17 / 34
薔薇と私
しおりを挟む
「シーア、王子様と何かあったのか?」
行きとは打って変わって黙りこくって馬車に乗るシーアに父親は心配そうに話しかけた。
「王子様、全然王子様じゃない!シーアあんな人いや!」
「シーア!そんなことは言ってはダメだよ。もしかしたら緊張していただけかも知れないよ?」
「それでもあんなに態度がひどいなんて!」
「…ソレイル殿下は自身のオッドアイを気にしていらっしゃるのだよ。」
「おっどあい?」
「ソレイル殿下の目は片目ずつ色が違うだろ?とても珍しく美しいのだが…ソレイル殿下はそれを疎んでいらっしゃる。そのせいで家族以外の人に心を開かず、素っ気ないそうだ。」
「そんなのシーア気にしないのに!」
あの目はとても美しい。王子様がそんなことに悩んでいたとは。
「…シーア酷いこと言っちゃった。王子様置いて出て行っちゃった。」
「謝れば許してくださるよ。殿下は優しいお方だから。」
「…うん。謝る。」
「いい子だね。」
次はいつ王子様に会えるのだろう。
シーアは毎日王子様のことを考えるようになった。
次に王子様と会えたのは6歳のときだった。女神様に洗礼をしてもらうため、神殿には多くの貴族の子供が集まっていた。その中には王子様もいた。
前回会った時はひどい態度をとってしまった。今度こそ、仲良くなりたい。しかし、なかなか話しかけられずにいた。
話しかける決心がついた時には既に茶髪の男の子が王子様とお話をしていた。
「まだ、大丈夫。この後のパーティーがあるから。」
シーアは自分を奮い立たせる。
しかし、パーティーでも茶髪の男の子と遊んでおり、シーアはむしゃくしゃした。
あの男の子さえいなければ、シーアは今頃王子様と仲良くなって、あのうつくしいおにわでキスをするのに。
シーアは名も知らぬ彼に恨みを募らせていた。
アストロ公爵家長男のマーズ・アストロの誕生会。沢山の子供達が呼ばれていた。その中には王子様、そしてあの男。
彼らは顔を寄せてコソコソと話し合い、微笑み合う。その姿にシーアはドキッとした。謎の胸の高鳴りにシーアは首を傾げる。王子様たちはパーティー会場を離れて、静かな庭園へと向かった。
シーアも慌てて追いかける。
「人酔いは大丈夫?」
王子様が聞いたことのないような優しい声であの男に話しかける。
「ん、大丈夫になった。ありがとな!」
彼は王子様相手だというのに何と砕けた口調だろう。しかし、王子様はそれを非難することもなく、良かったと微笑んでいる。
彼は少し上目遣い気味で王子様を見つめた。
「あとさ…実は庭園に行きたいって言ったのはソレイルと2人きりになりたかったのもあるんだ。」
彼は少し照れたように笑った。
そんな彼を見て王子様は今までにないほどに甘く微笑んだ。
どっどっどっどっ
心臓が鳴る。
何かいけないものを見てしまったかのような気持ちになる。
彼らの間にあるのは、友情なんかではない。友情よりももっと…。
食い入るように2人を見ていると王子様と目が合った。彼にバレないよう、王子様は口元に手をやり、しっと口を動かした。
シーアは堪らず庭園を駆け出した。
それからシーアは彼について調べた。彼はアース・フレイム。侯爵家の長男だが、女神に選ばれて子供が生まれるらしい。そういえばお父さまがそんなことを言っていたかも、と考える。
彼は王子様と結ばれる可能性もある。王子様と彼の仲睦まじい姿を想像してシーアは顔を赤くした。王子様の隣は私ではない。ソレイル殿下はアースの隣にいてこそ輝くのだ。
私も立派な淑女になって愛する人と結ばれたい。私を輝かせてくれるような人と出会えるよう努力しよう。そこにはきっと何よりも大切な何かがあるはずだから。
その日からシーアは変わった。
行きとは打って変わって黙りこくって馬車に乗るシーアに父親は心配そうに話しかけた。
「王子様、全然王子様じゃない!シーアあんな人いや!」
「シーア!そんなことは言ってはダメだよ。もしかしたら緊張していただけかも知れないよ?」
「それでもあんなに態度がひどいなんて!」
「…ソレイル殿下は自身のオッドアイを気にしていらっしゃるのだよ。」
「おっどあい?」
「ソレイル殿下の目は片目ずつ色が違うだろ?とても珍しく美しいのだが…ソレイル殿下はそれを疎んでいらっしゃる。そのせいで家族以外の人に心を開かず、素っ気ないそうだ。」
「そんなのシーア気にしないのに!」
あの目はとても美しい。王子様がそんなことに悩んでいたとは。
「…シーア酷いこと言っちゃった。王子様置いて出て行っちゃった。」
「謝れば許してくださるよ。殿下は優しいお方だから。」
「…うん。謝る。」
「いい子だね。」
次はいつ王子様に会えるのだろう。
シーアは毎日王子様のことを考えるようになった。
次に王子様と会えたのは6歳のときだった。女神様に洗礼をしてもらうため、神殿には多くの貴族の子供が集まっていた。その中には王子様もいた。
前回会った時はひどい態度をとってしまった。今度こそ、仲良くなりたい。しかし、なかなか話しかけられずにいた。
話しかける決心がついた時には既に茶髪の男の子が王子様とお話をしていた。
「まだ、大丈夫。この後のパーティーがあるから。」
シーアは自分を奮い立たせる。
しかし、パーティーでも茶髪の男の子と遊んでおり、シーアはむしゃくしゃした。
あの男の子さえいなければ、シーアは今頃王子様と仲良くなって、あのうつくしいおにわでキスをするのに。
シーアは名も知らぬ彼に恨みを募らせていた。
アストロ公爵家長男のマーズ・アストロの誕生会。沢山の子供達が呼ばれていた。その中には王子様、そしてあの男。
彼らは顔を寄せてコソコソと話し合い、微笑み合う。その姿にシーアはドキッとした。謎の胸の高鳴りにシーアは首を傾げる。王子様たちはパーティー会場を離れて、静かな庭園へと向かった。
シーアも慌てて追いかける。
「人酔いは大丈夫?」
王子様が聞いたことのないような優しい声であの男に話しかける。
「ん、大丈夫になった。ありがとな!」
彼は王子様相手だというのに何と砕けた口調だろう。しかし、王子様はそれを非難することもなく、良かったと微笑んでいる。
彼は少し上目遣い気味で王子様を見つめた。
「あとさ…実は庭園に行きたいって言ったのはソレイルと2人きりになりたかったのもあるんだ。」
彼は少し照れたように笑った。
そんな彼を見て王子様は今までにないほどに甘く微笑んだ。
どっどっどっどっ
心臓が鳴る。
何かいけないものを見てしまったかのような気持ちになる。
彼らの間にあるのは、友情なんかではない。友情よりももっと…。
食い入るように2人を見ていると王子様と目が合った。彼にバレないよう、王子様は口元に手をやり、しっと口を動かした。
シーアは堪らず庭園を駆け出した。
それからシーアは彼について調べた。彼はアース・フレイム。侯爵家の長男だが、女神に選ばれて子供が生まれるらしい。そういえばお父さまがそんなことを言っていたかも、と考える。
彼は王子様と結ばれる可能性もある。王子様と彼の仲睦まじい姿を想像してシーアは顔を赤くした。王子様の隣は私ではない。ソレイル殿下はアースの隣にいてこそ輝くのだ。
私も立派な淑女になって愛する人と結ばれたい。私を輝かせてくれるような人と出会えるよう努力しよう。そこにはきっと何よりも大切な何かがあるはずだから。
その日からシーアは変わった。
375
あなたにおすすめの小説
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした
Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち
その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話
:注意:
作者は素人です
傍観者視点の話
人(?)×人
安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)
【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜
明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。
その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。
ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。
しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。
そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。
婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと?
シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。
※小説家になろうにも掲載しております。
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】
リトルグラス
BL
人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。
転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。
しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。
ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す──
***
第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
**
婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる