たちも警戒するから成功させるのは難しそうだが、一方的に投げている状況だったところから、対等に投げようとして、その上でカウンター技のようなことをされるとなれば、選択肢が増えてくるので対応が遅れて、子どもたちに投げられてしまう可能性が出てきたな。

 ここでもう1つ子どもたちに助言をしてみよう。

 ブルムが結果を残してくれたことで、俺の助言をもっと聞きたいという形になってくれている。

 妻たちは、ミーシャたちの攻撃が選択肢に増えたから、先ほど以上にカウンターは警戒されると思う。通常の投げも体格差的に難しいところがある。では、どうするのがいいでしょうか?

 ここで、謎かけのように子どもたちに考えてもらってみたが、3人で話し合っても分からないようで、ギブアップを申し出てきた。

 普通に考えても分からないと思う。俺が教えるのは柔道ではない。武器無し以外のルールがないこの模擬戦だからこそできる方法だ。

 投げ技で縛ってはいるが、投げる方法については言及していない。投げ技は教えたモノ以外にもまだまだたくさんあるし、体系化されていない投げ方も存在している。特に後者の投げは、打撃などを併用する柔道なら反則技だ。柔術なら反則にならないのかな?

 そこらへんは分からないが、相手の体勢を崩したりするのに打撃を使って、投げ飛ばすということだ。

 子どもたちは、始めは卑怯だ! と言っていたが、俺は落ち着いて考えるようにうながす。

 ミーシャたちが投げを経験するだけなら気にする必要もないけど、君たちは投げ技に対応できるようになりたいんだよね? 柔道が上手くなりたいわけじゃないよね? 勝負に勝つためなら、卑怯と言われようが打てる手は何でも使うべきだと俺は考えている。

 こんな風に伝えると、3人は悩みだした。

 子どもたちに卑怯なことを教えることは悪い事だと分かっているが、こと戦闘においては勝者が正しくなる。もちろん、ルールがあるならその範囲で行うべきだ。その中で最大限手を尽くして戦うことが大切だと考えている。

 特に殺し合いとなった時に、行儀の良い戦い方では足元をすくわれることだってある。

 剣道で圧倒的に強い人間であっても、本当に相手を殺したことがない人間と、殺したことがある人間が戦えば、後者が勝つ確率が高い。理由は簡単で、人を殺すという忌避感を乗り越えられるかどうかだ。1度超えていれば、2度目を超えるのは難しい事ではない。だけど、1度目はなかなか踏み出せないのが人間だ。

 中には、ネジがぶっ飛んでいるやつもいるし、クソ貴族みたいに人を人と思っていないクズもいるけど、勝つためには何でも利用できるモノは利用するのが、俺は正しいと考えている。

 子どもたちには死んでほしくない。冒険者になると言っている以上、甘い考えはさせるつもりは俺にはない。シンラは分からないが、もしこの子が領主になったとしても、前線に出ることは無いだろうから厳しくするつもりもない。前線に出るというなら、ミーシャたちよりも厳しく戦うことを教えるけどな。

 子どもたちはあまり納得はしていないが、取れる手段は全部取るという部分には納得しているので、おやつの前までの模擬戦で試してみるとのことだ。

 おそらく妻たちはビックリするだろうが、いつも俺にやっていることを自分たちがやられ立場になるだけなので、文句を言うことは無いだろう。妻たちは、平気でルールを破ってきたりするから、最終的にはルール無しってことになったりするんだよね。

 一度誰かが打撃による崩しを行えば、妻たちも意図を理解してくれるだろう。そして、自分たちも子どもたちに対して、同じことをするだろう。別にそれがいけないというつもりはない、俺は子どもたちに手加減をしてしまうが、妻たちは俺ほど手を抜かないから、子どもたちにとってもいい経験になるはずだ。

 3人とも、頑張ってくるんだぞ。
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