あなたと歩む未来を取り戻したい。

飛燕 つばさ

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第ニ章 遡及編

第45話 方針転換

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◇ 真由のマンション 2025年11月9日 16:35 ◇

 再び帰還した。

 私はベッドから身を起こすと、傷の様子を確認した。

 当然元通りだが、あの恐怖と痛みは、私の心に深く刻まれた傷跡として残っていた。

 私は、二回の殺人シーンが心に焼き付いているのを感じながら、震えながらでも身を起こす。

 長く憂鬱な気持ちにいつまでも浸ることはできない。
 
 状況を再考する。

 偽の浮気写真を避けるのは成功したが、その後のことは問題だ。

 偽の浮気写真が成功すると、恵美さんが必ず現れて私を殺そうとする。

 彼女の執念は、私の自宅まで押し寄せていることからも明らかである。

(偽の浮気写真の回避が成功すると、どうやっても恵美さんからの殺害に繋がるようになっている?ようにしか思えない。)

 そのような感触が漂う。

 しかし、偽の浮気写真を認めれば、これまでと同じように誤解から別れを迎えることになるだろう…。

(それでも偽の浮気写真の回避は無理だ。恵美さんから逃れるのは不可能のような気がする。別の方法を考えないと…。偽の浮気写真を撮られても、嘘だと分かって貰えればいいのでは?そうか!)

 私は、一つアイデアが思い浮かんだ。

 偽の浮気写真を回避せずに、恵美さんからの証拠写真が嘘であることを彼に事前に知らせておくのだ。

 彼も先に事情を説明されていれば、写真に関する信憑性に疑いを抱くはずである。

 私は、新たな作戦を実行することを決断したのであった。

 
◇ 21:14 居酒屋『寄ってって』出発 ◇

 その夜、いつも通りサークルの宴会が行われた。一次会かつつがなく終了し、全員で二次会のBARへ向かう所である。

 今回は、偽浮気写真を回避しないので、女性陣のフォローはお願いしていない。

 毎度のことではあるが、ホテル街の『ホテルMOON』の辺りで山本君が近づいてきた。

 肩に手を回すところまで許すと、すぐに跳ね除ける。

 これで、恵美さんに襲われることはないはずだ。念の為に恵美さんの存在を確認するために周囲を見回すが、彼女の姿を確認することは出来なかった。

 BARの入口に到着する。

 今回は、予想通り恵美さんの姿がなかった。

 やはり、偽の浮気写真と関係していたのは間違いなさそうだ。

 しかし、偽の浮気写真が失敗したら私を殺すなんて余りにも極端だと思う。

 写真の失敗と私の殺害の関連性は謎に包まれているが、私には分からないことなので、次の段階に移ろうと思う。

 拓弥君に事前に状況を伝えておくのである。

 二次会はキャンセルして彼のマンションへ向かう。


◇ 拓弥のマンション◇

「真由。どうした?サークルの宴会なんじゃ無かったの?」

「うん。一次会は終わって、二次会は参加せずに帰って来ちゃった。」

「そっか、水飲むか?」

「うん。ありがと。」

 拓弥さんに差し出された水を飲んで、気持ちを落ち着かせる。

 目の前にいる拓弥さんは、とても優しそうな表情をしており、洗脳を受けていた彼とは別人に思えた。

 私は、早速本題に入る。

「あのさ、拓弥君は佐々木恵美さんと知り合いだよね?」

「サークル一緒だからな。まあ、友達的な感じかな?恵美がどうかした?」

「うん。あまり言いたくないことだけど、今度恵美さんから写真見せられても信じないでね。私のことを信じて欲しいの。」

 私は、偽浮気写真に関する事実を拓弥さんに説明した。

「マジか!?あいつそんな卑劣なことを…。大丈夫。真由を信じているから心配するなよ。」

「拓弥君。ありがとう。」

 拓弥さんからの理解が得られたことは、大きな成果と言えるだろう。

 私たち二人が別れない選択をすれば、結果正しい未来への道が開けるからである。

 しかし、物事は私の思い通りには進まなかったのであった…。
 

◇ 11月13日 20:15 ◇
 
 拓弥さんからのLaneの通知が届いた。

『嘘つき!真由のことは信じられない。』

(えっ…?これまでと同じ内容の文章。あれだけ拓弥君に説明したのに。これはやはり…。)
 
『拓弥君?この間、説明したわよね?あなたも納得していたじゃない。』

『もういい!連絡してくるな!』 

 完全にテンプレな文章だった。

 まるで彼の意思が全く反映されてないような、そんな感じすら覚えてしまう。

 拓弥君は、この時点で誰かより洗脳を受けてしまっているのかも知れない…。

 結局、11月14日の最終日も彼の洗脳により、同じ結末を辿ることになった。

 これまで、何度も惜しい所まで行くものの、私の行動を妨害するような事例がいくつかあった。

 一番怪しいと考えるのは、やはり佐々木恵美さんだろう。

 私は、彼女を何とかしないと目的を達成するのは難しいだろうと考えるようになっていた…。
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