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第一章 恋愛編
第19話 リハビリのあとに…
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「こんにちは!」
「ああ、真由。来てくれたんだね。」
今日は、拓弥君と約束した通り、お見舞いにの為に病院に行った。
しかし、病室に行っても彼の姿はなかった。
そこで、看護師さんに居場所を伺った所、一階のリハビリテーションルームにいることを教えて頂いたのである。
私は、広大な病院を松葉杖で移動することが心配だった。
しかし、移動途中に出会った職員さんが私のことを気にかけて下さり、何とかリハビリテーションルームに到着することができたのであった。
職員さんにお礼を言って部屋に入る。
そこには拓弥君が理学療法士さんの指導を受け、必死にトレーニングしている姿があった。
筋肉の運動機能や身体の状態の確認のため、彼は自分自身で手足を動かし、何度も立ち上がり座りを繰り返すなど、身体を最大限に使いこなしていた。
私は外野におり、挨拶以外で話す機会はなかったのだが、拓弥君の熱心な取り組みは、真剣そのもので、私はただ見ているだけでも充分満たされていた。
足首をガッチリ固定され、松葉杖姿の私は、ただ座って見ているだけなのだが、傍から見てもこの場所なら違和感はないことだろう。
拓弥君のリハビリが終わった後は、理学療法士さんに連れられて病室へと戻る。
「真由。来てくれてありがとう。今日が初めてのリハビリだったんだよ。」
「違和感なく取り組んでいたね。拓弥君があまりに真剣だったんで、話しかけられなかったよ。」
「ごめんね、気を使わせてしまって。俺は、このリハビリを乗り越えて、これ迄通りの生活を取り戻したいんだ。」
「そうだよね。えっと、ロボット開発の会社だったよね?やっぱり麻痺が治らないと…。」
「ああ。俺は、ロボットによる社会貢献を目指すプロジェクトに参加していて、実際にロボットを組み立てたり、プログラムを組んだりすることもあるんだ。麻痺が治らなければ、まともに仕事がこなせないからね。」
「そうだよね…。今の仕事は、拓弥君の昔からの夢…だったよね?ごめんね…私を助けたばかりに、拓弥君に迷惑を掛けちゃった…。」
「真由…。そのことは気にしないで欲しいな。俺は、真由を守れたことに満足してるし、それが果たせた上での苦悩なら喜んで乗り越えてみせるさ。逆に君を守れ無かった場合の方が、一生後悔し続けるだろうから…。」
「拓弥君…。」
拓弥君の思いが痛い程伝わってきた。
しかし、私のせいで彼の未来の夢を奪ってしまったとしたなら、私は彼に対してどう報いるべきなのだろうか?
「真由…。真由は俺の病気のことに責任を感じているね?でも、それは違うよ。俺は、あの時の行動は後悔していないし、俺自身の為にも適正な対応だった。だから、真由が俺に対して後ろめたい気持ちを抱く理由なんて何もないんだ。」
拓弥君は、昔と全く変わっていなかった。
真っ直ぐで正義感があって、気配り上手だ。
それぞれ別々の道を歩んでも私を気にしてくれている…。
でも、私はそれに値する様な人間なのだろうか?私は彼に何かを与えることができていたのであろうか?
「真由。俺は、必ず元の感覚を取り戻すよ。これは試練なんだ。これを乗り越えられた時、俺は更に上のステップへ登ることが出来るような気がする…。」
「わかったわ。私は、貴方の夢のが叶うように、私にできることは何でも協力するわ。」
「真由、ありがとう。」
私は、拓弥君の昼食が終わるまでは、見届けることにした。
私は、廊下まで運ばれてきた食事を受け取り、拓弥君のベッドテーブルへ持っていく。
箸とスプーンが添えられており、麻痺の拓弥君が食べるのに困らないように準備されていた。
「一人だけ食事は悪いけど頂くね。」
拓弥君はスプーンを手に取り、自らの左手へと移した。
右利きの拓弥君が左手を使うのは少々違和感を覚えてしまう。おぼつかない動きからは、不慣れさがうかがえる。
「拓弥君、やっぱり右手は自由に動かない?」
「ああ、これね。確かに右手は動かしづらいけど、これは利き手を左利きにするトレーニングだよ。右手は、回復は見込めるらしいけど、完全に元通りにするのは難しいらしいから、正常な左手の方を利き手にする方が役立つと考えたんだ。」
「そっか。拓弥君はすごいね!」
拓弥君は、ぎこちないながらも最後まで左手だけて食べきっていた。
特に箸の使用は難易度が高いだろうが、果敢に挑戦している様子を見ると、いずれは使いこなせるようになるだろう。
食事を終えた後も私は病室に留まった。
拓弥君と些細な話をしたり、会話が途切れた後も雑誌を読んだり、スマホをいじったりしながら時間を過ごした。
会話がなくても、ただ同じ空間で過ごすだけでも、過去の二人の様子が甦ってくるようだった。
「そうだ、これ、差し入れ…。オヤツのかわりにどうぞ。」
「わぁ。カツサンド!もしかして、手作り?」
「うん…。ちょっと不格好だけどね。」
「めっちゃめっちゃ嬉しいよ。じゃあ、頂きます!」
拓弥君は、今度は両手を使い、カツサンドを一気にほうばった。
表情がにこやかになり、目で訴えかけてくる。
「美味い!」
「本当に?良かった~。」
「真由の手作りだから、尚更美味いよ!」
(コイツめ…拓弥君は確信犯よ。私の喜びそうなことを…。確かに嬉しいけど。)
「ふふふ。良かったわ。じゃあ、時間だからそろそろ帰るね!」
「うん。長い時間付き合わせて悪かったね。でも楽しかったよ。」
「私も楽しかったよ。それじゃあ…ね。」
そして、互いに手を振って病室を後にした。
松葉杖をつきながら、廊下を移動してエレベーターを目指していた。
丁度つきあたりの角を曲がろうとしたその瞬間、鈍い音が響いた。
《ドンッ!バタッ…。》
「きゃあ!」
死角から現れた人物と接触した。
私は驚いて叫び声を上げた。
接触した衝撃で片方の松葉杖が手から落ち、床に転がった。
「突然危ないわね!」
相手の女性は、美しい容姿に反して不機嫌そうに私を睨みつけた。
その瞳には、怒りの炎が燃え上がっていた。
「ごめんなさい。」
恐らくは相手にも非があるだろうが、口論に発展することを避けるために、私は先に謝罪することにした。
「あ、あなたは…。」
相手の女性は、私と目が合うと非常に驚いた様子を見せた。
私を見て何を感じたかは不明だが、怪我人の私を置き去りにして、すぐに立ち去ってしまった…。
私は女性が去った後、床に残された松葉杖を見つめて軽く溜息をついた。
固定されている為に自由の効かない足に気を配りながら松葉杖を拾い上げた。
私は、再び歩き始める。
どうやらナースステーションの付近だったようで何人かの看護師と目が合った。
先程の出来事の一部始終を見られていたようである。
恥ずかしくなった私は、早々にエレベーターに乗り込み、立ち去ることにしたのであった…。
「ああ、真由。来てくれたんだね。」
今日は、拓弥君と約束した通り、お見舞いにの為に病院に行った。
しかし、病室に行っても彼の姿はなかった。
そこで、看護師さんに居場所を伺った所、一階のリハビリテーションルームにいることを教えて頂いたのである。
私は、広大な病院を松葉杖で移動することが心配だった。
しかし、移動途中に出会った職員さんが私のことを気にかけて下さり、何とかリハビリテーションルームに到着することができたのであった。
職員さんにお礼を言って部屋に入る。
そこには拓弥君が理学療法士さんの指導を受け、必死にトレーニングしている姿があった。
筋肉の運動機能や身体の状態の確認のため、彼は自分自身で手足を動かし、何度も立ち上がり座りを繰り返すなど、身体を最大限に使いこなしていた。
私は外野におり、挨拶以外で話す機会はなかったのだが、拓弥君の熱心な取り組みは、真剣そのもので、私はただ見ているだけでも充分満たされていた。
足首をガッチリ固定され、松葉杖姿の私は、ただ座って見ているだけなのだが、傍から見てもこの場所なら違和感はないことだろう。
拓弥君のリハビリが終わった後は、理学療法士さんに連れられて病室へと戻る。
「真由。来てくれてありがとう。今日が初めてのリハビリだったんだよ。」
「違和感なく取り組んでいたね。拓弥君があまりに真剣だったんで、話しかけられなかったよ。」
「ごめんね、気を使わせてしまって。俺は、このリハビリを乗り越えて、これ迄通りの生活を取り戻したいんだ。」
「そうだよね。えっと、ロボット開発の会社だったよね?やっぱり麻痺が治らないと…。」
「ああ。俺は、ロボットによる社会貢献を目指すプロジェクトに参加していて、実際にロボットを組み立てたり、プログラムを組んだりすることもあるんだ。麻痺が治らなければ、まともに仕事がこなせないからね。」
「そうだよね…。今の仕事は、拓弥君の昔からの夢…だったよね?ごめんね…私を助けたばかりに、拓弥君に迷惑を掛けちゃった…。」
「真由…。そのことは気にしないで欲しいな。俺は、真由を守れたことに満足してるし、それが果たせた上での苦悩なら喜んで乗り越えてみせるさ。逆に君を守れ無かった場合の方が、一生後悔し続けるだろうから…。」
「拓弥君…。」
拓弥君の思いが痛い程伝わってきた。
しかし、私のせいで彼の未来の夢を奪ってしまったとしたなら、私は彼に対してどう報いるべきなのだろうか?
「真由…。真由は俺の病気のことに責任を感じているね?でも、それは違うよ。俺は、あの時の行動は後悔していないし、俺自身の為にも適正な対応だった。だから、真由が俺に対して後ろめたい気持ちを抱く理由なんて何もないんだ。」
拓弥君は、昔と全く変わっていなかった。
真っ直ぐで正義感があって、気配り上手だ。
それぞれ別々の道を歩んでも私を気にしてくれている…。
でも、私はそれに値する様な人間なのだろうか?私は彼に何かを与えることができていたのであろうか?
「真由。俺は、必ず元の感覚を取り戻すよ。これは試練なんだ。これを乗り越えられた時、俺は更に上のステップへ登ることが出来るような気がする…。」
「わかったわ。私は、貴方の夢のが叶うように、私にできることは何でも協力するわ。」
「真由、ありがとう。」
私は、拓弥君の昼食が終わるまでは、見届けることにした。
私は、廊下まで運ばれてきた食事を受け取り、拓弥君のベッドテーブルへ持っていく。
箸とスプーンが添えられており、麻痺の拓弥君が食べるのに困らないように準備されていた。
「一人だけ食事は悪いけど頂くね。」
拓弥君はスプーンを手に取り、自らの左手へと移した。
右利きの拓弥君が左手を使うのは少々違和感を覚えてしまう。おぼつかない動きからは、不慣れさがうかがえる。
「拓弥君、やっぱり右手は自由に動かない?」
「ああ、これね。確かに右手は動かしづらいけど、これは利き手を左利きにするトレーニングだよ。右手は、回復は見込めるらしいけど、完全に元通りにするのは難しいらしいから、正常な左手の方を利き手にする方が役立つと考えたんだ。」
「そっか。拓弥君はすごいね!」
拓弥君は、ぎこちないながらも最後まで左手だけて食べきっていた。
特に箸の使用は難易度が高いだろうが、果敢に挑戦している様子を見ると、いずれは使いこなせるようになるだろう。
食事を終えた後も私は病室に留まった。
拓弥君と些細な話をしたり、会話が途切れた後も雑誌を読んだり、スマホをいじったりしながら時間を過ごした。
会話がなくても、ただ同じ空間で過ごすだけでも、過去の二人の様子が甦ってくるようだった。
「そうだ、これ、差し入れ…。オヤツのかわりにどうぞ。」
「わぁ。カツサンド!もしかして、手作り?」
「うん…。ちょっと不格好だけどね。」
「めっちゃめっちゃ嬉しいよ。じゃあ、頂きます!」
拓弥君は、今度は両手を使い、カツサンドを一気にほうばった。
表情がにこやかになり、目で訴えかけてくる。
「美味い!」
「本当に?良かった~。」
「真由の手作りだから、尚更美味いよ!」
(コイツめ…拓弥君は確信犯よ。私の喜びそうなことを…。確かに嬉しいけど。)
「ふふふ。良かったわ。じゃあ、時間だからそろそろ帰るね!」
「うん。長い時間付き合わせて悪かったね。でも楽しかったよ。」
「私も楽しかったよ。それじゃあ…ね。」
そして、互いに手を振って病室を後にした。
松葉杖をつきながら、廊下を移動してエレベーターを目指していた。
丁度つきあたりの角を曲がろうとしたその瞬間、鈍い音が響いた。
《ドンッ!バタッ…。》
「きゃあ!」
死角から現れた人物と接触した。
私は驚いて叫び声を上げた。
接触した衝撃で片方の松葉杖が手から落ち、床に転がった。
「突然危ないわね!」
相手の女性は、美しい容姿に反して不機嫌そうに私を睨みつけた。
その瞳には、怒りの炎が燃え上がっていた。
「ごめんなさい。」
恐らくは相手にも非があるだろうが、口論に発展することを避けるために、私は先に謝罪することにした。
「あ、あなたは…。」
相手の女性は、私と目が合うと非常に驚いた様子を見せた。
私を見て何を感じたかは不明だが、怪我人の私を置き去りにして、すぐに立ち去ってしまった…。
私は女性が去った後、床に残された松葉杖を見つめて軽く溜息をついた。
固定されている為に自由の効かない足に気を配りながら松葉杖を拾い上げた。
私は、再び歩き始める。
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