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第一幕 転校生は朝ドラ女優!?
ACT18
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所詮はクラスの演劇だと甘く見ていた。思いの外、本格的で学ぶことも多かった。
私はテレビ女優であって、舞台女優ではない。演技と言ってもテレビや映画と舞台とでは全くの別物だ。
悲しい、悔しいといった演技を声を張って行う必要がある。押し黙るなんて演技はできない。呟く、囁くという演技もそのように聞こえるよう声を張らなくてはならない。
舞台上がりの俳優との共演の時に声がでかくてうるさいな、とイラついたものだが、あれは職業病だったのだと気付かされた。
演劇の練習は楽しい。加えて勉強にもなる。少し演技をヘタに見せるのが大変ではあるが、それも普通の女子高生として生活するためだと思えばなんてことはない。
問題は、文化祭実行委員に課せられた仕事である。
学校にゲスト(芸能人)を呼ぶのが通例になっているらしい。そのキャスティングが実行委員の仕事だ。
放課後、そのキャスティング会議が行われた。
会議は、各クラスの実行委員に、生徒会役員から選出された実行委員長を加えた大所帯となっていた。
ゲストの候補として真っ先に名前が挙がったのが――、
新田結衣。
私だった。理由は明白。実行委員の中に私と親しい人間がいるから。
「蒼井さん。確か、新田結衣さんとは親しかったわよね?」
「……ええ、まぁ」
この話の流れは瑞樹が実行委員に選ばれているからに他ならない。
しかしこの流れはまずい。瑞樹に頼まれれば文化祭のゲストの依頼は受けるが、今回は生徒として参加したい。
その事は瑞樹も判っているので、「う~ん。ちょっと厳しいかなぁ」とやんわりと断ってくれている。
「候補として綾瀬真希はいかがでしょうか?」
真希の名前が挙がる。
正直、彼女がこの手の依頼を受けるとは思わないのだが。敢えて口にはしないけど。
名前の挙がった数名に声を掛けてみるという事で会議は解散となった。
***
今日はテレビ収録でテレビ局まで来ていた。よりにもよって真希と一緒だ。
収録終わり。テレビ局のホールで先生から出された課題を解いていた。
勉強会の甲斐むなしく期末試験は赤点を取った。
校長先生の計らいで再試ではなく課題提出をすることで赤点の補填を行ってくれた。
特待生組も同様の処置で留年を免れている。
「お姉さん。お勉強?」
園児くらいの年頃の女の子が首を傾げながら私の肩を揺すった。
「うん。そうだよ。お嬢さんは見学か何かかな?」
「うん。そう。お母さんと来たの」
辺りを見回すがお母さんらしき姿は見えない。
迷子だろうか?
高野さんが迎えに来るまでまだ時間もあるし、この子を一人で放置するわけのもいかない。
「お姉さんと一緒におかあさん待っていようか?」
女の子は「うん」と力強く頷く。
スマートフォンが震える。
未設定の着信音。誰だろう?
画面には知らない番号が表示される。
「はい、もしもし」
「あっ、出た! あ、俺、赤崎だけど」
「あかさき……赤崎!? 赤崎くん!? なんで?」
「うん。ごめん急に。御田園から聞いた。俺も一応アイツと同じ特待生だから」
と、言い訳がましく弁明する。
電話越しなのに何でこんなに緊張してるの私? 電話越しだから? カグラ様と同じ声だから緊張してるの?
花楓ったら面白がって電話番号教えたな。今度、説教してやる
***
電話の内容は文化祭のゲストについてだった。全滅だったらしい。
電話を切ると女の子が私を見上げていた。
「ごめん待たせちゃったね」
頭を撫でてあげる。
「彼氏?」
「ち、違うよぉ~」
最近の子供はマセてるな。焦ったぁ~って別にそんなんじゃないし、などと自分に言い訳をしていると。
「なにその子?」
無駄に長い脚をクロスさせながら優雅に近づいてくる相手に私は思わず零す。「最悪……」と。
私はテレビ女優であって、舞台女優ではない。演技と言ってもテレビや映画と舞台とでは全くの別物だ。
悲しい、悔しいといった演技を声を張って行う必要がある。押し黙るなんて演技はできない。呟く、囁くという演技もそのように聞こえるよう声を張らなくてはならない。
舞台上がりの俳優との共演の時に声がでかくてうるさいな、とイラついたものだが、あれは職業病だったのだと気付かされた。
演劇の練習は楽しい。加えて勉強にもなる。少し演技をヘタに見せるのが大変ではあるが、それも普通の女子高生として生活するためだと思えばなんてことはない。
問題は、文化祭実行委員に課せられた仕事である。
学校にゲスト(芸能人)を呼ぶのが通例になっているらしい。そのキャスティングが実行委員の仕事だ。
放課後、そのキャスティング会議が行われた。
会議は、各クラスの実行委員に、生徒会役員から選出された実行委員長を加えた大所帯となっていた。
ゲストの候補として真っ先に名前が挙がったのが――、
新田結衣。
私だった。理由は明白。実行委員の中に私と親しい人間がいるから。
「蒼井さん。確か、新田結衣さんとは親しかったわよね?」
「……ええ、まぁ」
この話の流れは瑞樹が実行委員に選ばれているからに他ならない。
しかしこの流れはまずい。瑞樹に頼まれれば文化祭のゲストの依頼は受けるが、今回は生徒として参加したい。
その事は瑞樹も判っているので、「う~ん。ちょっと厳しいかなぁ」とやんわりと断ってくれている。
「候補として綾瀬真希はいかがでしょうか?」
真希の名前が挙がる。
正直、彼女がこの手の依頼を受けるとは思わないのだが。敢えて口にはしないけど。
名前の挙がった数名に声を掛けてみるという事で会議は解散となった。
***
今日はテレビ収録でテレビ局まで来ていた。よりにもよって真希と一緒だ。
収録終わり。テレビ局のホールで先生から出された課題を解いていた。
勉強会の甲斐むなしく期末試験は赤点を取った。
校長先生の計らいで再試ではなく課題提出をすることで赤点の補填を行ってくれた。
特待生組も同様の処置で留年を免れている。
「お姉さん。お勉強?」
園児くらいの年頃の女の子が首を傾げながら私の肩を揺すった。
「うん。そうだよ。お嬢さんは見学か何かかな?」
「うん。そう。お母さんと来たの」
辺りを見回すがお母さんらしき姿は見えない。
迷子だろうか?
高野さんが迎えに来るまでまだ時間もあるし、この子を一人で放置するわけのもいかない。
「お姉さんと一緒におかあさん待っていようか?」
女の子は「うん」と力強く頷く。
スマートフォンが震える。
未設定の着信音。誰だろう?
画面には知らない番号が表示される。
「はい、もしもし」
「あっ、出た! あ、俺、赤崎だけど」
「あかさき……赤崎!? 赤崎くん!? なんで?」
「うん。ごめん急に。御田園から聞いた。俺も一応アイツと同じ特待生だから」
と、言い訳がましく弁明する。
電話越しなのに何でこんなに緊張してるの私? 電話越しだから? カグラ様と同じ声だから緊張してるの?
花楓ったら面白がって電話番号教えたな。今度、説教してやる
***
電話の内容は文化祭のゲストについてだった。全滅だったらしい。
電話を切ると女の子が私を見上げていた。
「ごめん待たせちゃったね」
頭を撫でてあげる。
「彼氏?」
「ち、違うよぉ~」
最近の子供はマセてるな。焦ったぁ~って別にそんなんじゃないし、などと自分に言い訳をしていると。
「なにその子?」
無駄に長い脚をクロスさせながら優雅に近づいてくる相手に私は思わず零す。「最悪……」と。
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