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第三幕 新たな戦場――苦戦続きのバラエティー
ACT68
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「「お誕生日おめでとー!!」」
「ありがとうございます!!」
突然の祝福の言葉に戸惑いながらも、笑顔で応える。
運ばれてくる特大の誕生日ケーキ。目いっぱい背伸びしてギリギリ、頂上に灯った蝋燭の火を吹き消せそうだ。
少し距離があるので、思い切り肺に空気を取り込み、一気に吹いた。
一寸先も見えない闇に包まれる――暗転。
私の顔面はパイ塗れになっていた。
タオルで顔を拭くものの、真っ白に汚された私の穴と言う穴からパイが飛び出してくる。限《きり》がない。
顔面パイ塗れになることは、私の仕事ではない。
その道にはプロがいるのだ。少なくとも私は、パイをぶつけられるプロではない。
「高野さん。コレって私じゃなきゃダメなの? 芸人さんとかに任せておけばいいじゃん」
確認を取っている間にも鼻の穴からパイが……耳の穴には未だにパイが詰まったままだ。
だって、と何処か諦め顔の高野さんが言う。
「結衣は、レギュラーでしょ? やっぱり毎回ゲスト扱いって訳にはいかないでしょう?」
そんなことを聞いているのではない。
「そもそも、高野さんがこんな仕事取ってこなかったら何も問題なかったのに!」
全ては、ふた月ほど前に遡る――
王子監督の最新作の撮影を終えたキャストは、それぞれ次の仕事へと始動した。
そんな中、私こと新田結衣は束の間に休暇を堪能していた。
競技に復帰したから毎日って訳にはいかないけど、彼氏――綾人とデートも出来てる。
新しい仕事が入っちゃったら、逢うの難しくなっちゃうもんね。
だから遊べるときに目いっぱい遊ぶんだ。
毎日デートは出来ないけど、必ず連絡を取り合ってる。
練習終わりでクタクタでも、綾人は必ず連絡を入れてくれる。
「寝る」「あああああああああああああああ……」とか簡素って言うか寝落ちしてる感じの、最早連絡とは呼べない代物もあるけど。
だから私も簡素に返信する。
「おやすみなさい」とか「明日は日本語で連絡お願いします(笑)」みたいな感じ。
私って結構できた彼女じゃない? 相手に干渉しすぎず、束縛もしない。二人とも住んでいる世界は違うけど、「有名人」に違いはない。
やっぱり普通のお付き合いっていうのに憧れる。でも、普通は普通で大変なことはすでに学んだ。
同じく大変なのであれば、私は迷わず芸能界を選ぶ。だって私は女優だから。
そんな私に高野さんが新たな仕事を持ってきた。
「この仕事で貴女は成長できる」
よほどすごい仕事を取ってきたのだろう。しっかりと役作りをしなくては、女優として。
「撮影はいつから?」
3週間後からと、高野さんが言う。
「3週間? 随分と急なのね。誰かの代役?」
3週間はあまりにも準備期間が短すぎる。
でもこの業界ではよくある事。急遽役者が降板するなんて珍しくもない。
私はそんないい加減な役者は認めないけどね。
一度受けた仕事は何が有ろうと完遂する。それがプロってもんでしょ。
「これ企画書」
高野さんがカバンから取り出したそれを受け取る。
(企画書? 台本じゃなくて??)
受け取った企画書の表紙には、でかでかと『お笑い革命~至高の笑い発信基地局~(仮)』と書かれてあった。
前言撤回。
「コレ、降りちゃダメ?」
高野さんからも、松崎さんからも、降板の許可が下りることは無かった。
「ありがとうございます!!」
突然の祝福の言葉に戸惑いながらも、笑顔で応える。
運ばれてくる特大の誕生日ケーキ。目いっぱい背伸びしてギリギリ、頂上に灯った蝋燭の火を吹き消せそうだ。
少し距離があるので、思い切り肺に空気を取り込み、一気に吹いた。
一寸先も見えない闇に包まれる――暗転。
私の顔面はパイ塗れになっていた。
タオルで顔を拭くものの、真っ白に汚された私の穴と言う穴からパイが飛び出してくる。限《きり》がない。
顔面パイ塗れになることは、私の仕事ではない。
その道にはプロがいるのだ。少なくとも私は、パイをぶつけられるプロではない。
「高野さん。コレって私じゃなきゃダメなの? 芸人さんとかに任せておけばいいじゃん」
確認を取っている間にも鼻の穴からパイが……耳の穴には未だにパイが詰まったままだ。
だって、と何処か諦め顔の高野さんが言う。
「結衣は、レギュラーでしょ? やっぱり毎回ゲスト扱いって訳にはいかないでしょう?」
そんなことを聞いているのではない。
「そもそも、高野さんがこんな仕事取ってこなかったら何も問題なかったのに!」
全ては、ふた月ほど前に遡る――
王子監督の最新作の撮影を終えたキャストは、それぞれ次の仕事へと始動した。
そんな中、私こと新田結衣は束の間に休暇を堪能していた。
競技に復帰したから毎日って訳にはいかないけど、彼氏――綾人とデートも出来てる。
新しい仕事が入っちゃったら、逢うの難しくなっちゃうもんね。
だから遊べるときに目いっぱい遊ぶんだ。
毎日デートは出来ないけど、必ず連絡を取り合ってる。
練習終わりでクタクタでも、綾人は必ず連絡を入れてくれる。
「寝る」「あああああああああああああああ……」とか簡素って言うか寝落ちしてる感じの、最早連絡とは呼べない代物もあるけど。
だから私も簡素に返信する。
「おやすみなさい」とか「明日は日本語で連絡お願いします(笑)」みたいな感じ。
私って結構できた彼女じゃない? 相手に干渉しすぎず、束縛もしない。二人とも住んでいる世界は違うけど、「有名人」に違いはない。
やっぱり普通のお付き合いっていうのに憧れる。でも、普通は普通で大変なことはすでに学んだ。
同じく大変なのであれば、私は迷わず芸能界を選ぶ。だって私は女優だから。
そんな私に高野さんが新たな仕事を持ってきた。
「この仕事で貴女は成長できる」
よほどすごい仕事を取ってきたのだろう。しっかりと役作りをしなくては、女優として。
「撮影はいつから?」
3週間後からと、高野さんが言う。
「3週間? 随分と急なのね。誰かの代役?」
3週間はあまりにも準備期間が短すぎる。
でもこの業界ではよくある事。急遽役者が降板するなんて珍しくもない。
私はそんないい加減な役者は認めないけどね。
一度受けた仕事は何が有ろうと完遂する。それがプロってもんでしょ。
「これ企画書」
高野さんがカバンから取り出したそれを受け取る。
(企画書? 台本じゃなくて??)
受け取った企画書の表紙には、でかでかと『お笑い革命~至高の笑い発信基地局~(仮)』と書かれてあった。
前言撤回。
「コレ、降りちゃダメ?」
高野さんからも、松崎さんからも、降板の許可が下りることは無かった。
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