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第21話 冒険者たちのご飯を何とかするアリス
「な、何とか……乗り切った」
「お、お嬢様っ!? し、しっかりしてくださいっ!」
夕食に並ぶ大勢の冒険者さんたちの為に、はしまきをとにかく沢山作った。
その甲斐あって、みんなが美味しそうに食べてくれているのだけど……フラフラして目が霞むのと、声が出ない。
疲れすぎて、こっそり身体を冷やす水魔法の制御に失敗した時は、流石に焦った。
これは、学祭より大変だったかも。
「大変だーっ! アリスー、ちょっと待ってて! リアムと外へ行った時に、滋養強壮に効く実を見つけていたから!」
「た、タマちゃん!?」
「俺が一緒に行こう。キャシーさん。すまないが、ここで待っていてくれ。冒険者ギルドの前に居る方が安全だと思うから」
一人で何処かへ行こうとしていたタマちゃんをリアムさんが拾い上げ、肩に乗せて走ってくれている。
流石に町の中で、タマちゃんだけを移動させると、魔物と勘違いされて危ないかもって思ったけど、リアムさんが一緒なら大丈夫だろう。
本当はタマちゃんを止めたかったけど、疲労困憊で声が出せなかった。
ひとまず少し休んでいると、リアムさんが居なくなったところで、筋肉隆々といった感じの男性が現れる。
「な、何でしょうか。み、見ての通り、今日もう店仕舞いなんですっ! お、お嬢様、歩けますか?」
「いや、売り切れなのはわかっているんだ。だが、そっちの姉ちゃんが大丈夫かと思ってな」
「お、お嬢様なら少し休めば、きっと大丈夫です! で、ですから……」
「そうか。じゃあ、この辺のゴミの片付けは俺がやっておくから、しっかり休んでいてくれ。嬢ちゃんたちの飯……初めて食べた味だったが、感動する程旨かったぜ!」
ゴミ? ……何とか周囲を見渡してみると、串が広場に散乱していた。
ゴミ箱を屋台の横に用意しておいたんだけど……食べ終わった串をゴミ箱に捨てるのは当たり前だろうと思って、看板にも書いていない。
しまったなぁ。日本とは色々違うのに。
そんな事をぼんやり考えているうちに、先程の男性とその仲間の人たちが、捨てられている串を回収し、広場を綺麗にしてくれた。
「じゃあな、嬢ちゃん。無理するなよ」
「……あ、あの。ありがとうございました」
「何言ってんだ。こちらこそ、安い値段で旨い物をありがとうよ!」
……もしかして、リアムさんのお母さんが言っていた、冒険者さんたちが私を守ってくれるっていうのはこの事を言っていたの?
そんな事を考えていると、リアムさんとタマちゃんが戻ってきた。
「アリスー! これ……ゴジベリーっていうのー! 疲れが取れるから食べてー!」
「これは……ありがとう、タマちゃん。じゃあ、早速いただこうかな」
タマちゃんの言葉で、リアムさんがミニトマトを更に小さくさせたような紅い実を手渡してくれた。
ゴジベリーって言うくらいだから、イチゴの仲間なのだろうか。
そんな事を思いながら、口へ。
熟す前の青いイチゴって感じなのかな? ちょっと渋みと苦みがあって、酸っぱい感じがするけど……凄い。少し身体が軽くなったような気がする。
「タマちゃん、ありがとう。元気が出てきたよ」
「良かった……アリス、帰ろー!」
タマちゃんの採ってきてくれたゴジベリーを無駄にしないように、何とか歩いて……あれ? 本当に疲れがなくなったみたいに歩ける。
異世界の実って、凄いかも!
だけど、一度に食べ過ぎるのは良くないらしく、一日一粒までと言われ……疲れた日に食べながら、冒険者さんたちの為に数日料理を作り続けていく。
そんな日々が暫く続いた後、いつものように夕方の屋台を終えて戻って来ると、リアムさんのお母さんがやってきた。
「アリス様。今まで、この町の食料問題の為に尽力いただき、本当にありがとうございました」
ん? ございました……って、過去形?
「明日からは……屋台を止めませんか?」
「えっ!? そ、それはどういう意味でしょうか!? 私は、みんなに美味しい料理を……」
「あっ! ごめんなさいね。今の言い方だと誤解されてしまいますね」
そう言うと、お母さんが咳ばらいをして、真っすぐに私を見つめてくる。
「アリス様。ようやく、新たな料理店の内装工事が終わりました。次は、そちらで働いてみませんか?」
「あっ! 遂に完成したんですね! 屋台も良いですけど、広いキッチンだと沢山の料理が作れて、より大勢の方に食事を提供出来ますもんね! 是非、やらせてください!」
「快諾してくださり、ありがとうございます。では、明日は屋台をお休みして、私と一緒にお店を見に行きましょう」
「えっと……大丈夫なのでしょうか。今まで、昼と夕方に毎日料理を作っていましたが」
「えぇ。そのお店で働く料理人も既に何人も雇っています。明日は、その方々に対応してもらいますので」
なるほど。
思い返してみれば、もう数日間屋台で頑張りっぱなしで、全く休んでいなかった。
身体を休める為にも、ちょうど良いのかも。
というわけで、明日は屋台をお任せする事にしたんだけど、お母さんから想定外な言葉が出てきた。
「アリスさんのお店ですし、明日は従業員も紹介致しますね」
「えーっと、私が働くお店……という意味ですよね?」
「いえ? アリスさんに店長をお任せしようと思っています。利益を求める必要はありませんので、これまで通り町の人たちに食事を届ける事を目的に、好きに使ってください」
ん? ちょ、ちょっと待って。私は作る方が好きなんだけど……て、店長!? 私がするのっ!?
「お、お嬢様っ!? し、しっかりしてくださいっ!」
夕食に並ぶ大勢の冒険者さんたちの為に、はしまきをとにかく沢山作った。
その甲斐あって、みんなが美味しそうに食べてくれているのだけど……フラフラして目が霞むのと、声が出ない。
疲れすぎて、こっそり身体を冷やす水魔法の制御に失敗した時は、流石に焦った。
これは、学祭より大変だったかも。
「大変だーっ! アリスー、ちょっと待ってて! リアムと外へ行った時に、滋養強壮に効く実を見つけていたから!」
「た、タマちゃん!?」
「俺が一緒に行こう。キャシーさん。すまないが、ここで待っていてくれ。冒険者ギルドの前に居る方が安全だと思うから」
一人で何処かへ行こうとしていたタマちゃんをリアムさんが拾い上げ、肩に乗せて走ってくれている。
流石に町の中で、タマちゃんだけを移動させると、魔物と勘違いされて危ないかもって思ったけど、リアムさんが一緒なら大丈夫だろう。
本当はタマちゃんを止めたかったけど、疲労困憊で声が出せなかった。
ひとまず少し休んでいると、リアムさんが居なくなったところで、筋肉隆々といった感じの男性が現れる。
「な、何でしょうか。み、見ての通り、今日もう店仕舞いなんですっ! お、お嬢様、歩けますか?」
「いや、売り切れなのはわかっているんだ。だが、そっちの姉ちゃんが大丈夫かと思ってな」
「お、お嬢様なら少し休めば、きっと大丈夫です! で、ですから……」
「そうか。じゃあ、この辺のゴミの片付けは俺がやっておくから、しっかり休んでいてくれ。嬢ちゃんたちの飯……初めて食べた味だったが、感動する程旨かったぜ!」
ゴミ? ……何とか周囲を見渡してみると、串が広場に散乱していた。
ゴミ箱を屋台の横に用意しておいたんだけど……食べ終わった串をゴミ箱に捨てるのは当たり前だろうと思って、看板にも書いていない。
しまったなぁ。日本とは色々違うのに。
そんな事をぼんやり考えているうちに、先程の男性とその仲間の人たちが、捨てられている串を回収し、広場を綺麗にしてくれた。
「じゃあな、嬢ちゃん。無理するなよ」
「……あ、あの。ありがとうございました」
「何言ってんだ。こちらこそ、安い値段で旨い物をありがとうよ!」
……もしかして、リアムさんのお母さんが言っていた、冒険者さんたちが私を守ってくれるっていうのはこの事を言っていたの?
そんな事を考えていると、リアムさんとタマちゃんが戻ってきた。
「アリスー! これ……ゴジベリーっていうのー! 疲れが取れるから食べてー!」
「これは……ありがとう、タマちゃん。じゃあ、早速いただこうかな」
タマちゃんの言葉で、リアムさんがミニトマトを更に小さくさせたような紅い実を手渡してくれた。
ゴジベリーって言うくらいだから、イチゴの仲間なのだろうか。
そんな事を思いながら、口へ。
熟す前の青いイチゴって感じなのかな? ちょっと渋みと苦みがあって、酸っぱい感じがするけど……凄い。少し身体が軽くなったような気がする。
「タマちゃん、ありがとう。元気が出てきたよ」
「良かった……アリス、帰ろー!」
タマちゃんの採ってきてくれたゴジベリーを無駄にしないように、何とか歩いて……あれ? 本当に疲れがなくなったみたいに歩ける。
異世界の実って、凄いかも!
だけど、一度に食べ過ぎるのは良くないらしく、一日一粒までと言われ……疲れた日に食べながら、冒険者さんたちの為に数日料理を作り続けていく。
そんな日々が暫く続いた後、いつものように夕方の屋台を終えて戻って来ると、リアムさんのお母さんがやってきた。
「アリス様。今まで、この町の食料問題の為に尽力いただき、本当にありがとうございました」
ん? ございました……って、過去形?
「明日からは……屋台を止めませんか?」
「えっ!? そ、それはどういう意味でしょうか!? 私は、みんなに美味しい料理を……」
「あっ! ごめんなさいね。今の言い方だと誤解されてしまいますね」
そう言うと、お母さんが咳ばらいをして、真っすぐに私を見つめてくる。
「アリス様。ようやく、新たな料理店の内装工事が終わりました。次は、そちらで働いてみませんか?」
「あっ! 遂に完成したんですね! 屋台も良いですけど、広いキッチンだと沢山の料理が作れて、より大勢の方に食事を提供出来ますもんね! 是非、やらせてください!」
「快諾してくださり、ありがとうございます。では、明日は屋台をお休みして、私と一緒にお店を見に行きましょう」
「えっと……大丈夫なのでしょうか。今まで、昼と夕方に毎日料理を作っていましたが」
「えぇ。そのお店で働く料理人も既に何人も雇っています。明日は、その方々に対応してもらいますので」
なるほど。
思い返してみれば、もう数日間屋台で頑張りっぱなしで、全く休んでいなかった。
身体を休める為にも、ちょうど良いのかも。
というわけで、明日は屋台をお任せする事にしたんだけど、お母さんから想定外な言葉が出てきた。
「アリスさんのお店ですし、明日は従業員も紹介致しますね」
「えーっと、私が働くお店……という意味ですよね?」
「いえ? アリスさんに店長をお任せしようと思っています。利益を求める必要はありませんので、これまで通り町の人たちに食事を届ける事を目的に、好きに使ってください」
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