王子様から逃げられない!

一寸光陰

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ルシファーが枕元の鈴を鳴らすと侍女たちが入ってきた。
俺は慌てて、布団を被り体を隠す。

「リリス、流石に着替えないとね。彼女たちに着替えさせてもらって」

「…やだ。…ぶんで…がえられる」

声が掠れ掠れなので伝わっているか不安になる。

「分かったよ。着替えと食事はそこに置いておいて。あと、私がまた呼ぶまで誰も入れないように」

侍女たちは一礼して去って行く。

着替えをとりに行こうと立ち上がった瞬間、腰に激痛が走った。

「…!!」

「無理しちゃダメだよ。私が着替えさせるね」

スタスタと歩くルシファーが恨めしい。
着替えさせてもらわなくちゃいけないだなんて、俺は子供じゃあるまいのに。

「ほら、バンザイして」

しかし、嬉しそうなルシファーを見ていると文句も言えなかった。
ルシファーを利用してしまったという罪悪感から、ルシファーの提案を断れない。

シャツとズボンの簡単な着替えを身につけると、途端に喉が渇いてきた。

「…ずちょうだ…。のどかわ…た」

ルシファーがコップを持ってこちらに来るのを急かす。

「はやく…。のどかわ…て……そう」

するとルシファーは徐に水を飲んだ。

「なんで…!おれ…ちょうだ…よ!」

そのまま顎をぐいっと掴まれて水を口移しされる。

「…!」

(確かに水が欲しいって言ったけど、こうやってくれとは言ってない!!)

しかし、喉が渇いたものは仕方ないので口移しされた水を黙って飲む。

「ちょっと!たしか…みずがほし…って……だけど、普通…くれよ!」

しかしルシファーは俺の抗議など全く受け付けないようだ。

「次はご飯食べようか。お腹が空いたでしょう?」

確かにお腹が空いた。
そもそも今何時なのかすらリリスは知らなかった。
昨晩、抜け出そうとしたのが夜の3時、そこから見つかって意識を失うまでして、今は昼の一時くらいだろうか?

ともかく、12時間以上食べていないに違いない。
そう考えるととてもお腹が空いてきた。


「はい、口開けて。あーん」

案の定である。
悪い予感はしていたが、やはり当たった。
抗議したって今のルシファーには無駄だろう。

俺は黙って口を開く。

「美味しい?」

俺がこくりと頷くと、良かったと言って俺のおでこにキスをした。

「顔真っ赤になってる。昨晩の方が凄かったのに、まだ恥ずかしいの?」

「いつまでたっても慣れない。恋人ができるなんて初めてだし」

ご飯を食べて、だんだんと声の掠れが収まってきたようだ。

「今までいたことないの?」

「うん」

「平民は小さいうちから色んな人と恋愛するって聞いてたけど…」

「孤児院の子どもたちの面倒を見るのに忙しくてそんな暇なかった。好きな人もいなかったし」

「じゃあ私が全部初めてだね」

嬉しそうに笑うルシファーに心がズキリと痛むと同時に、喜びが湧き上がってくるのを感じた。

(好きになっちゃダメだ、恭弥。好きになったら帰りづらくなる。帰ってからも辛くなる。)

まだ、恭弥は故郷を忘れられずにいた。
愛しい人々の待つ故郷を。


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