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38話 謁見
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「貴様らが、ルメル王の象徴を手にする者たちか。いい面構えだ。このような者は人間族ではルメル以来だな。」
ローランネシア王家のメダルを手にしたことで、私たちはついに獣王との謁見を果たした。
獣王国の至宝とされるその存在に対峙するためには、このメダルという証が必要不可欠だった。
シルファの冷静な判断がなければ、我々は強引にこの地へ侵入する形となり、全てを台無しにしていただろう。彼女の機転には深い敬意を抱かずにはいられない。
その玉座に鎮座する獣王は、想像を超えた威容を持つ存在だった。
堂々たる獅子の顔、鋼のごとく屈強な肉体、それを包む金色のたてがみ。そのすべてが、見る者の心をただならぬ恐れで包み込む。そしてその威圧感は、空気をも支配していた。
私は慎重に「神眼」を用い彼の能力を測る。結果は圧倒的だった。冒険者の中でも強者と言われる者ですら、彼を打ち破ることは難しいだろう。
「私はレオ・キサラギ。そしてこちらはシルファ。獣王様、我々がこの場に参じたのは、重要なお願いを伝えるためです。」
「お願い、だと?」
獣王の声が響き渡る。それは地鳴りのように深く重い。
「我が民は飢饉に苦しんでいる。この混乱の中、他者のために時間を割く余裕などあるわけがない。」
その言葉には、ただならぬ憤りが込められているようだった。
飢饉が彼の民を窮地に追いやり、彼自身もまたその問題に翻弄されているのだろうか。状況は厳しく、我々の願いが届く見込みは薄い。玉座の間の空気はさらに緊迫する。
「獣王様!」
声を上げたのは、羊の顔を持つ男だった。静かでありながら確固たるその声音が空間を切り裂く。
「彼らはローランシア王家の象徴を携える者。その重みを考慮するべきですぞ。」
彼の姿を見た瞬間、私は息を飲む。
これはシルファの夢見に現れた人物ではないか。彼女が話したイメージと現実が重なり、まるで運命の歯車が動き始めたような感覚に陥る。
「うるさいぞ、ルッツ!」
獣王は男を睨みつける。
「ふん。まあいい、話だけは聞いてやる。しかしそれ以上は期待するな!」
ルッツと呼ばれる羊人族の男のお陰で何とか交渉の舞台に立てそうだ。
「感謝申し上げます。では、どうか私たちにメモリーピースをお授けください。」
「メモリーピースだと!?貴様、一体どうしてそれを知っているのだ!」
獣王は、その鋭い眼差しと共に声を荒げ、私たちを問い詰めた。
「実は、女神パルナスからの神託を彼女が授かり、メモリーピースを集めるよう命じられたのです。これは、ルメル王から授けられた物です。」
私は慎重にメモリーピースを手に取り、獣王に示した。
「なるほど…。確かに奴の物だ。その言葉に嘘偽りはないようだ。しかし、この国のメモリーピースを授けるには、こちらの条件を満たす必要がある。」
獣王はニヤリと微笑みを浮かべる。
「では、その条件をお伺いしましょう。」
私は嫌な予感を感じつつも尋ねた。
「一つは、この国を蝕む飢饉の原因を探り、その原因を解決することだ。」
(やはりな…。面倒な問題を我々に押し付けるつもりか。)
「もう一つは?」
「我に力を示せ!」
「はい?え…と、つまりどういうことで?」
「我と手合わせしろ!勝てたならその実力を認めてやる!」
(流石は脳筋…。)
「いいでしょう。その条件お受けします。」
私はスーツの上着を脱ぐと、シルファの肩にそっと掛けた。彼女は私の目を見つめ、微笑んでくれた。
(ああ。シルファ君の笑顔は最近癒しだな。)
獣王も玉座から降りて上衣を脱ぎ捨てた。逞しい胸筋が露わになっている。
「武器は装備しなくていいのか?」
「ええ、陛下と同じく格闘術を少々嗜んでおりますので。」
「その構え…。なるほどな。これは全力でいかねぇと負けっかな。そんじゃあいくぞ!!」
「はい!」
『獣王狩牙拳!!』
獣王は床を強く蹴った反動で前方へとダッシュを始める。目にも止まらぬ速度で私との距離を詰めると、渾身の一撃を右腕に乗せて振りかざした。
私は待ち受ける構えを取り、左足は前方へ、右足を後方に置く。
(今だ!!)
左足に体重を乗せながら、右腕に渾身の力を込めて一撃を放った。
『ボヘッ!』
獣王のパンチが私の頬に届いた瞬間に、私のボディブローは彼の肝臓を打ち抜いた。
クリーンヒットしたのは私の方だった。獣王はまともに激しい打撃を受けたために、一瞬で意識を手放した。
私は彼が倒れ込む前に抱き抱えて床に寝かしつけた。
「獣王陛下!!」
惨状を見た兵士たちが集まってきた。
「大丈夫だ!意識を失っているだけだ。怪我はない。時期に目を覚ますはずだ。」
私の言葉にルッツや兵士たちは安堵した表情を見せた。
「レオ殿申し訳ない。陛下は強者を見ると戦いたくなる性分なのです。これで少しは自重して下さればいいのですがね…。」
気を利かせたルッツが私に声を掛けた。
(なるほど、暴走気味の獣王にはこの人が必要不可欠な訳だな…。)
「ルッツ、てめぇ。客人の前でよぅ!」
目覚めた獣王は宰相のルッツに叱りつける。
「それはへ獣王陛下の方ですよ。客人の前で話す言葉遣いではありませんよ。」
ルッツの方が上手のようである。
「クソッ!我の負けだ!ルメルがメダルを託すのも納得だ!レオ!シルファ!頼む!この国を救ってくれ!」
獣王は床に座り込み、頭を下げた。
「獣王陛下…。」
私は国の最高責任者がこのように頭を下げたことに驚いた。誇り高き王がこのように頭を下げる意味…。それを全身で感じ取ったのだ。
「わかりました。飢饉の原因と解決、引き受けます。シルファ君!」
「はい!」
ここからは彼女にバトンタッチする。彼女の方がこの件についての解決案を提示できるからだ。
「私はシルファ。レオさんのパートナーです。私は女神パルナス様のお力を受けて少々不思議な夢を見ます。“夢見“と言われる能力です。」
「夢見では飢饉になることも、その原因たる存在も見えています。」
彼女の夢見の情報を聞いた獣王や家臣は驚いている。
「その原因は何だ?」
「獣王陛下は、下肢が岩で出来ており、上半身は植物と人間が混ざり合った奇怪な姿した存在をご存知ですか?」
「我は聞いたことがない。誰か知っている者は?」
獣王は家臣にたずねた。
「存じ上げます。それは、大地の精霊グリネスパ様ではありませんか?」
宰相のルッツが手を挙げた。
「宰相、その精霊は何だ?」
「大地の精霊グリネスパ様は、大地や植物などを司る大精霊です。もし、グリネスパ様に何かあるならば、今回の飢饉には大いに関係があるでしょうな。」
「シルファとか言ったな。それで、その大精霊がどうしたのだ?」
「私の夢見では何者かに攫われました。相手は姿を隠していたため、何者かまではわかりません。」
「なんと!?攫われただと!!確かに由々しき問題だ。ルッツ!彼らに力を貸せ!早く問題を解決するのだ。」
「承知しました。精霊に詳しい者をすぐに手配いたします。早速、引き合わせの準備を進めましょう。」
宰相ルッツは獣王の命令に、冷静かつ毅然とした口調で応じた。
その後、私たちは獣王の前から静かに退出した。
謁見の場で明らかになったのは、大地の大精霊グリネスパが今回の騒動と何らかの関係を持っているらしいということだ。
しかし、どのような方法で彼にたどり着けるのか、その道筋は未だ霧の中だ。
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獣王国の至宝とされるその存在に対峙するためには、このメダルという証が必要不可欠だった。
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その玉座に鎮座する獣王は、想像を超えた威容を持つ存在だった。
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私は慎重に「神眼」を用い彼の能力を測る。結果は圧倒的だった。冒険者の中でも強者と言われる者ですら、彼を打ち破ることは難しいだろう。
「私はレオ・キサラギ。そしてこちらはシルファ。獣王様、我々がこの場に参じたのは、重要なお願いを伝えるためです。」
「お願い、だと?」
獣王の声が響き渡る。それは地鳴りのように深く重い。
「我が民は飢饉に苦しんでいる。この混乱の中、他者のために時間を割く余裕などあるわけがない。」
その言葉には、ただならぬ憤りが込められているようだった。
飢饉が彼の民を窮地に追いやり、彼自身もまたその問題に翻弄されているのだろうか。状況は厳しく、我々の願いが届く見込みは薄い。玉座の間の空気はさらに緊迫する。
「獣王様!」
声を上げたのは、羊の顔を持つ男だった。静かでありながら確固たるその声音が空間を切り裂く。
「彼らはローランシア王家の象徴を携える者。その重みを考慮するべきですぞ。」
彼の姿を見た瞬間、私は息を飲む。
これはシルファの夢見に現れた人物ではないか。彼女が話したイメージと現実が重なり、まるで運命の歯車が動き始めたような感覚に陥る。
「うるさいぞ、ルッツ!」
獣王は男を睨みつける。
「ふん。まあいい、話だけは聞いてやる。しかしそれ以上は期待するな!」
ルッツと呼ばれる羊人族の男のお陰で何とか交渉の舞台に立てそうだ。
「感謝申し上げます。では、どうか私たちにメモリーピースをお授けください。」
「メモリーピースだと!?貴様、一体どうしてそれを知っているのだ!」
獣王は、その鋭い眼差しと共に声を荒げ、私たちを問い詰めた。
「実は、女神パルナスからの神託を彼女が授かり、メモリーピースを集めるよう命じられたのです。これは、ルメル王から授けられた物です。」
私は慎重にメモリーピースを手に取り、獣王に示した。
「なるほど…。確かに奴の物だ。その言葉に嘘偽りはないようだ。しかし、この国のメモリーピースを授けるには、こちらの条件を満たす必要がある。」
獣王はニヤリと微笑みを浮かべる。
「では、その条件をお伺いしましょう。」
私は嫌な予感を感じつつも尋ねた。
「一つは、この国を蝕む飢饉の原因を探り、その原因を解決することだ。」
(やはりな…。面倒な問題を我々に押し付けるつもりか。)
「もう一つは?」
「我に力を示せ!」
「はい?え…と、つまりどういうことで?」
「我と手合わせしろ!勝てたならその実力を認めてやる!」
(流石は脳筋…。)
「いいでしょう。その条件お受けします。」
私はスーツの上着を脱ぐと、シルファの肩にそっと掛けた。彼女は私の目を見つめ、微笑んでくれた。
(ああ。シルファ君の笑顔は最近癒しだな。)
獣王も玉座から降りて上衣を脱ぎ捨てた。逞しい胸筋が露わになっている。
「武器は装備しなくていいのか?」
「ええ、陛下と同じく格闘術を少々嗜んでおりますので。」
「その構え…。なるほどな。これは全力でいかねぇと負けっかな。そんじゃあいくぞ!!」
「はい!」
『獣王狩牙拳!!』
獣王は床を強く蹴った反動で前方へとダッシュを始める。目にも止まらぬ速度で私との距離を詰めると、渾身の一撃を右腕に乗せて振りかざした。
私は待ち受ける構えを取り、左足は前方へ、右足を後方に置く。
(今だ!!)
左足に体重を乗せながら、右腕に渾身の力を込めて一撃を放った。
『ボヘッ!』
獣王のパンチが私の頬に届いた瞬間に、私のボディブローは彼の肝臓を打ち抜いた。
クリーンヒットしたのは私の方だった。獣王はまともに激しい打撃を受けたために、一瞬で意識を手放した。
私は彼が倒れ込む前に抱き抱えて床に寝かしつけた。
「獣王陛下!!」
惨状を見た兵士たちが集まってきた。
「大丈夫だ!意識を失っているだけだ。怪我はない。時期に目を覚ますはずだ。」
私の言葉にルッツや兵士たちは安堵した表情を見せた。
「レオ殿申し訳ない。陛下は強者を見ると戦いたくなる性分なのです。これで少しは自重して下さればいいのですがね…。」
気を利かせたルッツが私に声を掛けた。
(なるほど、暴走気味の獣王にはこの人が必要不可欠な訳だな…。)
「ルッツ、てめぇ。客人の前でよぅ!」
目覚めた獣王は宰相のルッツに叱りつける。
「それはへ獣王陛下の方ですよ。客人の前で話す言葉遣いではありませんよ。」
ルッツの方が上手のようである。
「クソッ!我の負けだ!ルメルがメダルを託すのも納得だ!レオ!シルファ!頼む!この国を救ってくれ!」
獣王は床に座り込み、頭を下げた。
「獣王陛下…。」
私は国の最高責任者がこのように頭を下げたことに驚いた。誇り高き王がこのように頭を下げる意味…。それを全身で感じ取ったのだ。
「わかりました。飢饉の原因と解決、引き受けます。シルファ君!」
「はい!」
ここからは彼女にバトンタッチする。彼女の方がこの件についての解決案を提示できるからだ。
「私はシルファ。レオさんのパートナーです。私は女神パルナス様のお力を受けて少々不思議な夢を見ます。“夢見“と言われる能力です。」
「夢見では飢饉になることも、その原因たる存在も見えています。」
彼女の夢見の情報を聞いた獣王や家臣は驚いている。
「その原因は何だ?」
「獣王陛下は、下肢が岩で出来ており、上半身は植物と人間が混ざり合った奇怪な姿した存在をご存知ですか?」
「我は聞いたことがない。誰か知っている者は?」
獣王は家臣にたずねた。
「存じ上げます。それは、大地の精霊グリネスパ様ではありませんか?」
宰相のルッツが手を挙げた。
「宰相、その精霊は何だ?」
「大地の精霊グリネスパ様は、大地や植物などを司る大精霊です。もし、グリネスパ様に何かあるならば、今回の飢饉には大いに関係があるでしょうな。」
「シルファとか言ったな。それで、その大精霊がどうしたのだ?」
「私の夢見では何者かに攫われました。相手は姿を隠していたため、何者かまではわかりません。」
「なんと!?攫われただと!!確かに由々しき問題だ。ルッツ!彼らに力を貸せ!早く問題を解決するのだ。」
「承知しました。精霊に詳しい者をすぐに手配いたします。早速、引き合わせの準備を進めましょう。」
宰相ルッツは獣王の命令に、冷静かつ毅然とした口調で応じた。
その後、私たちは獣王の前から静かに退出した。
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