ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
2,393 / 2,518

第2394話 街を守る計画

しおりを挟む
 時間前にはグリエルとガリアが会議室へきており、どんな話をするか気になっている様子だった。昨日の今日で呼び出しがあれば、どんな内容なのか気になって当たり前だろう。

 しかも元々呼び出したのが俺ではなく、妻であるイリスとネルなのだから、いつもと違うのではないか? と考えている節もあるようだな。

「本当ならレイリーも呼んでおきたかったけど、レイリーは今回の勇者の件に関して全面的に任せることになったから、忙しいだろうから決まったことを伝えることにしている」

「えっと……レイリーに任せることなのに、レイリーを呼ばないのはまずいのではないでしょうか?」

 グリエルの疑問はもっともだが、

「勇者の対応についてはレイリーに任せるから、そこの部分には口は出さないよ。俺が口を出すのは、勇者たちへの対応ではなく、街に対する備え……みたいなものかな。戦争になるかはわからないけど、戦争はレイリーの領分、俺は街を守るために全力を尽くす、そういうことだな」

 グリエルとガリアは納得したようで、しきりに頷いている。

「そういうことでしたか。対勇者の戦闘をレイリーに任せているのであれば、街の守りは別の者が行うべきですね。それがシュウ様ということですか」

「戦争による軍人の犠牲は理解して覚悟を決めたつもりだ。だけど、軍人以外の被害を出すつもりはない。戦争となれば、無法をするものだって出てくるだろう。うちの軍には、そんな奴はいないと思いたいが、相手にそれを求めるのは無理だろ?」

 戦争となれば良心の呵責なんてなく、自分たちの欲を満たす者たちが絶対に出てくる。戦争に勝ったとしても、戦場から逃げ出した者たちが近くの街で……ということはよくなる話だ。そんなことを許さないためにも、まずは自分たちの街を絶対に守りきる。

 そのうえでこちらに問題が起きないのであれば、周辺の街へも気にかける必要があるだろう。

 普通の軍隊であれば、負けた軍にそこまでの戦力はないが、今回は勇者が中心となった少数精鋭部隊がいる。その部隊から逃げ出すものが1人でもいたら、街の常備戦力では話にならならないだろう。

 対人戦でもSランク冒険者相当の力はあるので、人によっては城壁などあってないようなものだしな。それにSランク相当のステータスがあるのであれば、城壁を乗り越えて街に入るだって難しくないだろう。

 要は、強すぎる相手が逃げた場合、問題が必ず起きるのでそれを対策しておく必要があるということだ。

「それで、どうなさるのですか? シュウ様自身は前線に出ることはできませんし、ドッペルの体では勝敗がわからないですよね? 勇者の持っているダンジョンマスターの特攻は、レベル差を簡単に覆してしまうのですよね? どうなさるんですか?」

 生身で戦えばレベル差では覆せないくらい離れているが、それをすれば絶対に家から出られなくなるので、その選択肢はない。ドッペルでは、生身よりだいぶパフォーマンスが落ちるので、その差を埋めきれなければ勝てないくらいには相手が強いと予想している。

 そうなるととれる方法は、今量産を急がせている人造ゴーレムが主力になる。そのサポートとして、バザールの指揮するS級スケルトンを援護に出すつもりだ。

 魔物であるS級スケルトンは、勇者の特攻と相性はよくないが使いつぶせる戦力として、常に作り続けているので最悪全部なくなったとしても問題ない。

 リバイアサンのめぐちゃんとシリウス君に最終防衛ラインを任せるので、少なくとも街中での被害はゼロになる予定だ。街の外となると、監視の目をスプリガンたちに頼むことになり、連絡の遅れでもしものことがあると考えている。

「監視の目は多くても問題ないと思っているから、別の手段を用意しようと思っている。ダゴンを追加で召喚して、水を操る能力を使って有効範囲内に雨を降らせて、その雨を使って索敵をしてもらおうと思う」

 まだ検証できていないが、リバイアサンたちほど広い範囲をカバーすることはできないだろうが、それは数で補うつもりなので、おそらく問題ないと思う。

 言い方は悪いが、ダゴンも使い捨てられる戦力の1つなので、遠慮なしに投入するつもりだ。おそらく水を使った索敵なら、俺たちをはるかにしのぐ範囲をカバーできるので、今回のような作戦ではもってこいだと思う。

 ここの戦闘能力は高くない分、水を使った能力が高いので、それでSランク判定を受けている魔物だ。

 水が有効に活用できる場面であれば、格上も食い殺せるくらいに、能力に全振りしている珍しい魔物だと思う。

 使いつぶせるからと言って、むやみやたらに殺させるつもりはない。

 ダゴンたちが通れるように、地下にはダンジョンの水路が張り巡らせるつもりだし、地上へ出なくても穴をあけて地上へ干渉できるようにもするつもりだ。

 万が一ダンジョンに勇者たちが入ってきても、水で満たされているので、戦わずに遠くから見ているだけで戦う必要もないだろう。水流を作って寄せ付けないだけで、相手が勝手に自滅してくれるという判断だ。

 昨日の今日で、こんなことを思いついたわけではない。綾乃とバザールと暇なときに色々な可能性を考えて話し合った内容の1つを、少しアレンジして使っているだけなので、今思いついたものではない。

 ほかにもいろいろな想定をして、状況に合わせて何ができるかを検討したものがあるのだが、今回は出番なしということで、封印を解いていない。

 ダゴンのお供にサハギンを多めに召喚する予定だ。

 サハギンたちは、戦力というよりは、逃げたことを想定した勇者の仲間に対する餌みたいなものだ。がむしゃらに逃げた場合、お金になるようなものはほとんど持っていないだろう。装備をお金にかえる方法もあるが、確実に足元をみられるだろう。

 装備がなくなれば身の危険が高くなるから、換金アイテムとしてサハギンを倒して、ドロップアイテムを回収する……くらいはするだろう。人間に手を出させないための対策の1つだが、無条件に人を襲うようなタイプなら無意味になるだろう。

「色々な意見がよく出てくると思いますが、それは置いておきましょう。一番近くの街とその周辺を中心に配置するということですよね? 王国へはどうするのですか?」

「一応、知らせておいてやれ。内容は、勇者がいる街が周りに戦争を仕掛けそうだとでもいえば、向こうで勝手に調べるだろう。今回は王国側で俺たちの街が一番近いから、狙われるならフレデリクからだろう。その前に小国のどこかを攻めるだろうから、時間の余裕はあるだろうしな」

 王国は王国で頑張ってもらおう。おそらく、対人戦はあまり得意ではないだろうから、あれから強くなった深紅の騎士団もいるし、再編した奴隷兵の代わりもいるみたいだから、そいつらを派遣すれば何とかなるんだろう。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...