53 / 67
ギルドマスター②
しおりを挟む「君達もそう思うだろう――異世界より来訪せし勇者殿」
冒険者ギルドマスターであるアルマテア・ガラハッドは剣呑雰囲気を隠すことなくそう告げた。
思わず息を呑んだ。横目でアリスを見るが彼女も同じような感じだった。
ニャルメアにバレた時点で覚悟はしていたが、やはり彼女にもバレていたか。
落ち着け。呑まれるな。
きっとリークされただけだ。ここは異世界であり、報告する手段などいくらでもあるはずだ。
「あぁ先に言っておくが私はニャルからまだ一切の報告を受けていないからな」
心の臓を強引に鷲掴みされたような感覚に落ちいった。
まいったね。まるで此方の心の底すら見透かされているんじゃなかろうか。現段階であればまだ抵抗することも出来そうだが、あまり意味があるように思えなかった。
「一応参考までに聞きたいんだけど、どうしてそう思ったんですか?」
「まぁ半分こじつけなんだがね。元々王都王城にいる情報通から勇者が脱走したという話は聞いていたんだ。そこに最近、誰にも気づかれることなく討伐された山脈龍種《ドラゴン》の鱗を持った人間が現れた。王都とこの都市は距離的にも比較的遠くはないし、もしかしたらと考えても可笑しくはないだろう」
一拍。
「そして極めつけは冒険者ギルドでカマセ氏と起こした諍いだ。あの件で君はカマセ氏の魔術を無効化したそうじゃないか。魔術無効化なんていう高等魔術を使える人間などそうはいない。それを聞いて私は確信したよ」
あれは悪手だったのか。よくよく考えれば聖剣ちゃんはこの世界において超がつくほど有名な存在だ。その能力が知れ渡っているのは当然のことだ。
「完全にバレているみたいだし今更言い訳しても無駄か。この情報ってもう広まっている感じ?」
「あぁそれは心配しなくても大丈夫だ。この都市で気がついているのは私とニャルぐらいだろうよ」
「一応確認しておくけどまさか大々的にバラすつもりはないよね……?」
「そんなことを言われるのは心外だな。この件を誰にも口外しないことをギルドマスターの名に懸けて誓うよ。もしこれが破られるようならそこのニャルが腹を切って詫びをいれる」
「ニャッ!?」
すげーやこの人。真っ先に自分の同僚を売りやがったよ。しかも自分に被害が及ばない形で。
「ハハハ冗談だ。もちろんその時は私も腹を切るさ」
「ニャニャ~! 結局アタシが腹切りすることに変わりはないのニャ!!」
さてはこの人、真面目そうに見えて面白い人だな?
「変わった人ね……」
アリスが呆然としながら呟いた。それな。急にシリアスな雰囲気がぶち壊しになるからやめてほしいよね。これじゃシリアルだよ。
「そうかい? 別に普通の人間だと思うが。釈然としないが何故か偶に言われるんだ。腕が三本生えているわけでもないのにな」
「ニャニャ~ギルマスはあんまり喋らないほうがいいと思うニャぁ」
ほんとそれな。俺もそう思います。ギルマスは俗に言う残念美人ってやつなのね。
「むぅ……どこか釈然としないが今は置いておこう。話を戻そうか」
アルマテアはコホンと咳払いをした。
「ここからが本題だが――王城から逃亡した勇者がこの都市に何の用だい?」
再びアルマテアに剣呑な雰囲気が戻った。先程の残念さは見る影もないほどだ。それだけの貫禄があった。
「興味本位というところもあるが、まぁこれでも私はこの都市における冒険者ギルドのマスターだ。勇者の意向を気にするのは可笑しいことではないだろう。ましてやそれが逃亡中の勇者なら尚更だ」
どうしたものか。
テキトーなことをほざいてその場を誤魔化すことは出来るだろう。しかしそれではおそらく彼女には見透かされてしまうだろう。だけど本当のことを言って信じて貰えるか甚だ疑問なところだ。
そこはアリスも同じ考えらしい。彼女もまた俺と同じで困り顔を浮かべていた。
まぁいいか。この際、本音をぶちまけるか。なるようになれってヤツだ。
「まぁ単刀直入に言うと王国がクソ過ぎたので脱走してきました。それでこの都市に偶々辿り着いたって感じです、ほぼノープランですハイ」
その回答があまりにも予想外だったのか、アルマテアは目をパチクリとさせた。
「フッ、フハッ、こいつはマジか」
一拍。
「フ、フハハハハハハハ!! 君は随分と歯に衣をかぶせない奴なんだな。嘘をついているようにも見えない。気に入った! 信じようじゃないか!!」
「いいの? 自分で言っていてアレだけど結構滅茶苦茶なこと言っていると思うけど」
「いいさ、私がそう判断した。それに王国がクソなことには私も大いに同感だしね」
あ、やっぱりそうなんだ。
悲しいかなどこの世界でも王族的な存在は腐敗していくものなんだね。
「さて私からの質疑はとりあえずこれぐらいだが、このままでは些か不公平だ。この私に聞きたいことがあれば可能な限り回答しよう」
ふむ聞きたいことか。
少しだけ驚いたが、これはちょうど良い機会だ。ギルドマスターという立場であれば一般人が知り得ぬ情報すら把握している可能性が高い。
なので俺はずっと疑問でしょうがなかったことを口に出すことにした。
「じゃあ俺も単刀直入に聞くけどさ。この世界って本当に戦争しているの?」
60
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる