8 / 8
魔の寮
満月
しおりを挟む
「それで、貴方の正体をここで見せてくれるんですか」
彼の銀色の瞳を見つめる。
「あぁ、見せてやる。けど、すぐに見せんのもつまらないだろ」
彼は…[キフ]という名の少年は私と違い自身の意思で姿を自由に変えることができるのだろう。
「あんたはここで待ってろ」
「何でですか?」
「どんな反応を見せるのか見てみたい……ってリアラが」
「またですか?」
[リアラ]は魔女だ、恐らく魔法の類いの何かで私たちをどこからか見ているのだろう。
キフは私にそう言うと、更に森の奥へと進み、姿を消した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
──キフが姿を消してからどのくらいたっただろうか。
辺りは静寂につつまれ、人の気配はない。
思い返せば、この静寂が私にとっては当たり前だった。
そうあの日からずっと
パキッ
背後から、まだ離れた場所から枝の折れた音がする。
振り返るが何もいない。
…いや、いる。
まだ遠いが、ゆっくりと此方に近づいて来ているのがわかる。
狼だ、狼が私に向かって確実に向かってきている。
昼に獲物を捕らえ損ね、腹を空かせた狼が日が沈み、辺りが暗くなり動きの鈍くなった動物を狙うことは少なくない。
そして、今回獲物として狙われているのが私なのだろう。こうしたことも森に身を潜めている私にとっては少なくないのだ。
私は吸血鬼だ。襲われても簡単に追い払うことは出来るが、群れで狩りを行う狼を一匹ずつ相手にするのは少々面倒だ。それに、私は命を奪うことや怪我を負わせることに抵抗がある。腹を空かせた狼は少々振り払ったぐらいで引き下がってくれるものでもないのだ。手荒な真似は狼であろうとしたくない。しかし、私は狼…いや獣の類い全てに対して使うことの出来る能力を持っている。互いが傷付かず、平和的にその場から退いてもらうことぐらいにしか使うことは出来ないが…。
狼は相変わらず、ゆっくりと此方に近づいてきている。
「すまないが、お前の晩飯にはなってやれないんだ…」
───私はずっと生きる意味を探している。兄が自らの命を私に託したあの日から。何百年も。
狼がすぐそこの木の幹と幹との間まできた。
だが、その狼は私が今まで見たことのあるものより遥かに大きい。それにこいつは[ハサラン]周辺の森に生息している狼ではない。私が見たことのある狼は主に灰色だが、目の前にいるこいつは黒いのだ。全身が闇に紛れるように真っ黒なのだ。
───幹を抜けるとそいつは勢いよくこちらに駆け出してきた。
その瞬間、私はふと考えたのだ。
何故、こいつは私の目の前に来るまで走り出さなかった?
何故、こいつは群れではなく一匹でここに来た?
何故───私に……。
そいつが飛び掛かかってくる瞬間…
私は、能力を使った。
彼の銀色の瞳を見つめる。
「あぁ、見せてやる。けど、すぐに見せんのもつまらないだろ」
彼は…[キフ]という名の少年は私と違い自身の意思で姿を自由に変えることができるのだろう。
「あんたはここで待ってろ」
「何でですか?」
「どんな反応を見せるのか見てみたい……ってリアラが」
「またですか?」
[リアラ]は魔女だ、恐らく魔法の類いの何かで私たちをどこからか見ているのだろう。
キフは私にそう言うと、更に森の奥へと進み、姿を消した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
──キフが姿を消してからどのくらいたっただろうか。
辺りは静寂につつまれ、人の気配はない。
思い返せば、この静寂が私にとっては当たり前だった。
そうあの日からずっと
パキッ
背後から、まだ離れた場所から枝の折れた音がする。
振り返るが何もいない。
…いや、いる。
まだ遠いが、ゆっくりと此方に近づいて来ているのがわかる。
狼だ、狼が私に向かって確実に向かってきている。
昼に獲物を捕らえ損ね、腹を空かせた狼が日が沈み、辺りが暗くなり動きの鈍くなった動物を狙うことは少なくない。
そして、今回獲物として狙われているのが私なのだろう。こうしたことも森に身を潜めている私にとっては少なくないのだ。
私は吸血鬼だ。襲われても簡単に追い払うことは出来るが、群れで狩りを行う狼を一匹ずつ相手にするのは少々面倒だ。それに、私は命を奪うことや怪我を負わせることに抵抗がある。腹を空かせた狼は少々振り払ったぐらいで引き下がってくれるものでもないのだ。手荒な真似は狼であろうとしたくない。しかし、私は狼…いや獣の類い全てに対して使うことの出来る能力を持っている。互いが傷付かず、平和的にその場から退いてもらうことぐらいにしか使うことは出来ないが…。
狼は相変わらず、ゆっくりと此方に近づいてきている。
「すまないが、お前の晩飯にはなってやれないんだ…」
───私はずっと生きる意味を探している。兄が自らの命を私に託したあの日から。何百年も。
狼がすぐそこの木の幹と幹との間まできた。
だが、その狼は私が今まで見たことのあるものより遥かに大きい。それにこいつは[ハサラン]周辺の森に生息している狼ではない。私が見たことのある狼は主に灰色だが、目の前にいるこいつは黒いのだ。全身が闇に紛れるように真っ黒なのだ。
───幹を抜けるとそいつは勢いよくこちらに駆け出してきた。
その瞬間、私はふと考えたのだ。
何故、こいつは私の目の前に来るまで走り出さなかった?
何故、こいつは群れではなく一匹でここに来た?
何故───私に……。
そいつが飛び掛かかってくる瞬間…
私は、能力を使った。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる