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おじさん、探索する
第39話 おじさん、挑む
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極論。
岩は剣で斬れる。
岩。
それは土の固まって出来たもの。
言ってみれば砂の塊だ。
なので、その硬さは均一ではない。
必ず脆いところがある。
動く石塊とくりゃ、なおさらだ。
俺はスキル『超感覚』でその砂の流れを感じ取り──。
ズバンッ──!
それに沿って剣を振るうだけ。
ズッ──ドゥゥゥゥン……!
ゴーレムこと石塊が派手な音を立てて崩れ落ちる。
「ギャッ……!?」
その陰から現れたのは──ゴブリン。
小柄な魔物。
邪悪な知恵と暴力を振るう典型系な「魔の者」。
奴らは理由もなく人を憎み、襲い、いたぶる。
『見つけ次第、即駆逐』
それが奴らに対する唯一の対処法だ。
(一、二、三……っと)
瞬時に三匹のゴブリンを斬って捨てる。
残る魔物の数は二十六。
最奥にいる巨大な蛇女ラミアまでの道は拓けた。
どうする? 進むか?
それとも、ここでもう少し数を削っていくか?
「ぬおおおおおおおおおおお!」
広間に響き渡る大声。
思わずゴブリンたちが耳を塞ぐ。
「こっちだ化け物どもおおおお! このヤリス・エコーがお前らの相手をしてやるぞぉぉぉぉぉ!」
巨漢の盾職ヤリスがまるでキマイラの咆哮かのような雄叫びをあげる。
(四、五……!)
その隙にさらに二匹を討ってとる。
「ケント様はあのデカいのをお願いします!」
すぐさま前線にフォーメーションを敷きながらキングくんが叫ぶ。
(後ろは任せて大丈夫そうだな……)
十年前とは違う。
あの時は無策、無鉄砲でどうすりゃいいかわからなかったが、今は──。
対策も準備も万全だ!
俺はラミアへと向かい駆け出す。
上半身が裸の女。
下半身が蛇。
脅威なのは蛇側。
筋肉の詰まった耐久性の高い蛇の胴。
その直撃だけは──。
ブゥォン──!
避けないと。
サッ──!
ドゥゥゥゥン……!
あの岩壁みたいに粉々になっちまう。
そしてこの隙に……!
タタタッ──!
蛇の胴体を駆け上がっていって……っと!
ガキィン……!
(思ったより尻尾の返りが早かったな……)
背面で剣をクロスさせて尻尾を受け止める。
ガッ──。
その俺の両腕を、ラミアの両の手が掴む。
「ほぉらぁ、これであんたも終わりさぁ。苦手なんだろ? 女体がさ? ほらほら、どうだい私の体は? こんなに魅力的な体の前じゃ、さしもの勇敢なあんたも……ぶべぇっ!?」
俺の足蹴りがラミアのアゴをとらえる。
「女が苦手だぁ? 俺は……」
いくら図体がデカかろうと、頭が人間と同じなら脳を揺らせば気を失う。
俺の腕を掴んでいた手からフッと力が抜けていく。
俺の体はそのまま宙に放り出され──。
「俺はなぁ!」
二本の剣を振るう。
「女は、大好きだァァァァァ!」
ヒュヒュヒュヒュヒュン──!
ザッバァ──……。
ナマス斬り。
「な、なぜ……!? 貴様は女が苦手だと聞いてたのに……!」
純然たる魔の者であるラミアが魔の塵へと化していく。
「誰に吹き込まれたか知らんが、俺は女は好きだ。人並みにな。っていうか、一体誰にそんなこと吹き込まれたんだ?」
「それは、レ……」
「レ?」
キィン──!
金属音に振り向くと、キングくんが剣を構えて投げナイフを弾き飛ばしていた。
「レイン様ァァァァ! 話が……話が違いま……」
「黙れ! 失せろ使えない雑魚がッ!」
シュババッ──!
宙高く飛び上がったレインがラミアに向けて投げナイフを三本放つと、射たれたラミアは一瞬で蒸発した。
「レイン──!?」
は? なにごと!?
「ケント様! リンネ様より言伝です! 荷物持ちのレインは認識を阻害する! 生きて帰れ、そして子を成そう! 以上です!」
「認識? それに『子』って……?」
「ギャ~ハッハッ! それがわかったとて今さらなんになる!? 多少計画は狂ったが、いずれ貴様らは必……ず? ぐっ……」
あ~。
なんかめちゃめちゃイキりだしたレインだったんだけど。
「ケント様、私はリンネ様より出発前に護符を持たされていたのです。そして護符を持たされたのは私の他に、もう一人」
「ぎゅふふ! これで恩赦、確確確定♡」
レインの後ろから忍び寄った鼻に傷のある男、テン・ラークスがギュッと首を絞め落としていた。
「ケント様、こちらも片付きました!」
エルくんたちが声をあげる。
こうして俺たちは。
レインという裏切り者をひっ捕らえて。
今回の依頼を完璧以上に達成したのだった。
岩は剣で斬れる。
岩。
それは土の固まって出来たもの。
言ってみれば砂の塊だ。
なので、その硬さは均一ではない。
必ず脆いところがある。
動く石塊とくりゃ、なおさらだ。
俺はスキル『超感覚』でその砂の流れを感じ取り──。
ズバンッ──!
それに沿って剣を振るうだけ。
ズッ──ドゥゥゥゥン……!
ゴーレムこと石塊が派手な音を立てて崩れ落ちる。
「ギャッ……!?」
その陰から現れたのは──ゴブリン。
小柄な魔物。
邪悪な知恵と暴力を振るう典型系な「魔の者」。
奴らは理由もなく人を憎み、襲い、いたぶる。
『見つけ次第、即駆逐』
それが奴らに対する唯一の対処法だ。
(一、二、三……っと)
瞬時に三匹のゴブリンを斬って捨てる。
残る魔物の数は二十六。
最奥にいる巨大な蛇女ラミアまでの道は拓けた。
どうする? 進むか?
それとも、ここでもう少し数を削っていくか?
「ぬおおおおおおおおおおお!」
広間に響き渡る大声。
思わずゴブリンたちが耳を塞ぐ。
「こっちだ化け物どもおおおお! このヤリス・エコーがお前らの相手をしてやるぞぉぉぉぉぉ!」
巨漢の盾職ヤリスがまるでキマイラの咆哮かのような雄叫びをあげる。
(四、五……!)
その隙にさらに二匹を討ってとる。
「ケント様はあのデカいのをお願いします!」
すぐさま前線にフォーメーションを敷きながらキングくんが叫ぶ。
(後ろは任せて大丈夫そうだな……)
十年前とは違う。
あの時は無策、無鉄砲でどうすりゃいいかわからなかったが、今は──。
対策も準備も万全だ!
俺はラミアへと向かい駆け出す。
上半身が裸の女。
下半身が蛇。
脅威なのは蛇側。
筋肉の詰まった耐久性の高い蛇の胴。
その直撃だけは──。
ブゥォン──!
避けないと。
サッ──!
ドゥゥゥゥン……!
あの岩壁みたいに粉々になっちまう。
そしてこの隙に……!
タタタッ──!
蛇の胴体を駆け上がっていって……っと!
ガキィン……!
(思ったより尻尾の返りが早かったな……)
背面で剣をクロスさせて尻尾を受け止める。
ガッ──。
その俺の両腕を、ラミアの両の手が掴む。
「ほぉらぁ、これであんたも終わりさぁ。苦手なんだろ? 女体がさ? ほらほら、どうだい私の体は? こんなに魅力的な体の前じゃ、さしもの勇敢なあんたも……ぶべぇっ!?」
俺の足蹴りがラミアのアゴをとらえる。
「女が苦手だぁ? 俺は……」
いくら図体がデカかろうと、頭が人間と同じなら脳を揺らせば気を失う。
俺の腕を掴んでいた手からフッと力が抜けていく。
俺の体はそのまま宙に放り出され──。
「俺はなぁ!」
二本の剣を振るう。
「女は、大好きだァァァァァ!」
ヒュヒュヒュヒュヒュン──!
ザッバァ──……。
ナマス斬り。
「な、なぜ……!? 貴様は女が苦手だと聞いてたのに……!」
純然たる魔の者であるラミアが魔の塵へと化していく。
「誰に吹き込まれたか知らんが、俺は女は好きだ。人並みにな。っていうか、一体誰にそんなこと吹き込まれたんだ?」
「それは、レ……」
「レ?」
キィン──!
金属音に振り向くと、キングくんが剣を構えて投げナイフを弾き飛ばしていた。
「レイン様ァァァァ! 話が……話が違いま……」
「黙れ! 失せろ使えない雑魚がッ!」
シュババッ──!
宙高く飛び上がったレインがラミアに向けて投げナイフを三本放つと、射たれたラミアは一瞬で蒸発した。
「レイン──!?」
は? なにごと!?
「ケント様! リンネ様より言伝です! 荷物持ちのレインは認識を阻害する! 生きて帰れ、そして子を成そう! 以上です!」
「認識? それに『子』って……?」
「ギャ~ハッハッ! それがわかったとて今さらなんになる!? 多少計画は狂ったが、いずれ貴様らは必……ず? ぐっ……」
あ~。
なんかめちゃめちゃイキりだしたレインだったんだけど。
「ケント様、私はリンネ様より出発前に護符を持たされていたのです。そして護符を持たされたのは私の他に、もう一人」
「ぎゅふふ! これで恩赦、確確確定♡」
レインの後ろから忍び寄った鼻に傷のある男、テン・ラークスがギュッと首を絞め落としていた。
「ケント様、こちらも片付きました!」
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今回の依頼を完璧以上に達成したのだった。
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