ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2400話 駐屯地にて

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 体をほぐしながら移動をして、駐屯地へ向かう。

 俺が到着するとすでに整列が終わっており、中隊長クラスまでがそろっていた、小隊長クラス以下は分かれて作業を開始していたり、訓練をしたり、休息をしたりしている。

 一応壊せるのは大隊長クラスだと聞いていたが、中隊長クラスがここにいる理由は何だろうか?

 どうやら中隊長はツーマンセルになって遅滞戦闘に努めるようで、例の魔道具を使わせるための要員として使い方を覚えさせるようだ。1対1で勝ち目がなくても負けないように動ける中隊長たちなら、ツーマンセルで当たれば無理なく遅滞戦闘ができるだろうとの判断らしい。

 俺は、レイリーの決定に任せるけど、判定は甘くしないからな。仮想勇者の仲間は、すこし過剰かもしれないが大隊長クラスを相手にしてもらおう。レベルは大隊長のほうが低いが、おそらく戦闘技術などを考えると、同じくらいだと勝手に思っている。

 俺がレイリーになかなか勝てないのと同じような意味合いだな。レベルは同じくらいになっているが、俺は改造の分を含めて考えると、レイリーよりステータスは高いけどなかなか勝ちを拾えなかったんだよな。

 用意した魔核の説明をする。

 クリエイトゴーレムで作る魔道具なので、魔核さえあれば簡単に作ることが可能だ。一度設計しているので、イメージも簡単にすることができる。

 可能な限り逃がさないために、今準備できる最高ランクのSを準備して作っている。

 説明が終わると、魔道具の壁にそこまでの強度があるのか、疑問に思う者たちも出てきたので、実体験をしてもらうことにした。

「本来なら中に閉じ込める魔道具だけど、そうすると体験できないので、遠隔で起動させます。これをできるのは、作った人間だけなので、この魔核を遠隔操作できるのは私だけですね」

 そういって離れてから魔核を起動させる。本来は地面に押し付ける必要があるのだが、製作者特権とでもいうのか、俺は遠隔で作動させることができる。

 全員が遠隔操作をできないようにしているのは、万が一に方法がばれた場合、大隊長クラスでもつかまえることが困難になると判断しているからだ。



 基本的に兵士やディストピアの住人たちは、俺の作ったものを信頼してはいるのだが、この世界の常識で考えると、魔道具で作られる壁がなんでそんなに強度が高いのか理解できないため、体験する形をとなった。

 集まった全員が壁叩きにっ参加しているが、表面を少し壊すのが限界のようだ。それもすぐ直ってしまうので、今度は本当に壊せるのか疑問を持ち始めていた。

「皆止まれ~。壊せるか疑問に思い始めたようだが、壊すことはできる。かなりの技量を必要とするけど、そのレベルに達しているものなら簡単に壊せることも判明している。対策を練ってみたけど、この弱点は克服できなかったので、俺の作る魔道具の限界なのだろう」

 まぁ、弱点を克服するために、魔核を2つ以上準備してそれぞれに違う特性を持たせると、俺でも壊すのが大変になる。

「実際に壊すところを見てもらったほうが早いだろうな。ということで、俺が実践しても製作者だから……という視点が抜けないと思うから、この壁を壊すのはこいつらにやってもらおうと思う」

 そういって紹介したのは、今日もお供で一緒に行動しているダマと遊びに来ていたスライムだ。

 スライムにそんな技量があるのか疑問に思われていたが、スライムはただの生物ではなく、魔法生物なので今回の壁壊しには向いている。

「ダマ、まずは全力で殴ってみてくれ」

 そういうと、本来の姿に戻って手に力を集め、思いっきり壁にたたきつけた。

「おぉ、やっぱりダマくらいになると、単純な力だけでも壊せはするんだな。壊せるけど、その分の疲れも半端ない感じだな。続けて悪いけど、昨日説明したように魔力を操作して攻撃してみてくれ。その時は勢いをつけずに殴るだけだぞ」

 そういって、ダマは魔力を右手に集めてその魔力を圧縮し、たたきつけると同時に開放した。

「と、まぁこんなように魔力をたたきつけると壊せるんだけど……何でそんなに微妙な顔をしているんだ?」

 レイリーとその副官たちは問題なさそうだったが、大隊長と中隊長たちは、苦笑いをしていた。え? もしかして大隊長クラスもこれが難しかったりするのか?

 疑問に思った俺は先ほど見たレイリーの顔をもう一度見た。

「シュウ様、私や副官たちであれば、魔力操作による攻撃はできますが、大隊長クラスとなると難しいかもしれないです」

 昨日と言っていることが違うやないかーーい。壊し方の詳しい説明をしていないけど、大隊長たちならできると思っていたのに、期待外れか? 少し煽ってみるか。

「相性がいいとはいえ、スライムたちでも簡単に壊せるんだけどな……」

 少し残念そうにそういって、ちらりとスライムを見ると、心得たといわんばかりに弾んでから壁に体をぶつけた。

 そうすると、さっきのダマよりもきれいに壁が壊れた。壊した壁から体を出して、得意げに体を揺らし俺の元へはいずりよって、どや顔のスライム版とでもいえばいいのか、何故かどやっているのがわかる謎の動きをしていた。

 その様子を見た隊長たちは……馬鹿にされていると理解したのか、メラメラと対抗意識を燃やしている。

 煽ろうと思ったが、そこまでするつもりはなかったのだが?

 これでやる気が出たのなら、結果良しとしよう。

 だけどな、俺にも少しプライドがあるから、少し見とけよ。

 初めはするつもりはなかったのだが、やる気に火がついてしまったので……自分の体に集中して、力を溜める。素手で殴るのは嫌だったので、ためている間にドラゴンの革から作ったグローブをつけて、思いっきり殴りつける。

 ダマが壊した時より狭い範囲だが、これは力が周りに拡散する前に壁を壊したため、人ひとり分くらいの大きさっしか穴が開かなかった。

 こんな風に壊れるのも、魔核のなせることなので、なんでこういう風に壊せるかは分かっていない。

 この壁の様子を見た隊長たちは、ひきつった顔をしている。顔が疲れるから、もっとナチュラルにしておけって。
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