こういうのでいいんだよおじさん、伝説になる ~元パーティーメンバーが俺を殺しに来るんだけど、実はこれ求婚だったってマ?~

めでめで汰

文字の大きさ
39 / 45
おじさん、探索する

第39話 おじさん、挑む

しおりを挟む
 極論。

 

 岩。
 それは土の固まって出来たもの。
 言ってみれば砂の塊だ。
 なので、その硬さは均一ではない。
 必ずもろいところがある。
 動く石塊いしくれとくりゃ、なおさらだ。

 俺はスキル『超感覚』でその砂の流れを感じ取り──。

 ズバンッ──!

 それに沿って剣を振るうだけ。

 ズッ──ドゥゥゥゥン……!

 ゴーレムこと石塊が派手な音を立てて崩れ落ちる。

「ギャッ……!?」

 その陰から現れたのは──ゴブリン。
 小柄な魔物。
 邪悪な知恵と暴力を振るう典型系な「魔の者」。
 奴らは理由もなく人を憎み、襲い、いたぶる。

『見つけ次第、即駆逐』

 それが奴らに対する唯一の対処法だ。

(一、二、三……っと)

 瞬時に三匹のゴブリンを斬って捨てる。
 残る魔物の数は二十六。
 最奥にいる巨大な蛇女ラミアまでの道はひらけた。
 どうする? 進むか?
 それとも、ここでもう少し数を削っていくか?

「ぬおおおおおおおおおおお!」

 広間に響き渡る大声。
 思わずゴブリンたちが耳を塞ぐ。

「こっちだ化け物どもおおおお! このヤリス・エコーがお前らの相手をしてやるぞぉぉぉぉぉ!」

 巨漢の盾職タンクヤリスがまるでキマイラの咆哮かのような雄叫びをあげる。

(四、五……!)

 その隙にさらに二匹を討ってとる。

「ケント様はあのデカいのをお願いします!」

 すぐさま前線にフォーメーションを敷きながらキングくんが叫ぶ。

(後ろは任せて大丈夫そうだな……)

 十年前とは違う。
 あの時は無策、無鉄砲でどうすりゃいいかわからなかったが、今は──。
 対策も準備も万全だ!

 俺はラミアへと向かい駆け出す。
 上半身が裸の女。
 下半身が蛇。
 脅威なのは蛇側こっち
 筋肉の詰まった耐久性の高い蛇の胴。
 その直撃だけは──。

 ブゥォン──!

 避けないと。

 サッ──!

 ドゥゥゥゥン……!

 あの岩壁みたいに粉々になっちまう。
 そしてこの隙に……!

 タタタッ──!

 蛇の胴体を駆け上がっていって……っと!

 ガキィン……!

(思ったより尻尾の返りが早かったな……)

 背面で剣をクロスさせて尻尾を受け止める。

 ガッ──。

 その俺の両腕を、ラミアの両の手が掴む。

「ほぉらぁ、これであんたも終わりさぁ。苦手なんだろ? がさ? ほらほら、どうだい私の体は? こんなに魅力的な体の前じゃ、さしもの勇敢なあんたも……ぶべぇっ!?」

 俺の足蹴りがラミアのアゴをとらえる。

「女が苦手だぁ? 俺は……」

 いくら図体がデカかろうと、頭が人間と同じなら脳を揺らせば気を失う。
 俺の腕を掴んでいた手からフッと力が抜けていく。
 俺の体はそのまま宙に放り出され──。

「俺はなぁ!」

 二本の剣を振るう。


「女は、大好きだァァァァァ!」


 ヒュヒュヒュヒュヒュン──!

 ザッバァ──……。

 ナマス斬り。

「な、なぜ……!? 貴様は女が苦手だと聞いてたのに……!」

 純然たる魔の者であるラミアが魔のちりへと化していく。

「誰に吹き込まれたか知らんが、俺は女は好きだ。人並みにな。っていうか、一体誰にそんなこと吹き込まれたんだ?」

「それは、レ……」

「レ?」

 キィン──!

 金属音に振り向くと、キングくんが剣を構えて投げナイフを弾き飛ばしていた。

「レイン様ァァァァ! 話が……話が違いま……」

「黙れ! 失せろ使えない雑魚がッ!」

 シュババッ──!

 宙高く飛び上がったレインがラミアに向けて投げナイフを三本放つと、射たれたラミアは一瞬で蒸発した。

「レイン──!?」

 は? なにごと!?

「ケント様! リンネ様より言伝ことづてです! 荷物持ちのレインは認識を阻害する! 生きて帰れ、そして子を成そう! 以上です!」

「認識? それに『子』って……?」

「ギャ~ハッハッ! それがわかったとて今さらなんになる!? 多少計画は狂ったが、いずれ貴様らは必……ず? ぐっ……」

 あ~。

 なんかめちゃめちゃイキりだしたレインだったんだけど。

「ケント様、私はリンネ様より出発前に護符を持たされていたのです。そして護符を持たされたのは私の他に、もう一人」

「ぎゅふふ! これで恩赦おんしゃ確確確定かくて~い♡」

 レインの後ろから忍び寄った鼻に傷のある男、テン・ラークスがギュッと首を絞め落としていた。

「ケント様、こちらも片付きました!」

 エルくんたちが声をあげる。

 こうして俺たちは。

 レインという裏切り者をひっ捕らえて。

 今回の依頼クエストを完璧以上に達成クリアーしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...