チルアカ

藍色綿菓子

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雑貨屋

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 乗り心地は悪かった。内臓がシェイクされて口から破片が出てきそう。だけど私は耐えた。飲み込んで満足な体を維持する。
「まずどこから行こうか……」
 明確になってきた視界には、賑やかな町並みがある。私の知るどの光景とも異なる、異界らしい光景だった。誰もが異形。翼や角や尾のある者、毛がびっしりと生えた獣のような姿の二足歩行する人、それらが買い物袋を持って闊歩している。人の動きがあるたびにむき出しの地面から土埃が立ち上がる。競うように立ち並ぶ怪しげな店達は、それぞれ威勢の良い呼び込みの声をかけていた。市場らしい。
「雑貨屋行きたいんだっけ? その辺にあると思うけど、見て回ろうか」
 心細くなってしまった。今にも歩き出しそうなアルバートの服をつまむ。彼は立ち止まって不思議そうに首をかしげる。フードのおかげで表情がわかりにくい。
「なんか、圧倒されちゃって。お腹いっぱいです」
 少しの沈黙。のちにクツクツ笑い声が聞こえた。
「楽しんでくれ。何も怖い物はないから……」
 腕を掴まれる。どこへ行くのか、引きずられるように連れて行かれた先は、なにやら怪しげなアクセサリー類がある。アンクレットとかブレスレットとかが手首足首の形のマネキンに飾られている。あ、この人こういうので私を喜ばせたいんだな、という意図が丸わかりで逆に恥ずかしかった。こういうので喜ぶと思われてるんだ。まあ、喜ぶんだけど。見るの楽しいよね。
 現代日本のショーウィンドウと比べてしまう。キラキラしたあの並び。もうぼんやりとしか覚えてないが……。それよりもこちらは暗い並び方をしていた。あえて暗い色の布地やらを背景に置いて、品物を目立たせている。独特の配置が物珍しい。並んでいる物の価値はわからないが、綺麗な石がたくさんある。占いの館みたいだなぁ。
「アルバートさんは、宝石類は好きですか?」
 想像してみたらよく似合った。元々、どこか華やかな雰囲気を持つ人だ。きらびやかな貴金属はよく似合うだろう。
「好きだよ。価値を持つ物はおおかた」
「そうですかぁ」
 私はアクセサリー類の値札を見た。見ても金額がわからない。どれが数字で文字なのかもわからない。清掃でもらったお給金では間に合わないだろうか。間に合わなさそうだ……すごく高級そうだもの。
「気に入った? 何を見ている?」
 この辺りの物を、と大雑把に指し示す。ずずいとアルバートが物色した。全然関係ないところに垂れ下がっていたネックレスを彼は手に取る。
「きっと似合うと思う……」
 私の意見は何も聞かずに金貨何枚かと交換してしまっていた。特に欲しくもないアクセサリーが私の手元へ。わお。
「うわ。ありがとうございます」
 よく思うんだけど、欲しくもないものを押しつけられて感謝しないといけないってそんな不条理。……よく思う? こんな経験したことそんなにないと思うけど……。
「うわって……変わらないね、君は」
 フードが邪魔で表情がよく見えない。だけどとても嬉しそうな顔をしていた気がする。それに切なそうな声色だった。
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