最弱の僕が気づいたら最強に祭り上げられてたけど、頑張って現実にしてみせる

小暮悠斗

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理想郷編

真夏のビーチとケモノっ娘⑦

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 部屋に入ると、そこには怖い顔した男が十数人。
 そのうち四人が真白を押さえ付け、一人がサンの髪を鷲掴みしていた。

「なんだテメェ!」

 怒気混じりの声。そして殺気。

「……す、すげェ。極道の事務所に殴り込みかけてるよ、僕――息が止まりそうだ」

「テメェ……さっき一緒にいた連れじゃねぇか。また同じ目にあいてぇのか? そんなにこの女が大事か? あァ?」

 刃物をちらつかせながら近づいて来る。
 刺されたら痛いじゃすまない。
 鼓動が速くなる。
 耳元で鳴っているかのように煩い。
 銀色の刃が鈍く光る。

「おいおい、震えてるじゃねぇか。無理すんなよ」

 ――僕が守る。
 ――この命をかけても。

 渾身の力で拳を振りぬく。

 男は左頬に入ったパンチの勢いのままに、右回転。そのまま遠心力も加わり回転しながら派手に飛んだ。
 ピクピクと痙攣けいれんする男は、白目を剥いていた。

「なんだこのガキがぁぁああ!!」
「調子乗ってんじゃねぇぞコラぁあッ!」

 日本刀を持ち出す。
 死ねや、そう言って振り下ろされた刀が、冬夜の胸元を浅く切り裂いた。
 傷口から血が溢れ、白いシャツを朱く染めた。

「ビビっちまったか?」
「殺っちまえ!!」

 高笑いする男たち。
 けれども冬夜はいたって冷静だった。

 遅い。
 なんだこれ? 止まって見えるぞ。
 今まで妖怪相手の戦闘ばっかり見てたからか?
 すべての動きがスローモーションみたいに思える。
 斬り付ける間に、シャツのボタンの一個や二個、留め直せそうだ。

 こんなの……――撃てちゃうよ?

 相手の腹に一撃どころか、ニ撃、三撃と拳を撃ち込む。
 男たちは、ごぷ、と吐血し倒れていく。
 皆一様に、なにをされたのか分からないといった表情だ。

「なにやってんだ!? チャカでもなんでも使ってとっととれ――!!」

 パン。

 銃声が耳に届くよりも先に身体が動いた。
 身を屈めて回避。
 と、同時に地面を蹴る。
 加速の勢いそのまま敵に拳を突き立てる。

「やべぇよ頭!? コイツ、強さがデタラメだ」

 その声は恐怖に震えていた。

 冬夜は拳を構える。

「や、やめてくれぇ……うわぁぁぁああああああああああ――ッ」

 既に男は失神。
 残すは一人。

「何者だテメェ……化け物か……」

「僕は人間ですよ――多分」

 男は腰を抜かしたようにへたり込んだ。
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