メモリーピース～最強チート彼と探し旅～

飛燕つばさ

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34話海闘

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「レオさん！」「ニーサン！」「アニキ！」

　仲間たちの切迫した叫び声が耳に響く。

　まるでそれが命綱であるかのように、彼らの声には希望と不安が交錯していた。

　頭がぼんやりとしていたが、意識が戻るにつれて状況が鮮明に蘇る──そうだ。

　私たちは“海の死神”と恐れられる「シャークキング」に挑んでいるのだ。

　私は戦いの最中、シャークキングに海中に引き込まれたのだった。
　
　　　＊　＊　＊
　
　その巨体はまるで海そのものが形を成したかのようだった。黒々とした肌に鋭い牙を備えたシャークキングは、見る者すべてに絶望を植え付ける存在感を誇っている。

　仲間たちは、そんな威圧感に屈することなく死力を尽くして戦っていた。一歩間違えたらこちらが殺られてもおかしくない緊迫した戦いだ。

（みんな、本当にありがとう…。次は俺の番だ。）

　仲間たちの信頼を背負い、私は全身の力を込めてシャークキングの頭上へと跳躍する。

　槍をしっかりと握り、その穂先を奴の運動器官を司る脳に定めた。

『ザシュッ！』

　鋭い音とともに槍がシャークキングの頭部に突き刺さった。その途端、雷鳴にも似た痛ましい咆哮が響き渡る。

「グモォォォォ！！！」

　巨体が怒涛のように暴れ、水面が巨大な波となって周囲に押し寄せる。

（クッ、浅かったか…！）

　シャークキングは動きを止めるどころか、そのまま深海へと潜り込もうとする。私は刺さった槍を持つだけで精一杯だ。

　結局、私はシャークキングに突き刺さった槍が命綱となったまま、奴と共に海中にいた。

　海中に逃れた奴の速さは尋常ではなく、水圧が私の全身に猛然と襲いかかる。

　だが、ここで槍を手放しては勝機を失うのは明らかだ。

（ここで諦めるわけにはいかない。絶対に倒すんだ──！！）

　瞬時に意識を集中させ、魔法を発動する。

「身体強化！」「水適正！」

　一瞬で肉体が強化され、水中の環境がまるで己の領域であるかのように変化した。肺が新鮮な酸素で満たされ、水圧の恐怖は消え去った。

（しかし──奴を止める手段がなければ、永遠に決着がつかない。どうする？）

　その時、突然電撃が周囲一帯を感電させたのだ。

「ビリビリ！」

　強烈な雷光が海中を染め上げ、シャークキングを捉えた。

　私とは違い、耐性がない奴の巨体は痙攣し、その動きが突然鈍った。その間隙を縫うように、私は再び槍を構えた。

（ニャメルネ君の雷魔法か…。いや、それだけじゃない。奴の位置を特定するためには、シルファ君のサポートが必要だ！本当に、素晴らしい連携だ。）

　皆の努力が、この瞬間を生み出してくれた。

（仲間たちが私を信じてくれた。ならば、ここで決めなければ男じゃない！）

「黒炎牙！」

　一度引き抜いた槍に黒炎を纏わせる。

　その揺らめく炎は、水の中でも消えることなく存在感を主張している。

　私は一息つく間もなく、神眼を開き敵の脳の正確な位置を見定めた。

「ここだ！」

　槍が放たれ、狙いは寸分違わなかった。

「ザクッ！」

　シャークキングの脳天に深々と突き刺さり、黒炎が脳の内部を焼き尽くしていく。

　やがて奴の動きが完全に止まり、その巨体が無力に漂った。

（よし！倒したぞ！）

「浮上！」

　重力魔法でシャークキングの浮力を操作し、死体がゆっくりと海面へと浮かび上がる。

　仲間たちが待ち構えていた海上へと戻ると、彼らの顔には安堵と歓喜の色が濃く浮かんでいるのが見えた。

　私はシャークキングを足場に、すぐに船上に飛び乗った。

「レオさん！」

　真っ先にシルファ君が駆け寄り、私に抱きついた。

　その勢いで私のバランスが崩れ、彼女と一緒に海へと転落してしまう。

「うわぁ、シルファ君！ととと…」

『バシャン！』

「ありゃりゃ…。やっちゃったニャン。」

　茶目っ気たっぷりに呟くニャメルネ。

　その呟きが、戦場の緊張感をほどくように周囲を和ませる。

「まったく…。アニキは大したもんだぜ！こんなデカブツ倒しちまうんだからよ。」

　バルドーが感心した表情で振り返る。

　海面には巨大なシャークキングの死体がぷかぷかと浮かんでおり、その異様な光景に仲間たちの驚きと興奮が交錯していた。

「レオさん！無事で良かったです。海に消えた時、本当に心配したんですからね！」

　海に浮かぶ私にシルファ君がしっかりと抱きつきながら、少し怒った表情でじっと睨みつけてくる。
　
　その目の奥には彼女の心配と気遣いが滲み出ていた。

「すまない。でも、君たちの支援があったからこそ奴の動きを封じ、攻撃のチャンスを掴むことができた。本当にありがとう。」

　その言葉が彼女の表情を変えた。安堵の色が広がり、笑顔が戻る。

「アニキ、このシャークキングはどうするんだ？」

「もちろん持ち帰るさ。ヒレや牙は高価な素材だし、肉は食用として利用できるんだ。ちゃんと食べられるって聞いたことがある。」

　バルドーが驚き半分で答える。

「けどよ、こんなデカブツ、どうやって運ぶんだ？」

　私はニヤリと笑みを浮かべながら呟いた。
　
「それは──『異空庫！』」

　魔法を発動すると、巨大なシャークキングの死体が淡く光りながら収容されていく。

「シュンッ！」

　この魔法は素材を劣化させることなく、新鮮なままで保つことができる。

　バルドーが驚きと呆れ顔で呟いた。

「消えた！？うわぁ、本当におかしいだろ…。」

　その感情には半ば感心の色も混じっていた。

（まあ、珍しい魔法だとは思うけど…。）

　こうして私たちは、一度ポートロイヤルへと戻ることを決意した。

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