元最強魔剣士に転生しちゃった。~仇を追って旅に出る~

飛燕 つばさ

文字の大きさ
12 / 81
第一章 ジンディオールの復讐編

第12話 復讐の糸口(リーナ視点)

しおりを挟む
 ◇ ジンディオール 執務室しつむしつ ◇

 私はジン隊長の死後、もう一度彼の執務室に足をみ入れた。

 彼が殺された時の血痕けっこんはすでに取り除かれていたが、机の上には書類や荷物が散乱さんらんしていた。

(あの日、彼が最後に目にしたものだろうか…。)

 私は、ジン隊長の死にざまを思い出し、胸がめ付けられた。

 彼は、私にとってとても大切な人だった。

 魔剣士として模範もはんとなる優れた人物であり、優しくもきびしく指導しどうしてくれたでもあった。

 私は、どうしてもジン隊長が殺された理由が納得できなかった。

 なぜ彼がねらわれたのか。

 そして、強者である彼を殺せるほどの力を持つ相手は誰なのか。

 それが気になって仕方なかった。

 私は、尊敬そんけいしていた彼の名誉めいよを守るためにも、真実を探る必要があると決意してここまで来た。

(だから、今使うわ!ジン隊長の形見である『再現さいげんの瞳』!)

 私はジン隊長の机に魔道具『再現の瞳』を置き、魔力を流し込んだ。

 その瞬間、私は自分の魔力が消費しょうひされる感覚を覚えた。

 この道具は、起動にあたり結構けっこうな魔力を消費するらしい。

 悪趣味あくしゅみなデザインのひとみからはやがて光が放たれて、執務室内で起こった出来事できごとが光の壁に映し出された…。

「すごい…。これが再現の瞳…。」

 これほど高性能こうせいのうな魔道具は、今まで見たこともない。

 現代の技術では作り出せない古代文明の遺産いさんなのかも知れない。

「どれほど貴重なものなんだろう…。」

 映像は、執務室で書類仕事をしているジン隊長の姿から始まった。

 再びジン隊長の姿を見られたことが嬉しくて、涙があふれ出した。

 しばらくすると、フレイが入ってきてジン隊長に話しかける。

 最初は笑顔だったジン隊長も、次第に真剣な表情に変わっていった。

 フレイは特殊な効果を持つ宝石を、隊長に見せつけていた。

 その宝石は『ブラックラズリ』という名前で、相手の能力をうばうという恐ろしい効果を持っていた。

 フレイはその効果を利用してジン隊長から最高位のスキル『魔剣士:きわみ』を奪ったのだ。

 それによってジン隊長は大幅おおはば弱体化じゃくたいかしてしまった…。

(やはりフレイが犯人だったのね。)

 そして、その口封くちふうじのためにジン隊長を殺害した。

(この時、ジン隊長は力を奪われていた。本来なら負けるはずのないフレイに殺されたのはそういうわけね。許せないわ。)

 真相しんそうを知り、私はいきどおりと悲しみにふるえた。

(これは司令に報告し、フレイを軍法会議ぐんぽうかいぎにかけてもらう必要があるわ。ジン隊長の無念を晴らすためにも…。)

「おやおや。リーナさんじゃありませんか?こんなところで何をしているんですか?」

 映像が終わり、保存機能を使った所で部屋にフレイが入ってきた。

「あなたこそ何の用ですか?」

「失礼な言い方ですねぇ。私は隊長に任命されましたので、その準備のために参りました。これからここが私の仕事場になりますからねぇ。」

「ジン隊長から奪った地位でしょう!」

 私はフレイを睨みつけた。

「な…。リーナさんは一体何を言っているんですか?」

 フレイは私の言葉に驚いたような顔をした。

 それと同時に、彼はすぐさま部屋の中を見回すように、視線がキョロキョロと動いていた。

 きっと、何か証拠が残っていないかと探したのだろう。

「ああ…。それは『再現の瞳』ですね。確か、ジンディオールのものだったはず…。なるほど。リーナさんは、すべてを知ってしまった訳ですか。とても残念です。」

「そうよ!あなたの罪を暴くわ!あなたはもう終わりよ。ジン隊長の無念は、私が晴らすわ!」

「そうはさせませんよ!私はここまで苦労して上りめてきました。あなたに邪魔じゃまされるわけにはいきませんよ。」

 フレイは、剣を構えた。

 いつもの笑顔えがお一転いってんして冷酷れいこくな表情になった。

 私は彼から強大な魔力があふれ出てくるのを感じた。

(くっ…。フレイから溢れ出す魔力は、私の想像をはるかにこええている。力の差があり過ぎる…。今の私には勝ち目はないわね。)

 ジン隊長のスキルを奪い、大幅おおはばに強化されたフレイに対抗たいこうできるわけがない。

 しかもフレイは出入口を背にして私と対峙たいじしているから、逃げ道もない…。

「私はあきらめないから!」

《ガシャン!》

「くそっ!逃げやがったか!」

 私は一か八か勝負に出た。

 再現の瞳を手に持ち、窓ガラスを割って外へ飛び出した。

 フレイからは一時的に逃れられたが、ここは二階だった。落下するしかなかった。

「うっ…。」

 着地するときに受け身を取ったが、左膝を痛めてしまった。

「隊長命令だ!魔剣士隊、緊急集合!!リーナがジンディオールの『再現の瞳』を奪って逃走した!」「リーナがジンディオール殺害の犯人だ!確保かくほせよ!抵抗するなら殺害も許可する!」

(フレイめ…私を犯人に仕立したてたようね…。やることが卑怯ひきょうだわ。)

 私は司令官に真実を報告しに行くことにした。

 先に司令官に真相を伝えてフレイを告発こくはつすれば、私の無実も証明できるだろう。

 司令官邸は、軍基地西側の建物である。

 私は急いでそちらに向かうことにしたのだった…。

 ◇ 軍司令官邸 ◇

「おい、本当に来たぞ!」「リーナ!お前がジン隊長を殺したってな。やるじゃねぇか!」「だが、殺しは犯罪だ。同情はしてやるが、これは任務だ。確保するぞ!」

 驚いたことに、魔剣士隊員が既に待ち構えていた。

 私が司令官に会いに行くのを予想してフレイが先回りさせたのだろう。

「聞いて!ジン隊長を殺したのはフレイよ!フレイがジン隊長の能力を奪って殺したのよ!信じて!」

「そんなことは関係ない!俺たちは命令に従うだけだ。お前も隊員ならわかるだろ?文句があるなら後で隊長に言え!」

「その隊長こそが犯人なのよ…。」

 どんなに言っても無駄だった。私も隊員の一員なので分かる。

 魔剣士隊は絶対的な規律きりつり立っている。

 それをみだす者は、あくだと判断されるのだ。

 そうこうしているうちに、私は四方から包囲ほういされてしまった。

(まずいわ…。)

「それなら、『昇天蹴しょうてんげり』!」

「ぐぅっ!」

 私はすねを蹴り飛ばして相手をひるませ、あごってり上げる『昇天蹴り』の技を繰り出した。

 これで倒せるわけではないが、包囲の一角をくずすことに成功した。

 私はそのすきを見逃さずに素早く逃げ出した。

「逃がすか!『やみ陸式ろくしき:アビスブレイカー』!」

 序列三位のアッシュが攻撃を放ってきた。

 剣から闇属性の衝撃波しょうげきはを放つ『アビスブレイカー』である。

 その速度や威力いりょくは、見聞きした以上のものだった…。

「きゃあっ!」

 足の負傷もあって、回避しきれずに腰部に直撃してしまう。

 傷口から血が流れ出し、地面に飛び散った。

 このままではつかまってしまう。
 しかし、捕まったら終わりだ。
 絶対に捕まってはならない。

「『みず弐式にしききり』!」

 私は自分の得意技の一つを使った。
 魔力と水蒸気で霧を作り出す技だった。

「霧だと!?前が見えない!」「何処どこだ?」「何処に行った?」「おい、ヤバいぞ探せ!」

 目くらましには成功したようだ。

 私は物陰に隠れて追っ手をやり過ごし、時期を見計らって軍基地から脱出した。

 ◇ ◇ ◇

 私は歯を食いしばって歩を進める。

 膝は動かなくなってきており、背中には大きな傷を負っている。

(もう、帰る場所を失ったわね…。)

 私はフレイに一矢報いっしむくいろうとしたが、失敗してしまった。

 奴の方が一枚上手だったようである。

 くやしさでしめめたくちびるからは血の味がしていた。

 私は身を隠す為に南の森へと避難したのだった…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います

リヒト
ファンタジー
 不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?   「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」  ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。    何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。  生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。  果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!? 「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」  そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?    自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...