崩落

藍色綿菓子

文字の大きさ
5 / 16

会合

しおりを挟む
 手本のような姿勢で歩く友人の後について、連れられた先に会の集合場所があった。古ぼけたビルには埃が溜まっている。歪んで開きにくくなったドアを、友人が足で蹴破っていたのが今日一番印象に強い。会の内容は、既に何度も友人から聞いた通りで、ほとんど聞き流してしまっていた。会の感じからすると、友人の影響力は中々強い方に見える。富豪だからだろうか。今日も堂々と遅刻していたらしい。
 友人も所属するその集まりは、要するにこういうことを言っている。今日改めて貰ったパンフレットにも書いてある。「時間の経過によって起きる様々な結果を受け入れること」この終わりかけた世界を生きるにあたって、こういった考えの指標を仲間と共有するというのも悪くない手段だろうと思う。
「どうだった? もし良かったら、また来週にも似たような集まりがあるんだが」
「気が向いたら行くよ」
 良い断り文句だ。
 集会からの帰り道、まばらに人が散っていく。友人は私の腕を引き、かつて人気店として名を聞いた喫茶店に誘ってきた。手のかかった内装の店内に数人しかいないのが、寂れた証明のように思えて切ない。やんわりと彼女の誘いを断って、ここで今日は解散となった。
 断った時に、友人はとても寂しそうな表情をした。というのは私の錯覚だった。実際には変わらずの表情だった。昔の彼女はそうではなかったと記憶している。柔らかな頬の凹凸が、鋭い目つきから受ける冷たい印象を和らげて、笑うと花が開くようだった彼女にはもう会えないのだと改めて認識する。まだ穴も開いていない胸に風が吹いたようだ。
 枯れかけた街路樹に混じって数本、とんでもない枝振りであったり奇抜な色の葉であったり、逞しく環境に適応している木がある。昔からこれだけは変わらない日差しが肌に痛い。歩きながら髪をかき上げると、戻した手に束になった髪が抜けて付いていた。ぎょっとして髪を撫でる。抜けた毛は風が運ぶのに任せた。
「あれ、どこ向かってんの? 家じゃない? あぁ! 別のお友達に会いに行くんだな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

処理中です...