20 / 67
絶対龍種を噛ませ扱いする最近の人類は最高にイカれていると思う件について
しおりを挟むアリス達の異様な雰囲気を纏わせた自己紹介が無事終わったところで、依然として俺達は深い森の中だ。王国から追手が来る可能性も考慮すると早々に移動したいところである。
「改めてここってどこなの?」
『王国からかなり離れた場所というのは分かりますがね。うーん一面のクソ緑』
その表現は色々アウトだろ。
しかしよくよく見渡すと今自分達がいるこの空間からして意味不明だ。森の中なのに無駄に開けている。しかも人工的に開拓したという感じでもなく、まるで巨大な何かが通り過ぎた跡と表現したほうがしっくりくる。
なんだかとても嫌な予感がする件について。理由は分からないけど今すぐ可及的速やかにこの場所から離れるべきと直感が叫んでいるんですけど。
しかしそう考えたところでここは異世界。右も左も分からないどころか、そもそも知っていることが存在しない。
聖剣ちゃん達が案内してくれれば助かるが所詮武器だ。怪しいものである。
『酷―い。雑魚雑魚マスターの分際で生意気ぃ!』
「いやいやいや僕の心の中を読むのはやめてよね」
ほんとやめて欲しい。陰キャオタクの心の中は湖の乙女心のようにデリケートなのだ。ええ、邪なことは考えていないです。世界平和とか? 他には……うーん特にないな。
『読んでないですよ? そもそもマスターは顔に出し過ぎなんですよ』
え、マジで?
『マジマジ。本気と書いてマジです』
『うんうん本当にそれな』
聖剣ちゃんの言葉に魔剣ちゃんも同意した。
そっかーそんなに分かりやすかったかー。割とショックだしポーカーフェイスの練習しておくか。そんな機会はないと思うけどいざという時に童貞とバレるのも嫌ですしおすし。
「はぁ、くだらないこと言ってな……あっ」
アリスは呆れたようにため息を吐いたこと思えば急に硬直した。まるで見てはいけないような。偶然に道端で口裂け女みたいな怪異に遭遇してしまったような芸術的な硬直だ。
「どしたん……ってマジか」
硬直したアリスが視線を向ける先に僕も振り向く。そして愕然とした。
成程。だからここ一帯の木々はなぎ倒されていたのか。
何せそこには身の丈にして十数倍の体躯を持つドラゴンが悠然と鎮座していたからだ。
◆
昨今ドラゴンと聞けば過去の八面六臂とも言える活躍は遥か遠く。もはやかませという名の烙印を押された状態だ。もうね、なろう系小説でチーレム主人公に散々と瞬殺されまくっているわけですよ。いっそ哀れなまである。
「グルルルル……」
「わぁお」
しかし実際に目にするとどうだ。山脈の一部と言っても遜色ない体躯にびっしりと赤褐色の鱗で覆われた強固な全身。あまりにも絶対的存在だ。
分厚い鋼板すら易々と貫けそうな重厚で鋭い牙や全てを覆い尽くせそうなほど広大な翼などなど。上げればきりがないがその絶対的とも言えるイメージを確固たるものにしているのが瞳だ。
一目見ただけで理解る。あれは漫画やラノベのように噛ませの雑魚ではなく、人が逆立ちしても敵わない領域に君臨する存在だと。
彼を前に僕は呆然としアリスは息を呑んだ。
バレてはいけない。幸い向こうはその広大すぎる体躯のせいかこちらには気がついていない。
今のうちにさっさとこの場を去るべきだ。
そう考えていた。そう考えていたはずなのに、
『おーおー! 聖剣ちゃん的にドラゴンを見るのは久しぶりですが相も変わらず図体だけでっかくて尊大ですねぇ!』
ちょっおま!?
ここでまさかの行動。なんということでしょうか。聖剣ちゃんが分かりやすいぐらいデカい声でドラゴンをディスり始めたじゃありませんか。まじふざけんな。
当然ドラゴンさんは、
「コノ不遜ナ物言ハダレダ。イイ度胸ダ……死ニタイラシイナ!!」
ほらぁこうなるじゃん。激おこじゃん。
うすうす感じていたけど聖剣ちゃんってアホなの? 死ぬの???
「我ハ大陸龍タンニーン、ガ眷属ナリ。我ガ息吹ニテ灰燼二帰ソウ!!」
やべえ口からフレイムが溢れ出している。こりゃ駄目かもしれんね。アリスに至っては自身の生命活動終了を悟ったのか胸の前で十字を切り始めた。
ていうかそもそも大陸龍ってなんぞ???
『あぁ、この世界の果てにいると言われる大陸程広大な体躯を持つ龍ですね。まさかその眷属がこんなところまで遥々来るとは驚きです』
大陸ぐらい大きいとかマジかよ。更に勢い良く噴き出す炎。
実際、目の前にいる龍ですら小さな山と思うぐらいには巨大だ。それと比べようもならないぐらい更に大きい存在がいるとか異世界ヤバイな。
『まー大陸龍ならまだしも所詮は眷属です。彼らに比べればクソ雑魚もいいところ。マジで雑魚雑魚です』
「ちょっおま!? そろそろいい加減にしろよ!?」
「ソノ不遜ナ物言……コロスッ!!」
「は、はわわわわ」
聖剣ちゃんの煽りで更に激昂するドラゴン。
そんな悠長に会話している場合ではなかった。に、逃げなきゃ。また聖剣ビームで飛んで逃げなきゃっ。
『まーまー落ち着いて下さいマスター』
「は?」
こんな状況なのにこのクソゴミ聖剣はどこまでも気楽そうだった。お前のせいでこうなってんだぞ。少しは焦れよ。
『こうなっては仕方ありませんね。倒しちゃいましょう』
「は?」
『ちょうどいいじゃないですか。ちょっと大きいですけど手頃な魔獣さんですよ』
いやでかくね?
いやでけぇよ。ちょっと大きいとレベルではないし手頃とかいう概念も狂っているだろ。
『この世界の人間には少々手に余る相手です。勇者らしくここで討伐しておきましょう』
一同が目の前の状況に絶望する中、我らが聖剣様はそんなことを大層能天気そうに宣いやがるのであった。
75
あなたにおすすめの小説
拾った子犬がケルベロスでした~実は古代魔法の使い手だった少年、本気出すとコワい(?)愛犬と楽しく暮らします~
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
旧題: ケルベロスを拾った少年、パーティ追放されたけど実は絶滅した古代魔法の使い手だったので、愛犬と共に成り上がります。
=========================
<<<<第4回次世代ファンタジーカップ参加中>>>>
参加時325位 → 現在5位!
応援よろしくお願いします!(´▽`)
=========================
S級パーティに所属していたソータは、ある日依頼最中に仲間に崖から突き落とされる。
ソータは基礎的な魔法しか使えないことを理由に、仲間に裏切られたのだった。
崖から落とされたソータが死を覚悟したとき、ソータは地獄を追放されたというケルベロスに偶然命を助けられる。
そして、どう見ても可愛らしい子犬しか見えない自称ケルベロスは、ソータの従魔になりたいと言い出すだけでなく、ソータが使っている魔法が古代魔であることに気づく。
今まで自分が規格外の古代魔法でパーティを守っていたことを知ったソータは、古代魔法を扱って冒険者として成長していく。
そして、ソータを崖から突き落とした本当の理由も徐々に判明していくのだった。
それと同時に、ソータを追放したパーティは、本当の力が明るみになっていってしまう。
ソータの支援魔法に頼り切っていたパーティは、C級ダンジョンにも苦戦するのだった……。
他サイトでも掲載しています。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる