偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

一寸光陰

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楠涼夜は頭がおかしい

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「でもさ、はっきり言って幹斗も涼夜のこと好きなんだろ?」
「そりゃ友人としては好きだけど…」

ホームルームが終わって、各々帰りの支度をしている。
ヤマちゃんはぐいっと近づいて、声を潜める。

「だってお前らキスしてたじゃん」
「え?」
「俺、見ちゃったんだよ。帰り道の人気のない道路でキスしてるの」
「ああ、あれね。キスしたからって恋愛的に好きってなんの?」
「いやいやいや、キスするのなんて恋人だけだよ!」
「えっ!?涼夜が幼馴染でするのは普通だって言ってたけど…」
「普通じゃねぇよ!異常だよ!
とりあえず!好きじゃないならするな!勘違いされるぞ」

俺は黙って頷く。
今まで普通だと思っていたことが変だと分かっても、そう簡単に理解できるわけではない。

「幹斗、帰ろう」
「あっ涼夜!じゃあな!また明日!」

ヤマちゃんは口パクで“気をつけろよ”と言った。
俺が小さくサムズアップすると、ヤマちゃんは小さなため息をこぼした。

家までの10分ほどの道のりをゆっくり歩きながら帰る。

「部活何入るか決めた?」
「うーん、サッカー部かバスケ部で悩み中。涼夜は?」
「幹斗と同じところに入るってこと以外決めてないな」
「本当?涼夜も一緒だと心強いや。でも涼夜もってなったらサッカー一択かもな。涼夜、サッカーが1番得意だし」
「僕に合わせてくれるの?ありがとう」

涼夜は嬉しそうに微笑む。色彩の淡いブラウンの瞳が美しい弧を描く。

そのまま涼夜は顔を近づけてきた。
いつもの流れだ。
しかし、今日はそうはいかない。

俺は口元を手で抑えた。

「幹斗?手、外してよ」
「だめ」
「何で?」
「恋人でもないのにキスするのは普通じゃないんだって」
「誰が言ってたの?」

空気が一気に冷える。奥底から冷えるような悪寒がする。

「て、テレビで見た!恋愛ドラマでそんなこと言ってたから!」
「へー。幹斗が恋愛ドラマ見るなんて珍しいね」
「母さんが最近見てるんだよ!」

絶対にヤマちゃんに言われたと言わない方がいいと思った。

「幹斗、僕らはいいんだよ。」
「恋人じゃないのに?」
「僕たちは、運命の番だから。」

また、これだ。
何度言っても聞く耳を持たない。
俺はオメガじゃなくて、ベータだというのに。
俺は涼夜のただの親友なのに。

「俺らは運命の番じゃないよ」

つい、そんなことを言ってしまった。
いつもならスルーしてるのに。
何だか、今日は飽き飽きとしてしまっていた。

「何で、そんなこと言うの?」

全身に鳥肌が立つ。
それでも負けじと言い返す。

「俺はベータだからだよ!」
「まだ、あの診断書のこと気にしてるの?あれは偽物だって言ったじゃないか」
「国から届いた書類にもベータって書いてあったって母さんが…」

そのとき、涼夜にうなじをガブリと噛みつかれた。

「いたっ!!」
「番うのはお互い成人してからって思ってたけど、そんな考えはもうやめるね。」
「な、何するんだよ!」
「発情期が来たら、すぐに番おうね。」
「…っ!」

発情期なんて一生来ない。
そう言いたかったが、これ以上何を言っても無駄だと言うことを俺はよく分かっていた。

うなじがジクジクと痛んで、涼夜の蠱惑的な笑みが頭にこびりついた。


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