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第19話 何とか乗り切ったランチタイム
「ありがとうございましたー!」
「つ、次の方……ご注文は?」
もうクレープを何個作っただろうか。
四十個くらいまでは覚えているのだけど、そこから先はもう数えるのを止めた。
注文やお会計の対応はキャシーさんがやってくれているので、売り上げを聞けばわかるのだろうけど……聞いてしまったら、疲れが一気に来そうなので、あえて聞かずにひたすらクレープを作る。
「アリスー! 頑張れー! もう少しで列が終わるよー!」
「ほ、ホントっ!? ありがとう、タマちゃん! よーし、頑張るっ!」
火魔法で鉄板を熱しつつ、水魔法で冷たい水を霧吹きのように吹きかけ、食材……ではなく、こっそり私を冷やしながら何とか頑張る。
火力は自分で調整出来るので、メチャクチャ熱いという訳ではないのだけれど、それでも鉄板でずっと料理しているのと、立ちっぱなしなのとでクラクラしてきたけど、あと少し……あと少しなんだ!
こんなの学祭に比べれば、全然大した事ないんだからぁぁぁっ!
「お待たせしましたー! チーズクレープですー!」
「わぁ! 温かいご飯なんて初めてよ! ……それに、凄く美味しい! お嬢ちゃん、ありがとう!」
最後のお客さん……長い槍を手にした女性に感謝され、少し元気が出る。
そう、ご飯を食べた人が笑顔になってくれるのは嬉しいもんね。
「お、お嬢様ぁぁぁ。お、お疲れ様でした」
「キャシーさんも、お疲れ様です。手伝ってくださって、本当にありがとうございました。私一人では捌き切れなかったです」
食材も補充しないといけないし、何よりキャシーさんが働きっぱなしだったので、看板代わりの石の壁を消して休憩中である事を示す。
火魔法も止めたし、鉄板の熱が下がったら、最初に掛かっていた布を屋台に掛ければ良いのかな?
「……って、この屋台って、この場所に置きっぱなしで良いのかな?」
「アリスさん。それなら、冒険者ギルドに許可を取っておきました。あと、これを打ち付けておけば、よっぽどの奴しか近寄らないかと」
「これは……紋章?」
「えぇ。俺の家……この町の領主の物である事を示しています。勝手な事をすると投獄も有り得ると、ギルドからも冒険者たちに周知するようにしてもらっています」
なるほど。まぁこの屋台はリアムさんの家が代金を出してくれているし、何一つ間違っていないからね。
とりあえず、食材の補充と休憩の為、一旦リアムさんの屋敷へ戻る事にした。
「しかし……お嬢様。奥様は大丈夫だと仰っておりましたが、暫くはリアムさんに頼らないとマズいですね」
「ん? 頼るというのは?」
「あー、料理に集中されていたから……あの、非常に言いにくいのですが、列が長くて冒険者の一部が暴れ出しそうになっていたんです」
「えぇっ!? そ、そうだったの!?」
「はい。リアムさんが、マントに刺繍された領主の紋章を見せて、事無きを得ておりましたが」
いつの間にかリアムさんがマントを身に着けているなーって思っていたけど、クレーム対策だったんだ!
「リアムさん。ありがとうございました」
「いえ。俺はアリスさんを護る為に来ているのでそれに、食料対策は本来我が家が実践しなければならないので、感謝するのは俺の方ですよ」
「いやいやいや……って、キリがないですね」
「ふふっ、そうだな」
ひとまずリアムさんとの譲り合いはここまでにして、列が長すぎるのを何とかしなければ。
とはいえ、気温が暑すぎるとかなら別だけど、温かい食事を取ってもらうという方針は変えたくない。
値段を上げれば、お客さんが減って、列が短くなるかもしれないけど、それはそれで違う気もする。
大量に作っておけるカレーやシチューなら、対応する速度は上げられそうだけど、紙の器などがないこの世界の屋台で出すメニューとしては難しい。
「うーん……」
「アリスー、お腹が空いたのー?」
「え? ううん。夕方は何を出そうかなって思って」
「さっきのクレープはダメなのー? みんな、美味しそうに食べてたよー?」
「そうだけど、もう少しお客さんに早く提供したいなって思ってね」
そう、クレープが悪い訳ではない。
だけど、生地を一枚一枚焼いてから、具材を載せて畳んで……思い返してみると、大学の学祭では二人で作っていたから、提供速度が今の二倍だった。
材料の下ごしらえの事を考えると、あまり悩んでいる時間もないし、あまりお客さんを待たせたくない。
さっきの最後のお客さんも、実のところ相当待ってくれていたのだろう。
美味しいと笑顔を浮かべてくれたから良かったものの、怒ってあの長い槍を向けられたりしようものなら……って、待って! そうか! これならいけるんじゃない!?
「キャシーさん。この辺りで、木工製品を扱っているお店ってありませんか?」
「木工製品……ですか? ど、どんな物をお探しですか?」
「えっと、私の手の長さくらいの、竹串とか木で出来た串が欲しいのですが」
「それなら、あちらの職人通りが宜しいかと。木工職人を紹介致します」
木工職人! 私が探している物をズバリ作ってくれそうだけど、今から注文して夕方に間に合うかな?
「つ、次の方……ご注文は?」
もうクレープを何個作っただろうか。
四十個くらいまでは覚えているのだけど、そこから先はもう数えるのを止めた。
注文やお会計の対応はキャシーさんがやってくれているので、売り上げを聞けばわかるのだろうけど……聞いてしまったら、疲れが一気に来そうなので、あえて聞かずにひたすらクレープを作る。
「アリスー! 頑張れー! もう少しで列が終わるよー!」
「ほ、ホントっ!? ありがとう、タマちゃん! よーし、頑張るっ!」
火魔法で鉄板を熱しつつ、水魔法で冷たい水を霧吹きのように吹きかけ、食材……ではなく、こっそり私を冷やしながら何とか頑張る。
火力は自分で調整出来るので、メチャクチャ熱いという訳ではないのだけれど、それでも鉄板でずっと料理しているのと、立ちっぱなしなのとでクラクラしてきたけど、あと少し……あと少しなんだ!
こんなの学祭に比べれば、全然大した事ないんだからぁぁぁっ!
「お待たせしましたー! チーズクレープですー!」
「わぁ! 温かいご飯なんて初めてよ! ……それに、凄く美味しい! お嬢ちゃん、ありがとう!」
最後のお客さん……長い槍を手にした女性に感謝され、少し元気が出る。
そう、ご飯を食べた人が笑顔になってくれるのは嬉しいもんね。
「お、お嬢様ぁぁぁ。お、お疲れ様でした」
「キャシーさんも、お疲れ様です。手伝ってくださって、本当にありがとうございました。私一人では捌き切れなかったです」
食材も補充しないといけないし、何よりキャシーさんが働きっぱなしだったので、看板代わりの石の壁を消して休憩中である事を示す。
火魔法も止めたし、鉄板の熱が下がったら、最初に掛かっていた布を屋台に掛ければ良いのかな?
「……って、この屋台って、この場所に置きっぱなしで良いのかな?」
「アリスさん。それなら、冒険者ギルドに許可を取っておきました。あと、これを打ち付けておけば、よっぽどの奴しか近寄らないかと」
「これは……紋章?」
「えぇ。俺の家……この町の領主の物である事を示しています。勝手な事をすると投獄も有り得ると、ギルドからも冒険者たちに周知するようにしてもらっています」
なるほど。まぁこの屋台はリアムさんの家が代金を出してくれているし、何一つ間違っていないからね。
とりあえず、食材の補充と休憩の為、一旦リアムさんの屋敷へ戻る事にした。
「しかし……お嬢様。奥様は大丈夫だと仰っておりましたが、暫くはリアムさんに頼らないとマズいですね」
「ん? 頼るというのは?」
「あー、料理に集中されていたから……あの、非常に言いにくいのですが、列が長くて冒険者の一部が暴れ出しそうになっていたんです」
「えぇっ!? そ、そうだったの!?」
「はい。リアムさんが、マントに刺繍された領主の紋章を見せて、事無きを得ておりましたが」
いつの間にかリアムさんがマントを身に着けているなーって思っていたけど、クレーム対策だったんだ!
「リアムさん。ありがとうございました」
「いえ。俺はアリスさんを護る為に来ているのでそれに、食料対策は本来我が家が実践しなければならないので、感謝するのは俺の方ですよ」
「いやいやいや……って、キリがないですね」
「ふふっ、そうだな」
ひとまずリアムさんとの譲り合いはここまでにして、列が長すぎるのを何とかしなければ。
とはいえ、気温が暑すぎるとかなら別だけど、温かい食事を取ってもらうという方針は変えたくない。
値段を上げれば、お客さんが減って、列が短くなるかもしれないけど、それはそれで違う気もする。
大量に作っておけるカレーやシチューなら、対応する速度は上げられそうだけど、紙の器などがないこの世界の屋台で出すメニューとしては難しい。
「うーん……」
「アリスー、お腹が空いたのー?」
「え? ううん。夕方は何を出そうかなって思って」
「さっきのクレープはダメなのー? みんな、美味しそうに食べてたよー?」
「そうだけど、もう少しお客さんに早く提供したいなって思ってね」
そう、クレープが悪い訳ではない。
だけど、生地を一枚一枚焼いてから、具材を載せて畳んで……思い返してみると、大学の学祭では二人で作っていたから、提供速度が今の二倍だった。
材料の下ごしらえの事を考えると、あまり悩んでいる時間もないし、あまりお客さんを待たせたくない。
さっきの最後のお客さんも、実のところ相当待ってくれていたのだろう。
美味しいと笑顔を浮かべてくれたから良かったものの、怒ってあの長い槍を向けられたりしようものなら……って、待って! そうか! これならいけるんじゃない!?
「キャシーさん。この辺りで、木工製品を扱っているお店ってありませんか?」
「木工製品……ですか? ど、どんな物をお探しですか?」
「えっと、私の手の長さくらいの、竹串とか木で出来た串が欲しいのですが」
「それなら、あちらの職人通りが宜しいかと。木工職人を紹介致します」
木工職人! 私が探している物をズバリ作ってくれそうだけど、今から注文して夕方に間に合うかな?
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