あなたと歩む未来を取り戻したい。

飛燕 つばさ

文字の大きさ
7 / 51
第一章 恋愛編

第7話 真実

しおりを挟む
「俺は…さ。実は、後悔しているんだよ。」

「えっ…。」

「あの時のことだよ。友達の恵美に真由のことを聞いた時…。激しく動揺して、怒り、悲しんだ。真由がそんなことする訳がないのは分かっていたはずなのに…。」

「うん…。」

 思いがけなく口にされた拓弥君の言葉に、私は驚きのあまり言葉を失った。

 彼も、私と同じようにあの時のことをずっと引きずってきたのかもしれない。

 拓弥君は、スマホの光を頼りに暗闇の中を更に進んでいく。彼の話はまだ続いていた。

「追い討ちで恵美に見せられた写真。あれで俺は完全に冷静さを失ってしまったんだ。」

「写真?何それ?」

「あれ?真由は知らないのか?というかあの時は俺が完全に真由をシャットアウトしていて、見せたことが無かったんだったな。」

「写真は、恵美がスマホに保存していた写真を見せてきたんだ。真由が同じサークルの山本に肩を抱かれていて、それがラブホの前で写っていたんだよ。」

「えっ…うそ…。」

 私が知らない事実が三年の時を経て明らかになった。

 もちろんサークルの山本君とはそういう関係になったことはない。ただ…。

「私、山本君とそういう関係になったことなんてないわよ。ただ、サークルの飲み会があって、二次会に移動する時に酔った山本君が馴れ馴れしく私の肩に手を回してきたことはあったの。もちろん、私は嫌だってハッキリ言って彼の手を突っぱねてやったわ!それがホテルの前だったかは、覚えてないけど…。」

「えっ!そうだったの?それは知らなかったよ。俺もあの写真だけだと実際に入ったどうかかもわからないし、おかしいと思って、写真を撮影したっていう華香に聞きに行ったんだ。華香は、そのままホテルに入ったって言うから…。」

「華香?あの子に聞いたの?当時、恵美と華香は、私のことを目の敵にして嫌がらせをしてきたのよ。あの子ならそう言ってもおかしくないわ。」

「マジか~!俺は、完全にあの二人に嵌められた訳だ。真由…ごめん。本当にごめん。俺、お前にとても酷いことを言ってしまった。」

「いいのよ。もう昔のことだし、疑いが晴れたなら私も嬉しいわ。これからは、拓弥君の思い出の中の私が酷い女じゃなくなるんですもの…。」

「真由…。」

 私もずっと不思議に思っていた。

 あの拓弥君が話し合いすらせずに一方的に別れを切り出すなんて考えられなかった。

 今、ようやく疑問に思っていた不可解な出来事の点と点が繋がった。

 あの子達が結託してそこまで酷いことを企んでいたなんて全く気づいていなかった。

 あの頃、私たちは将来を誓い合い、そして私はずっと拓弥君の傍らを歩んで行くことを疑わなかった。

 しかし、あの二人によって私たちの将来が壊されてしまったことがわかり、悔しさが込み上げてくる。

 あの時、拓弥君に拒絶された時、冷静になってこうなった事情を調査して原因を突き止められれば、私たちはこのような運命を辿ることは無かったのかもしれない。

 今から後悔してもどうにもならないが、それでも悔しくて、悲しくなってしまう。

「うぅ…。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

処理中です...