元最強魔剣士に転生しちゃった。~仇を追って旅に出る~

飛燕 つばさ

文字の大きさ
13 / 81
第一章 ジンディオールの復讐編

第13話 不死鳥の涙(リーナ視点)

しおりを挟む
◇ 南の森 ◇

 若葉があざやかにかがやき、木々の隙間すきまから陽射ひざしが差し込んでいる。

 まわりには人どころか、魔物の気配けはいすら感じられず、静寂せいじゃくが広がっていた。

 私は初めて軍部の規律きりつそむいた。

 それが正しいことで、必要なことだと信じていたからだ。

 全てはジン隊長の無念むねんらすためである。

 しかし、フレイの方が一枚も二枚も上手だった。

 ジン隊長や私の方が正しいはずなのに、結局フレイを処罰しょばつするまでにはいたらなかった。

 尊敬する彼の願いをどうにかかなえてあげたかったのに…。

 感情がたかぶり、涙がほほを伝って流れ落ちた。

 くやしかったし、悲しかった。

 ジン隊長に良い報告ができなくなってしまったことが、とても悲しかった。

 かつての仲間から受けた傷は深く、出血は想像以上に酷かった。すぐに治療しなければ命に関わるレベルだ。

(危険な状態だわ。街に治療にいかないと…。)

 そう思って立ち上がろうとした時だった。

「あっ…やばい…。」

 視界が歪んでその場に倒れ込む。

 血の気がせて立ち上がることすらままならなかった…。

 私には治療するために、街へ行く余裕よゆうすら無くなってしまったらしい。

 私は絶望ぜつぼうした。

 森にたった一人きり。私に手を差し伸べてくれる人なんているはずもない。

 死が目前に迫っていることをとうとう実感したのだ。

 ジン隊長は、どう思ってくれるだろうか?

 私を責めるだろうか?

 それとも許してくれるだろうか?

「会いたいよ!もう一度会いたいよ、ジン隊長!」

 私は、最後の力を振りしぼって『再現の瞳』の保存映像を起動した。

 ジン隊長が執務室で書類仕事に追われている姿を見つめながら、再び泣いた。

 フレイが現れると、すぐに最初からやり直しては、隊長の姿を見入っていた。

 何度も繰り返しているうちに、ついに魔力がきてしまう…。

 手は冷え切ってしまい、感覚もなくなっていた。

 私は、朦朧もうろうとする意識の中で、ジン隊長への想いが尊敬そんけいだけではなかったことにようやく気づいたのであった…。

(ジン隊長…今すぐ会いに行きます。待っていてください…。)

 死を覚悟かくごした時、服のポケットから強い光が放たれているのに気がついた。

 力なく手に取り出したのは、真っ赤な小石だった…。

(そうだ、思い出したわ…。)
 

《 今より一週間前 》

 ジン隊長が私を飲みに誘ってくれた時のことだった。

「リーナ、これは神が必要な者に、必要な時に与えると言われているものだ。父から受け継いだものだが、俺には家族も友人もいない。そして、この石は二つある。そこで、一つをお前に渡そう。」

「何故こんな大切なものを私に?」

「何でかな…。きっと、この石がリーナを選んでくれたんだと思うんだ。『不死鳥フェニックスなみだ』と呼ばれているそうだが、死によって望みが絶たれそうになった時に、異世界から助けが来ると言われている。」

「『不死鳥の涙』…。」

「ああ。父の言葉をそのまま伝えただけで、詳しいことは俺にも分からない。父はお守りだと言っていた。身につけておくといい。」

「ジン隊長、ありがとう!」

 ◇ ◇ ◇

「ああ。良かった。思い出せた…。」

 お酒にかなり弱い私は、あの夜の出来事をすっかりと忘れてしまっていた。

 しかし今、ようやくその時の具体的な内容が、霧が晴れるようにはっきりと思い出せたのだった。

「きれいな光…ジン隊長…『不死鳥の涙』ありがとう…。」

 魔剣士リーナの意識は、ここで途切れた。

『不死鳥の涙』は、彼女が息を引き取った後も輝き続けていたのであった…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います

リヒト
ファンタジー
 不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?   「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」  ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。    何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。  生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。  果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!? 「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」  そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?    自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

極寒の国を追放された俺、南の島で『日光浴』無双!常夏ハーレムを築いて最強リゾートライフ~凍える故国が泣きついてきても、もう遅い~

たまごころ
ファンタジー
「役立たずの『日光浴』スキル持ちなど、我が極寒の王国には不要だ!」 万年雪に閉ざされた北の軍事国家。 そこで兵站係をしていた少年・カイは、寒さに震えるだけの無能と罵られ、国外追放を言い渡される。 身一つで流された先は、魔物が蔓延ると噂される未開の『南の島』だった。 死を覚悟したカイだったが、強烈な日差しを浴びた瞬間、スキルが覚醒する。 彼のスキルはただ日光を浴びるだけのものではなく、太陽のエネルギーを魔力に変え、植物を操り、天候すら支配する太陽神の権能『トロピカル・ロード』だったのだ! 「え、このヤシの実、食べるとステータスが倍になる?」 「俺が作ったハンモックで寝るだけで、HPが全回復?」 カイは瞬く間に安全地帯を作り上げ、極上のリゾートライフを開始する。 助けた人魚の姫、森に住む褐色のハイエルフ、漂着した女騎士……。 集まってきた美少女たちと、南国フルーツや海鮮BBQに舌鼓を打ち、夜はハーレムで大忙し。 一方、カイを追い出した故国では、彼が密かに行っていた気温調整や物資管理が途絶え、未曾有の大寒波と飢饉に襲われていた。 勇者パーティもカイの支援なしではダンジョン攻略ができず、没落の一途をたどる。 「頼む、戻ってきてくれ!」と泣きつかれても、カイは冷たいトロピカルジュースを飲みながらこう答えるのだ。 「いまさら? 俺はこの楽園で忙しいから、帰らないよ」 これは、南の島で最強の力を手に入れた少年が、極上のスローライフを送りながら、自分を捨てた者たちを見返す、爽快成り上がりファンタジー。

処理中です...