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恐怖の学園編
人間とヴァンパイア⑦
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怪奇学園での生活、二日目の朝。
冬夜の手には退学届けが握られている。
一夜真剣に考えて退学届を書いた。
正しくは、夜になってから不気味さの増した学生寮では、満足に眠ることが出来なかったがために起きていただけなのだが。
真白と離れるのは辛いが、三年間も妖怪たち相手に正体を隠し通せるとは思えなかった。何より怖い。
一日生活しただけで人間との違いを痛感させられた。
田臥裕也のパワーは常軌を逸しており、冬夜よりも身体の小さな真白でさえ、とんでもない怪力なのだ。
人間が生活していくことの出来る環境ではない。
真白とは離れたくないが仕方ない……
「よお、ザコ」
振り返ると田臥が睨みを利かせていた。
「羨ましいねぇ。昨日は真白とお楽しみだったんだってなぁ。あんないい女がお前みたいなザコの相手をするなんてありえねェ! 何者だテメェ。正体はなんだッ――なんの妖怪だ?」
訊ねられても冬夜はその質問に対する答えを持ち合わせていない。
何故ならば冬夜は妖怪ではなく人間だから。
しかし、素直に人間と答えようものなら間違いなく殺される。
そもそも冬夜は妖怪の事をまったく知らない。
とっさに頭に浮かんだのはつい最近――昨日聞いたばかりの妖怪の名前――ヴァンパイア。
「……ヴァ、ヴァンパイア……とか?」
「ふざけんな!」
耳元で風を切る音がしたかと思うと、背後にあった壁がガラガラと音を立てて崩れた。
田臥が繰り出した拳の威力を崩れた壁が物語っている。
(これ石壁だよね? もしかして成功に作られた何か別の柔らかい素材とか?)
腰を抜かして地面にへたり込んだ翔太の手元に転がってきた破片に触ってみるとしっかりとした硬さを感じることが出来た。
石壁だったことは疑いようがない。
石壁を拳一つで容易に破壊してしまう人間などいない。
目の前にいる田臥が妖怪なのだと昨日に引き続き思い知らされる。
「ヴァンパイアは西洋の大妖怪。お前みたいな奴がそのヴァンパイアだと? ふざけるんじゃねぇ!!」
冬夜のヴァンパイア発言が相当頭に来たのか、田臥は青筋を浮かべながら続けてまくしたてる。
「最強種――神格級のヴァンパイアが、お前みたいなザコな訳ねぇんだよッ――!!」
恐怖に震えるなか、冬夜はヴァンパイアが妖怪の中でも特別な存在であることは理解できた。
最強の妖怪――ヴァンパイアであるという真白は目の前にいる田臥よりも強いというのか?
にわかには信じられない。あの可憐な少女がそんなに強大な力を持っているだなんて……
殺気を放つ田臥の腕はみるみる膨れ上がり、腕の太さは元の二倍にも三倍にもなっていた。
元々大きかった拳も肥大化し、冬夜の顔よりも大きくなっている。
手がでかくなったっ……
驚きのあまり声の出せない冬夜を睨み付け、
「殺されたくなかったら消えろ。あと、天月真白にもう二度と近づくな。アレは俺がもらう」
野次馬が集まりつつあったが、田臥が睨みを利かせたとたんに霧散していった。
野次馬を追い払うと再度冬夜を睨み付け、不敵な笑みを浮かべて去って行った。
独り残された冬夜は途方に暮れた。
冬夜の手には退学届けが握られている。
一夜真剣に考えて退学届を書いた。
正しくは、夜になってから不気味さの増した学生寮では、満足に眠ることが出来なかったがために起きていただけなのだが。
真白と離れるのは辛いが、三年間も妖怪たち相手に正体を隠し通せるとは思えなかった。何より怖い。
一日生活しただけで人間との違いを痛感させられた。
田臥裕也のパワーは常軌を逸しており、冬夜よりも身体の小さな真白でさえ、とんでもない怪力なのだ。
人間が生活していくことの出来る環境ではない。
真白とは離れたくないが仕方ない……
「よお、ザコ」
振り返ると田臥が睨みを利かせていた。
「羨ましいねぇ。昨日は真白とお楽しみだったんだってなぁ。あんないい女がお前みたいなザコの相手をするなんてありえねェ! 何者だテメェ。正体はなんだッ――なんの妖怪だ?」
訊ねられても冬夜はその質問に対する答えを持ち合わせていない。
何故ならば冬夜は妖怪ではなく人間だから。
しかし、素直に人間と答えようものなら間違いなく殺される。
そもそも冬夜は妖怪の事をまったく知らない。
とっさに頭に浮かんだのはつい最近――昨日聞いたばかりの妖怪の名前――ヴァンパイア。
「……ヴァ、ヴァンパイア……とか?」
「ふざけんな!」
耳元で風を切る音がしたかと思うと、背後にあった壁がガラガラと音を立てて崩れた。
田臥が繰り出した拳の威力を崩れた壁が物語っている。
(これ石壁だよね? もしかして成功に作られた何か別の柔らかい素材とか?)
腰を抜かして地面にへたり込んだ翔太の手元に転がってきた破片に触ってみるとしっかりとした硬さを感じることが出来た。
石壁だったことは疑いようがない。
石壁を拳一つで容易に破壊してしまう人間などいない。
目の前にいる田臥が妖怪なのだと昨日に引き続き思い知らされる。
「ヴァンパイアは西洋の大妖怪。お前みたいな奴がそのヴァンパイアだと? ふざけるんじゃねぇ!!」
冬夜のヴァンパイア発言が相当頭に来たのか、田臥は青筋を浮かべながら続けてまくしたてる。
「最強種――神格級のヴァンパイアが、お前みたいなザコな訳ねぇんだよッ――!!」
恐怖に震えるなか、冬夜はヴァンパイアが妖怪の中でも特別な存在であることは理解できた。
最強の妖怪――ヴァンパイアであるという真白は目の前にいる田臥よりも強いというのか?
にわかには信じられない。あの可憐な少女がそんなに強大な力を持っているだなんて……
殺気を放つ田臥の腕はみるみる膨れ上がり、腕の太さは元の二倍にも三倍にもなっていた。
元々大きかった拳も肥大化し、冬夜の顔よりも大きくなっている。
手がでかくなったっ……
驚きのあまり声の出せない冬夜を睨み付け、
「殺されたくなかったら消えろ。あと、天月真白にもう二度と近づくな。アレは俺がもらう」
野次馬が集まりつつあったが、田臥が睨みを利かせたとたんに霧散していった。
野次馬を追い払うと再度冬夜を睨み付け、不敵な笑みを浮かべて去って行った。
独り残された冬夜は途方に暮れた。
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