ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
2,392 / 2,518

第2393話 迷っても突き進む

しおりを挟む
 独りになりたいということで、妻たちにお願いをして移動したが、どこか目的地があるわけでもなく、迷いながら散歩をするような形になってしまった。

 監視室から出れば、そこはダンジョン農園なのでいつもの光景が広がっている。畑があり、色々なものが育てられている。普段と違うのは今が夜だから周りが暗いので、何か不思議な感じだ。

 夜の畑に来ることなんてほとんどなかったので、新鮮な感じがするな。

 ここを荒らすわけではないが、ドリアードたちが管理してくれている場所なので、勝手に入るのはやめておこう。

 畑のあるエリアから離れて、ダンジョン農園の出入り口へ向かう。

 やっぱり落ち着く場所といえば、世界樹の下だよな。昼間によく木陰で本を読んだりゲームをしたりしたな。

 いつもの椅子を取り出して、くつろぐ姿勢をとる。真っ暗だったので、焚火台をとりだし火を見てのんびりとすることにした。

 今まで逃げていたわけではない……俺が責任をとれるようにしているのだけど、グリエルとガリアが優秀なので俺が責任を取るようなことは今までなかった。でも、今回は確実に起こるであろう責任問題、それを考えると俺は少し体が震えてしまっている。

 いろいろ考えても仕方がない部分もあるが、色々考えてしまう。

 思考がグチャグチャしていて、いつの間にか1時間経っていたみたいだな。シェリル・イリア・ネルの3人が呼びに来てくれた。この3人が一緒に行動しているのを見るのは久しぶりな気がする。

 お兄ちゃんと呼ばれていた時期もあったが、子どもが育ってきていつの間にか旦那様と呼ぶようになってたんだっけな。

 呼び方といえば、ミリー・カエデ・リンドの3人は名前で呼ぶが、それ以外の妻たちはいつの間にか旦那様って呼ぶようになったんだよな。初めは照れながら言っていたが、最近は何の抵抗もなく言えるようになってきたんだよな。

 まだ俺がモヤモヤしているのを察してくれたようで、椅子を並べて俺が落ち着くのを待ってくれた。

 どれくらい時間がたったかわからないが、何も言わずに焚火に付き合ってくれた。

 幼いイメージのあった3人が、いつの間にか大人になっていて母親の顔をするようになってたな。時が過ぎるのって本当に早いな。

 ミーシャたちも少し前まで赤ちゃんだったのに、いつの間にかお姉ちゃんになってたしな。

 俺にも守る家族がいるように、軍人……兵士たちにも守りたいものがあるんだよな。そのために兵士として志願し、つらい訓練にも耐えているんだよな。

 レイリーの話では、つらい訓練に耐えられるだけでは、軍人としては二流、実践を乗り越えて一流という感じで話していたっけな。

 日本では聞かないが、アメリカとかでは実戦を経験して心を病んでしまう兵士も多いとか。

 PTSD……心的外傷後ストレス障害で、退役を余儀なくされたりするんだとか。

 中には感覚がマヒして、ゲームのように感じてしまった人もいたとかいう話だ。

 考えがまとまっていないけど、俺は俺の責任を果たせるようにしないとな。綾乃とバザールたちを手伝おうと思っていたが、今回は2人にしばらく頑張ってもらおう。

 兵士に犠牲が出てしまうのは、仕方がないことだと割り切るが、住民に被害が出ることだけは絶対に許さない。俺はそちらの対策をしよう。

 そこで俺は3人に、めぐちゃんとシリウス君に最終防衛ラインを務めてもらえるように、話してもらうようにお願いした。

 これで、街中の被害はゼロにできるだろう。難民たちの街はダゴンに任せるとして、あの2人であれば多少強いくらいの人間から、街を守ることも簡単だろう。

「旦那様、今からするよりは今日はよく寝て、明日から動きましょう。すぐに攻めてくるわけではないのに、こんな時間に起こされるほうも困ると思います」

 シェリルの助言で、俺ははっとする。俺は早く対策をしたいと考えていたが、それで迷惑をこうむる人が出ては意味がない。

 俺が反省している間にイリアとネルが関係各員に、明日も会議をするので早めに仕事を終わらせるか、部下に任せられる仕事は任せるよう調整して、呼び出しがかかったらすぐに集まれるようにしておいてください、とメールを送っていた。

 俺は3人に連れられて寝室へ向かう。

 何かがあるわけでもないが、3人が優しく包み込むようにして寝てくれた。

 体は元気でも、心が疲れていたようだな。人のぬくもりを感じながら寝ると、こんなに安心するんだな。



 朝起きると、昨日の夜と変わらず、3人が俺を包み込んでいてくれた。いつもなら、先に起きて支度をしていたりするのだが、今日は起きるまで一緒にいてくれたようだな。

 俺が起きると、普段はしてくれない身支度の手伝いをしてくれた。なんか、小説に出てくる偉い人になった気分だな。

 これが妻だからいいけど、赤の他人のメイドとかだと、正直うっとうしく感じそう。自分で準備したほうが楽なのに、偉そうな人って手伝わせたりするんだろうな?

 体が元気でも心が疲れていると、長い眠りが必要になることもあるんだな。

 身支度を手伝ってもらっている時に時間を確認して、内心で驚いてしまった。

 すでにお昼の時間を過ぎていて、昼食の準備も済んでいるから、身支度が終わり次第食堂へ行きましょうとのこと。

 3人は先に起きていたのに、俺が起きた時にいなかったら寂しがると思い、食事を食べずにずっと一緒にいてくれたみたいだ。

 今度埋め合わせをしないとな。

 食堂で食べた昼食は……和食だった。日本にいたころには食べたことのない、高級料亭のような食事だったが、すごく懐かしく落ち着く味がした。

 シルキーたちの心遣いは、こんなところにもあるんだな。食事もやっぱり大切だな。

 先に話し合いが必要なのはグリエルとガリアなので、30分後から会議を始めると連絡を入れておいた。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...