あなたと歩む未来を取り戻したい。

飛燕 つばさ

文字の大きさ
4 / 51
第一章 恋愛編

第4話 再会と異変

しおりを挟む
「あっ…。」

 突然現れた拓弥君の姿に、私は驚きを禁じ得なかった。

 うっかり漏らしてしまった声は、私の驚愕を物語っていた。

 その声に彼も私に気づき、目が合った瞬間、驚きを浮かべていた。

 私は、彼が私を確信した瞬間、緊張が走り、どうしていいか分からなくなってしまった。

「真由か…?」 

 彼の声は、やわらかく友好的であったが、私の方は彼との再会に動揺していた。

 頷くだけで精一杯だったのだ。

 頭が真っ白になり、口からはまとまりのない言葉しか出てこなかった。

 話したいことが山ほどあったにもかかわらず、何も話せない自分に、私は失望した。

 心臓が高鳴り、鼓動が加速する中、彼の姿を見つめていた。

「その…と、突然で驚いたよ。元気…だったか?」

「うん…。拓弥君は?」

「俺も…。」

「……。」

 会話が途切れ、空気は重苦しく漂っていた。

 普段なら、そんな場合は退散することで気まずさを解消できるはずだが、今回は足が動かない。

 私たちはただ立ち尽くし、お互いを見つめることもできなかった。

 彼が早々に去ればいいのに、なぜかその場に残っていた。

「あのね…。」 

 私は勇気を振り絞り、声を発した。彼の昔から変わらぬ真っ直ぐな瞳が私を見つめていた。

「私、ずっと苦しんでた…。拓弥君に別れを告げられてから。」 

「そっか…。それは俺も同じだよ。」

「そうだよね。拓弥君は、ずっと私に裏切られたと思っているんだもんね。」

「えっ…。それってどういう意味…。」

「いいの。もう、終わった話だし、今更どうすることもできないよ。」

「真由…?」

「あーあ。どうして、神様はこうも残酷なことをするんだろう。私ね…今付き合っている人がいるんだ。」

「そう…なんだ。どんな人?」

「うん。男らしいけど、とても優しくて、包容力がある人…かな…。」

「へぇ…理想的な相手だな。」

「そうなのかな。拓弥君は?」

「あ…うん。俺もいるよ。」

「そうだったんだ…。どんな方かな?」

「うん。いつも自然体で飾らない人だね。」

「なにそれ?分かりにくい。」

「え!?そっか?んー。一緒にいて楽なんだ。安らげるっていうか…。」

「ふ~ん。」

「何だよ?」

「何よ?」

「あはは。」
「あはは。」

 三年ぶりに二人で並んで話し、そして笑い合った。

 あの頃の二人の思い出が再び蘇る。

 彼の顔も、声も、話し方も、全てが愛おしかった頃を…。

 長い間閉じ込めていた私の想いが、ついに解け始めた気がする。

 彼に対する恋心が、私の胸中を再び揺さぶり始めた。

 私と同じように、彼もまたこの再会で感じ取っているだろうか?

 もし彼が私に対して同じような想いを抱いてくれたら、その思いだけでも十分なのである。

「真由。俺さ…。」

《ガタガタ…ガタガタ…。》
《ガタガタ…ガタガタ…。》

「きゃあ!」
「うわぁ!地震?」

 彼の口から漏れた声は、微かに震えていた。

 その時、突然足元が激しく揺れ動き始めた。

 私たちは手すりにしがみつき、必死にバランスを取りながら、まるで生き物のように踊る地面を見つめていた。

 今までに経験したことのないような強烈な揺れが私たちを襲い、全身に激しい衝撃が走った。

 周囲の地面は、一方は隆起し、一方は陥没していた。

 私の手に握りしめた手すりも、グニャリと形を変え、あまりにも凄惨な揺れのエネルギーを感じさせた。

 まるで地球が自分たちを叩きつけるかのようだった。

 やがて、私たちの足元も地盤沈下して、二人とも地面に吸い込まれるように落下したのであった…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...