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第7章 マックート村の新領主

第186話 久々の帰省

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 フローレンス様へ話をしたら、魔法学校を卒業するという課題の難易度が大幅に下げられていたし、領主代行の話も認められた。
 が、その代わり、魔法学校の教師が四六時中傍に付き、領主代行は俺の血縁者に限ると言われてしまった。
 ……俺が結婚!? いやいや、そもそも恋人すら居ないのに、いきなり結婚だなんてハードルが高過ぎるだろ。
 だけど、血縁関係にないと領主代行は不可って言われたし、シャロンの事は嫌いじゃないけど、向こうの気持ちもあるし、シャロンと言えばおっぱい……じゃなくて、牛耳族の村も探してあげたいし。

『あの、別に結婚じゃなくても良いんじゃないですか? ヘンリーさんの御兄弟とかでも』
(あー、その手があったか。領主代行をシャロンとしか考えて居なかったから、結婚にしか意識が向いてなかったよ)
『とりあえず、結婚の話は出さない方が良いと思いますよ。……まぁ傍から見ている私にとっては面白いですけど』
(面白くねーよっ! ……けど、残念ながら俺は一人っ子で兄弟も姉も妹も居ないんだよな……くっ、可愛い妹が欲しかった)
『万が一、ヘンリーさんに姉や妹が居たら、今頃大変な事になっていそうですが、それはさておき、親戚……だと遠すぎる気がするので、せめて従兄弟とかは居ませんか?』
(従兄弟かぁ。確か一つか二つ下くらいの女の子が数人居たはずだけど、あまり会った事が無い上に、十四歳や十三歳で領主代行を引き受けてくれるかな?)

 自分で言っておいてなんだけど、俺も十五歳という年齢で領主なんて良いのだろうか。
 まぁ一応、十五歳から成人と呼ばれるからギリギリセーフなのかもしれないが、よく考えたら十五歳未満だと、家の手伝いくらいはともかく、そもそも働く事自体がダメだよな。
 じゃあ、やっぱりシャロンと結婚か?

『ヘンリーさん。領主代行を頼みたいから結婚してくれ……というのは、シャロンさんに失礼かと』
(あ、確かに。そうだな。この考えは一旦捨てるか)
『れが良いかと。しかし、御兄弟や従兄弟などが居られないというのであれば……ご両親はダメなのでしょうか?』
(両親か。うちは中流階級の普通の家だからなー。母さんは地元で現役騎士で仕事もあるから連れて来れないし、父親は……うーん)
『お父様に何か問題でも?』
(いや、家でひたすら魔法……というかマジックアイテムを作っている自称発明家なんだよなぁ)

 父親曰く、錬金魔法と鍛冶技術の融合……だそうで、日々よく分からない物を作っている。
 基本的に研究室という名の父の部屋は立ち入り禁止で、一度だけこっそり入ったけれど、俺が魔法に疎い事もあって本当に何をしているのかが分からなった。
 一応、過去に凄いマジックアイテムを作った事があるらしく、それだけは凄く売れたそうなのだが、俺の目には女騎士の母に養って貰っているようにしか見えなかったんだよな。

『という事は、あの広い屋敷の一室を研究室として提供すれば、来てくれるのでは?』
(うーん……一先ず本人に聞くだけ聞いてみるか。領主代行として、とりあえず村に居てくれれば良い訳だし。地元愛とかは、あまり無さそうな気もするしな)

 アオイの意見を聞き、数ヶ月振りに実家へ帰る事にした。
 実家の家の様子を思い出しながらテレポートと言えば、またたく間にその地に居る。
 ……瞬間移動魔法、本当に超便利だ。

「ただいま」
「ただいまー」

 俺の真似をするユーリヤを降ろして玄関から入ると、奥からゆっくりと近づいてくる気配がする。

「ん、この声は……ヘンリーなの? こんな時期に帰ってくるなんて一体どういう……」
「あ、母さん。ただいま」
「ただいまー!」

 廊下から現れた、完全オフで普段着姿の母さんが現れたかと思うと、俺の顔を見るなり何故か硬直し、そのまま奥へと戻ってしまった。
 一体どうしたのかと思いながら、とりあえず中へ入ろうとした所で、再び母さんが戻って……って、どうして抜き身のロングソードを手にしているんだ?

「この、バカ息子っ! 騎士を目指しておきながら、幼女をさらってくるなんて、どういう了見だいっ!」
「はぁっ!? 幼女をさらう……ってユーリヤの事かっ!? 俺がそんな事する訳ないだろっ!」

 頭上から打ちこまれる鋭い一撃を、バックステップで何とか避けたが、これ本気の一撃じゃないかっ!

「ヘンリー。あんたを育てた親としてついて行くから、一緒に自首しよう。騎士への道は絶たれるけど、人生はそれだけじゃないからね」
「いや、だから、母さん! 話を聞いてくれって!」

 連続で放たれる横薙ぎの剣と袈裟掛けの剣をそれぞれ避けつつ、何とか話を聞いてもらおうと声を上げていると、

「にーにへ、ヤナことしないでっ!」

 ユーリヤが俺の前に立ち、半透明の壁を生み出す。

「魔法壁!? だが、これしきの壁など――魔崩剣!」

 それ、ガチの剣技じゃないか!
 俺が召喚士クラスとなってしまったが為に、修得出来ない技が繰り出され、青白く輝く剣が壁を斬り裂く。
 だが何事も無かったかのように、ユーリヤの生み出した壁がビクともしていない。

「これは……ヘンリー。その女の子は誰で、どういう関係なんだい?」
「だから、それを説明しようとしていたのに。とりあえず、リビングに行って良い? もちろんユーリヤも一緒に。あと、剣は置いて」
「……えぇ、わかったわ」
「まったく。自分の息子の話を聞こうとしろよな」
「だって、久々に帰って来た息子が可愛い恋人を連れて来るならともかく、可愛い幼女を連れて来たら、こんな反応にもなるわよ」

 一先ず、これから大事な話をするからと、父さんを呼んでもらってリビングへ。

「ユーリヤ、もういいよ。ありがとう」
「あのひと……にーにのママなの?」
「そうだよ。ただ、ちょっと気が短いから、いろいろと早とちりしちゃったんだ。あ、あと、これから俺の父親が現れるけど……うん。とりあえず、俺の傍に居れば大丈夫だからね」
「……?」

 不思議そうに小首を傾げるユーリヤを俺の膝に座らせ、両親が揃うのを待つ事にした。
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