ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
2,328 / 2,518

第2328話 お前、成長してたの?

しおりを挟む
 休憩を終わらせて、再び人造ゴーレムと向き合う。

 原理は分からなくとも、ゴーレムたちが言うには、土魔法でどうにかして俺の攻撃をピクリとも動かずに受け止めているようだ。受けに回られている状況では、正直どうにもならない気がする。

 活路を見出すとするなら、相手が動く瞬間を狙うべきだろう。動いている時に、あの訳の分からない硬直ができるとは思っていないので、相手を動かしてカウンター気味に攻撃を仕掛けるのがいいと思う。

 常にあの受けができるのなら、体を硬直させる必要は無いと思う。硬直させるのには、それなりに意味があると思う。

 そうでなければ、こちらに打つ手が無くなるので、そう考えたいと思っている自分がいる。

 一先ず体を動かしながら考えよう。

 機械仕掛けのようなゴーレムの動きを覚えたところで、ありえない反射速度で俺の攻撃に対応するだろうけど、動きを知らないよりましだろう。

 人間の骨格を持っているが、人間の動きのそれとは違う動きも出来るんだよな。基本的には人間の動きを模して戦うから忘れがちになるけど、こいつらの一番厄介な所はそこなんだよな。

 人間の骨格を無視できるといっても、関節を壊す方法は同じなので、今まではそこに活路を見出してたんだよな。その方法だったとしても、ゴーレムの腕の方向次第では、有り余る力で跳ねのけられたりするんだよな。

 何事も戦い方が大切ってことだな。

 右に左に上に下に、あらゆる角度からの攻撃を試してみるが、完璧に受け止められてしまうな。

 回転をあげても、フェイントを入れても全く無意味だった。

 機械にフェイントを入れて意味あるのか? なんて野次馬も聞こえてきたが、人間や魔物と戦っているつもりでフェイントを入れていたのを、心の中で笑ってしまった。

 見て反応はするけど、フェイントに反応したところで、次の攻撃にも反応できる反射神経があるのだから、無意味なんだよな。もっと言えば、見てから動いているから、フェイントであろうがそうでなかろうが、ゴーレムには全く関係なかったりする。

 だからと言って、フェイントを入れない戦い方をしていると、本番でも愚直に戦ってしまう可能性があるので、効果が無いと分かっていても入れながら戦おう。

 やっぱりどんな攻撃にも、即座に対応してくる。変則的な攻撃にも見てから反応して、的確に受けるのだからたまったものではない。

「なぁ、綾乃。こいつらってさ、前より反応もスピードも良くなってないか?」

「……? 何当たり前な事言ってるの。作ったからってそのままってわけないじゃん。毎日とは言わないけど、新しく作っている分はどんどん性能が良くなってるわよ。人間が訓練して強くなるように、人造ゴーレムたちも日々強くなっているわよ」

 何を当たり前なことを……といっているが、パソコンみたいな機械じゃないんだから、そんなにポンポン強くなられても困るんだが!

 前のも俺の攻撃に対応はしていたけど、ここまでキレイに止められてはいなかった。というか、受けに関してはこいつらの良く分からない能力の所為だけだと思っていたが、微々たるものでも反応が早くなっているおかげで、俺の攻撃を防げるようになっていたのだ。

 俺がスキルの恩恵を失ったから、あいつらが対応できていると思い込んでいて、あいつらの能力は変わらないと思っていた俺が間違いだったみたいだな。

 それが分かったところで、俺と人造ゴーレムたちの差が縮まるわけでも無いが、頭を切り替えて戦っていくしかないな。

 見てから対応できるということが、全てにおいて人間を上回る要素ではあるのだが、それをどうにかしない事には、俺に勝ち目が無くなったということだな。

 あいつも魔力を使っているわけだから、俺も使っても問題ないよな?

 体の動きを確認する意味もあり、訓練中にはほとんど使っていなかった、肉体活性のアクティブ能力の発動をすることにした。魔力を注ぎ込むことで、パッシブでステータスを強化している分とは別に、爆発的なステータス上昇をすることができる。

 強化率で消費する魔力が変わってくるのだが、極端な話で言えば、子どもたちでも魔力がすぐに枯渇するレベルで魔力を使えば、一時的にだが俺やシュリのステータスを上回ることができる。

 その代償が筋肉の断裂などによる肉体の負傷で、回復魔法やポーションなしでは、1週間はまともに動けなくなるというモノだけどな。

 これは、俺たちが使っても変わりがない。むしろ、元のステータスが高いから、低い強化率でも大量の魔力を使ってしまうという分、使い方を間違えると自爆しかない。

 それを使えば、ゴーレムたちの動き超えることができる。見て反応できるとはいっても、予測を立てて動いているわけではないので、想定以上の速度で攻撃されれば、対応ができなくなるはずだ。

 達人や戦いの玄人であれば、見て反応できない速度の攻撃でも、予想して攻撃を受ける事が出来ることもあるだろうが、ゴーレムたちにはそれは不可能なはずなので、そこに勝機を見出すしかないだろう。

「綾乃、壊れても文句を言わないでくれよな」

 そう声をかけてから、体の魔力を操作して……緩く強化していく。

 一気にトップギアにしないのは、動きが早くなりすぎると、自分の動きに自分が付いていけなくなるから、慣らす必要があるのだ。攻撃する瞬間だけ強化率をあげたりもするのだが、基本的な強化に意識が追い付いていないと、攻撃をミスってしまうことがあるのだ。

 便利なようで以外に不便なスキルではあるが、戦闘中のアドレナリンがドバドバ出ている時であれば、問題なく使えたりもするので、訓練で使い難いというだけだから、そこは訓練でも使っていって慣れるしかないだろう。

 変なことを考えているのは、ここで終わりだな。

 多少早くなったところで、俺の攻撃はゴーレムには届かない。普通の人間なら、急に力強くなった俺の事を警戒するだろうが、そういった心を持ち合わせていないゴーレムには、そんな考えをすることは無いだろう。

 イメージとのずれが大きくなってしまうが、今はゴーレムへ攻撃を通すことを目的としているから、多少の誤差は許容範囲内だろう。

 次第に余計な思考が無くなり、無我夢中で武器を振るい始めていた。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...