元侯爵令嬢の異世界薬膳料理~転生先はみんな食事に興味が無い世界だったので、美味しいご飯で人の身も心も癒します~

向原 行人

文字の大きさ
2 / 14

第2話 異世界でも美味しい料理を!

しおりを挟む
「さてと……まずは料理が出来る場所を探さないとね」

 料理人として生きていくと決めたものの、キッチンがなければ話にならない。
 何処かの食堂とかで、住み込みで働かせてもらえるのが一番良いけれど、まずはこの街を出た方が良いだろう。
 領主である父が嫌がらせとかをしてきたら、お店に迷惑が掛かっちゃうしね。

「とりあえず、食材を手に入れないといけないし、農村へ向かうべきかな」

 転生した二日目に分かった事だけど、私……アリスはちょっとだけ魔法が使える。
 一番得意なのはコレ! っていうのはなくて、初級の魔法しか使えないけど、その代わりに、この世界にある六種類の魔法の内、火水土風の四種類もの魔法を扱えるので、早速使ってみる事に。

「≪アース・ワルツ≫」

 初級の土魔法で、健脚になるというか、ちょっと歩くのが速くなる魔法だ。
 ついでに荷物を軽くする風魔法も使ったので、これなら西隣にある村までスイスイ歩いて行けると思う。
 という訳で早速街を出て、街道を西へ。
 街道の脇に生えている草が、優しい風に揺られているのを見ながら歩いていると……後ろの方から馬が走って来る音が聞こえてきた。
 いくら魔法で速く歩いていたとしても馬には勝てないので、足を止めて馬を先に行かせようとしたんだけど、栗毛の馬が私の前で止まる。
 何かあったのかな? と思っていると、馬に乗っていた男性が降りてきて、声を掛けてきた。

「アリスお嬢様! やっと、追いつきました」
「え? リアムさん!?」

 馬に乗ってやって来たのは、若くしてフェイン家の騎士隊長を務めているリアムさんだった。
 何だろう……まるで私に逃げられないようにと、一挙手一投足をジッと見つめられている気がする。
 もしかして、父親に言われて私を追ってきたのだろうか。
 フェイン家の名を汚す事になるから家に連れ戻すのか、もしくは幽閉とか、亡き者にする気とか!?
 そんなリアムさんがゆっくりと私に近付いてきて、思わず身構えていると……突然、深々と頭を下げたっ!?

「アリスお嬢様! どうか俺も連れて行ってくださいっ!」
「私は屋敷には戻りませ……えっ!? あの、なんて?」
「ですから、アリスお嬢様の出立の護衛として、俺も同行させていただけないかと思いまして」

 えっ!? 何これ。どういう事なの!?
 リアムさんはずっと頭を下げたままだし、訳が分からない。

「あの……どういう事ですか? お父様から同行するように言われたのでしょうか?」
「いえ、違います。俺は、自分の意志でアリスお嬢様を追いかけて来たんです」
「どうして?」
「どうして……って、お嬢様はお屋敷を出られたのですよね? 美味しい料理を作る為に」
「はい。その通りですが」
「その、俺は……本人に面と向かって言うのは、中々恥ずかしいのですが、実はアリスお嬢様の……」

 先程まで凛々しい様子だったリアムさんが、突然恥ずかしそうに顔を赤らめ、俯いて声が小さくなる。
 一体何なのだろうか……って、ちょっと待って! これってもしかして、恋愛漫画とかにある、告白とかって事なのっ!?
 待って! 私はアリスだけど、アリスじゃないのっ!
 日本人だった時だって、恋愛経験なんて殆ど無いし、リアムさんの事は知っているけど、深くは知らない。
 えっと、えっと、確かリアムさんは二十三歳だから……六歳差は、この世界なら普通なのよね?
 金髪碧眼で、顔も整っているけど、私は一体どうすれば良いのっ!?
 だけど、私の考えが纏まる前に、リアムさんが覚悟を決めたのか、顔を上げて私の手を握ってきたっ!?

「俺は……俺は、アリスお嬢様の作る料理に惚れてしまったんです!」
「わ、私はまだ十七歳だから……ん?」
「食事が好きだなんて変に思われるかもしれませんが、先日のサンドイッチという食べ物と温かいスープをいただいてから、もうアリスお嬢様の料理が頭から離れないんです」

 あ、そういう事か。
 あはは……ビックリしたぁ。まだ心臓がドキドキしているよ。
 けど、私の料理が好きだと言ってくれるのは嬉しい。
 それに、食事に興味のないこの世界の住人が、私の料理のファンになってくれた。
 つまり、この世界の人たちも美味しいご飯を求めているはずなんだ!

「リアムさん。美味しいご飯を食べたい気持ちは、普通の事です。おかしな事なんて、少しもありません」
「アリスお嬢様……そう言っていただけると助かります。俺は、あのスープを口にして、身体の芯から温かくなったんです。食事で心が震えたというか、感動したのは初めての事で……あのスープの香りが忘れられないんです」
「ふふっ、そんなに喜んでいただけたのなら、私も作った甲斐があるというものです。スープなら、また作りますよ」
「本当ですか!? ありがとうございます……そうだ! アリスお嬢様。この道を……街道を西に進むのでしたら、俺の故郷に行きませんか? そう遠くないですし、すぐ近くに山があって木の実が沢山採れるんです」
「じゃあ、最初の目的地はリアムさんの故郷にしましょう! 各地の食材を活かした、美味しいご飯をいっぱい作るんだからっ!」
「はいっ! 是非、お願いしますっ!」

 そう言うと、リアムさんが馬に乗せてくれた。
 さて、フルーツを使って何を作ろうかな?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

できない子に転生しましたが、家族と食卓があれば十分です ―人間不信だった私が、ゆっくり育つ異世界生活―

愛朱ひいろ
ファンタジー
人の顔色ばかり伺い、心を壊した26歳の会社員女性。 彼女は死後、異世界で「できない子」として転生する。 魔法は使えない。 体は不器用で、成長も人より遅い。 前世の記憶のせいで、人と関わることが少し怖い。 けれどこの世界には、 見守り支えてくれる両親と、 あたたかい食卓があった。 泣いて、つまずいて、できないことに落ち込みながら、 彼女は少しずつ「できないままでも、生きていていい」と知っていく。 これは、 最強でもチートでもない主人公が、 家族と食事に支えられながら、ゆっくり育ち直す 生活密着型・異世界転生×成長×グルメファンタジー。 ……の、予定です。 毎日更新できるように執筆がんばります!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~

みちのあかり
ファンタジー
10歳で『ルゥ』というギフトを得た僕。 どんなギフトかわからないまま、義理の兄たちとダンジョンに潜ったけど、役立たずと言われ取り残されてしまった。 一人きりで動くこともできない僕を助けてくれたのは一匹のフェンリルだった。僕のギルト『ルゥ』で出来たスープは、フェンリルの古傷を直すほどのとんでもないギフトだった。 その頃、母も僕のせいで離婚をされた。僕のギフトを理解できない義兄たちの報告のせいだった。 これは、母と僕と妹が、そこから幸せになるまでの、大切な人々との出会いのファンタジーです。 カクヨムにもサブタイ違いで載せています。

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

処理中です...