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次の日目が覚めると、見慣れぬ天井が目に入った。
ガバリと体を起こして、そして深く絶望する。
(ここは…王宮の客間だ…。ゲームはクリアしたはずなのに何でまだここに…)
ベッドの上に涙が大きな染みをつくる。
鏡が目に入る。
黒髪黒目の美少年のリリスがいる。
リリスが泣いている。自分と同じように。
俺はリリスで、リリスは俺だから。
(違う!俺は恭弥だ!リリスじゃない!)
思わず鏡を殴りたくなる。
だんだんと恭弥の頃の自分が上手く思い出せなくなってきている。
早く帰らなくては。
恭弥は消える。
リリスは急いで手紙を書いた。
「どこに行くつもり?」
声をかけられてびくりと体を震わす。
(何故バレた?俺は今使用人の格好をしているのに。誰にもバレずに抜け出してきたはずだ)
「申し訳ありません、殿下。急いでおりますので。料理長が野菜を追加で買ってこいと…」
「まだしらを切るつもり?リリス」
低い声で名前を呼ばれる。
俺は観念して、念の為被っていたフードを外した。
「どこに行くつもりなの?」
「少し、孤児院に。ちょっとホームシックになっちゃって」
「それじゃあ何故、8番通りに公爵家の馬車が待機しているのかな」
「…たまたまだと思います」
「私に嘘をつくんだね。君はまた、そうやって私の前から消えるつもりなんだ」
「また…?」
そう疑問に思った瞬間、ルシファーに抱き寄せられお姫様抱っこをされた。
「うわっ!俺をどこに連れて行くつもりですか?」
「君が逃げられないところだよ」
ルシファーはいつものように優しく微笑むが、何故だか怖い。体の芯から冷えるような感じがする。
「離してください!少し話しましょう!」
「話したって無駄だよ。君はまた嘘をつくんでしょう?」
「ちゃんと本当のことを…」
“本当のことを話します”そう言い切る前に、ルシファーにキスで口を塞がれた。
「少し黙って。私は怒っているんだよ」
いつの間にか、とある部屋についた。
見るからに広く豪華だからルシファーの自室だろうか。
どさっとベッドに降ろされる。
「もう君は逃げられないよ。私も逃す気は毛頭ないからね」
ルシファーが美しく微笑む。
その美しさに見惚れているうちに唇を奪われた。
目を覚ますと体のあちこちに情事の跡がくっきりと残っていた。
声は掠れて出ないし、体は重だるい。
身をよじると隣で抱きしめるように眠っていたルシファーにさらに強く抱きしめられた。
「おはよう。目が覚めた?」
「…!……!!…!?」
文句を言いたかったが、声が出なくてろくに抵抗もできない。
「昨日は無理させちゃってごめんね。でもリリスが私から逃げようとするからああするしかなかったんだ。
どうか私のそばにいて、リリス…」
昨日の夜とは打って変わって、子犬のように項垂れるルシファーに強く出ることができない。
(確かに俺が悪かったもんな…。
俺がルシファーだったらリリスのことを許さなかっただろう。結婚の約束をしたのに、逃げ出そうとするんだから)
「俺…悪か…た」
「リリス!昨晩のこと許してくれる?」
「も…ろん」
「じゃあ、もう少し我慢してね」
ルシファーににこりと微笑まれて、急に魔法をかけられる。
リリスの体がキラキラと光る。
「これは精神魔法で、リリスは私から10メートル以上離れることができない」
「…!?」
(精神魔法…!?確かその危険性から禁じられた魔法も多いんじゃなかったのか?それにどれも高度で使える人も少なかったはず…)
「私も本当はこんなことしたくなかったんだけど…。でも不安で仕方ないんだ。
もう逃げないならリリスも別に困らないよね」
ルシファーがまた嬉しそうに微笑む。
(ダニエル、お前の言う通りだ。ルシファーはヤバい)
リリスは心の中でダニエルにSOSを送った。
ガバリと体を起こして、そして深く絶望する。
(ここは…王宮の客間だ…。ゲームはクリアしたはずなのに何でまだここに…)
ベッドの上に涙が大きな染みをつくる。
鏡が目に入る。
黒髪黒目の美少年のリリスがいる。
リリスが泣いている。自分と同じように。
俺はリリスで、リリスは俺だから。
(違う!俺は恭弥だ!リリスじゃない!)
思わず鏡を殴りたくなる。
だんだんと恭弥の頃の自分が上手く思い出せなくなってきている。
早く帰らなくては。
恭弥は消える。
リリスは急いで手紙を書いた。
「どこに行くつもり?」
声をかけられてびくりと体を震わす。
(何故バレた?俺は今使用人の格好をしているのに。誰にもバレずに抜け出してきたはずだ)
「申し訳ありません、殿下。急いでおりますので。料理長が野菜を追加で買ってこいと…」
「まだしらを切るつもり?リリス」
低い声で名前を呼ばれる。
俺は観念して、念の為被っていたフードを外した。
「どこに行くつもりなの?」
「少し、孤児院に。ちょっとホームシックになっちゃって」
「それじゃあ何故、8番通りに公爵家の馬車が待機しているのかな」
「…たまたまだと思います」
「私に嘘をつくんだね。君はまた、そうやって私の前から消えるつもりなんだ」
「また…?」
そう疑問に思った瞬間、ルシファーに抱き寄せられお姫様抱っこをされた。
「うわっ!俺をどこに連れて行くつもりですか?」
「君が逃げられないところだよ」
ルシファーはいつものように優しく微笑むが、何故だか怖い。体の芯から冷えるような感じがする。
「離してください!少し話しましょう!」
「話したって無駄だよ。君はまた嘘をつくんでしょう?」
「ちゃんと本当のことを…」
“本当のことを話します”そう言い切る前に、ルシファーにキスで口を塞がれた。
「少し黙って。私は怒っているんだよ」
いつの間にか、とある部屋についた。
見るからに広く豪華だからルシファーの自室だろうか。
どさっとベッドに降ろされる。
「もう君は逃げられないよ。私も逃す気は毛頭ないからね」
ルシファーが美しく微笑む。
その美しさに見惚れているうちに唇を奪われた。
目を覚ますと体のあちこちに情事の跡がくっきりと残っていた。
声は掠れて出ないし、体は重だるい。
身をよじると隣で抱きしめるように眠っていたルシファーにさらに強く抱きしめられた。
「おはよう。目が覚めた?」
「…!……!!…!?」
文句を言いたかったが、声が出なくてろくに抵抗もできない。
「昨日は無理させちゃってごめんね。でもリリスが私から逃げようとするからああするしかなかったんだ。
どうか私のそばにいて、リリス…」
昨日の夜とは打って変わって、子犬のように項垂れるルシファーに強く出ることができない。
(確かに俺が悪かったもんな…。
俺がルシファーだったらリリスのことを許さなかっただろう。結婚の約束をしたのに、逃げ出そうとするんだから)
「俺…悪か…た」
「リリス!昨晩のこと許してくれる?」
「も…ろん」
「じゃあ、もう少し我慢してね」
ルシファーににこりと微笑まれて、急に魔法をかけられる。
リリスの体がキラキラと光る。
「これは精神魔法で、リリスは私から10メートル以上離れることができない」
「…!?」
(精神魔法…!?確かその危険性から禁じられた魔法も多いんじゃなかったのか?それにどれも高度で使える人も少なかったはず…)
「私も本当はこんなことしたくなかったんだけど…。でも不安で仕方ないんだ。
もう逃げないならリリスも別に困らないよね」
ルシファーがまた嬉しそうに微笑む。
(ダニエル、お前の言う通りだ。ルシファーはヤバい)
リリスは心の中でダニエルにSOSを送った。
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