あなたと歩む未来を取り戻したい。

飛燕つばさ

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第ニ章遡及編

第44話回避の末に

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　私は、偽浮気写真の回避を成功させた直後、佐々木恵美さんに殺害されてしまい、ループを再開することになった。

　初めは楽しかった宴会も、何度も繰り返されるうちに退屈で味気なく感じるようになった。

　そして、かつては美味しく頂いていたアルコールも、とうとう受付けなくなり、烏龍茶しか飲まなくなってしまった。

◇　21:14 居酒屋『寄ってって』出発　◇

　サークルの一次会はいつも通り大いに盛り上がり、二次会の場所への移動が始まった。

　前回同様、私は女性陣に偽浮気写真を回避するための護衛を依頼していた。

　ホテル街に差し掛かったところで、今回も山本君や酒井君など男性陣からのアプローチがあったが、女性陣の働きにより見事に撃退することができた。

　問題は、ここからである。

　このまま全員でBARに向かえば、入口に待ち構える恵美さんに殺害されるのは、前回のループで既に体験していた。

　恵美さんに呼び出されて二人きりになったところで刺されたので、もし私が最初からBARに逃げ込めば回避できる可能性があるだろう。

　しかしその場合、恵美さんが店内で暴れ出すこともあり得る。

　私だけでなく、店内にいる関係のない人たちにも危害が及ぶかもしれない。

　では、どうすべきだろうか…。残り少ない時間をフル回転させ、私は思考に集中する。

「みんな、ごめんなさい。私、今日はここで帰るね。」

「えっ！真由、どうしたの？」

「また、後で詳しく話すね。では、楽しんできてね！」

　私はサークルの仲間たちに挨拶をして、BARへと向かう途中で引き返した。

　恵美さんの手によって関係のない誰かを傷つけるような事態を避けたかったからである。

　私は、前回とは違う道を選ぶことにした。

　加奈たちは私の異変に驚いていたが、冷静さを取り戻した時に改めて謝ろうと思う。

　私は、急いで大通りに出て、タクシーを捕まえた。

　タクシーの中から後ろを振り返ると、恵美さんが走ってこちらに向かっているのが見えた。

（ああ、何か怖い…。）

　彼女の姿を見ていると、まるでサスペンス映画の主人公になったかのような気分になる。

　彼女からは強烈な気迫を感じる。鳥肌が全身に立ち、手足が震え始める。

「お客さん、どちらに行きますか？」

「すぐに出発してください。」

　タクシーは、すぐに出発した。

　私は、ほっとして小さくため息をついた。

　車窓からは、彼女の姿は消えて、美しい夜景が広がっていた。

　私は、未来を知っている。

　東京が被災することを知っている。

　この美しい都会が、将来大きな打撃を受けることを私は知っているのだ。

　この美しい景色を見ながら、自分が被災した時のことを思い出していた…。

　タクシーは、無事に私の学生マンションに到着した。

　ここまでくれば、もう恵美さんに襲われることはないだろう…。

　部屋に入ると、不思議なほど疲れが押し寄せてベッドに倒れ込む。

　身体の疲れはループの度に回復するが、精神的なストレスは引き継がれている。

　この能力は、一見便利なものに見えるが、同じことを何度も繰り返すことの苦痛は、経験者にしか理解できないだろう。

　私は、加奈達に謝罪のLaneを送信して、その後に拓弥君に電話した。

「真由、どうしたんだ？サークルの飲み会じゃなかったのか？」

「うん。なんか途中で帰りたくなっちゃって。」

「何かあったのか？」

「いや、特にはないよ。ただ、拓弥君の声が聞きたかったんだよ。」

「そうか。それは嬉しいな。真由。好きだよ。」

「私も、拓弥君のことが好きだよ。」

　私は反射的に拓弥さんに電話をかけていた。

　今日の彼は、洗脳に掛かっている時と違い、普通に振る舞っていたことに安心し、なんだか心の重荷が軽くなった。

◇　2025年11月10日 8:42　真由のマンション　◇
　
《ピンポーン！》

　部屋のインターホンが鳴った。

　大学の講義は10：30からだったので、私はまだ寝ていた。

　眠い目でインターホンの映像を確認すると、作業着姿の帽子をかぶった女性が立っていた。

「宅配便です。」

　どうやら荷物が届いたようだ。

　エントランスの扉を解放し、部屋まで来て貰う。

「はーい。」

　部屋の扉を開けて、宅急便の方を出迎える。

　そこに立っていたのは、作業着姿の帽子をかぶった恵美さんだった…。

「きゃあ！」

　私は反射的に悲鳴を上げたが、彼女は表情一つ変えることなくナイフを振り下ろした。

《グサッ！》

　胸にナイフが突き刺さり、激しい痛みに襲われた。

　大量返り血を浴びながらも、恵美さんは表情一つ変えなかった。

　私は、意識が薄れていく中、最後に彼女の言葉を聞き取り、やがて意識を失った…。

「任務完了…。」

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