隻腕の魔法使いー転生したら右腕を失くし魔法学校を追い出されたが、剛腕の魔法使いになる

さん

文字の大きさ
2 / 3

第二話・神聖魔法学校を退学になる

しおりを挟む
 アンティールは怪我が落ち着くと教授陣達に呼び出しを受けた。

 「アンティール・メイズナー君、残念だが、右手を失った君はもう魔法使いにはなれない。ここは魔法使いを目指す学校だ、怪我をした君には非常に申し訳ないが、いつまでも君を此処に置いておく事は出来ない。怪我がよくなり次第、寮からも立ち退いて欲しい」学校長が代表で僕に言い渡した。
 
 「待ってください、今まで必死に勉強してきたんです。試しに、卒業試験を受けさせて貰えませんか。一教科だけでもいいんです、それで駄目なら諦めます。お願いします」僕は必死に懇願した、簡単に諦める訳にはいかない。
 魔法使いになる為だけに必死に勉強してきたのに、それに僕の才能(タレント)は魔法しか無い。それ以外に生きる道はないのだ。
 
 教授陣は一斉に押し黙り、哀れな者を見る目で僕を見る。
 ソレント教授が冷たく口を開いた。彼は、平民の僕を嫌っている。魔法は貴族の物で、それ以外の者は勉強しても時間の無駄だと言うのが彼の持論だ。
 
 「君はどうやって、魔法を扱うのかね?利き手無しで、どうやって杖で魔法陣を描くのかね?」
 僕は黙った、利き手で杖を持ちながら魔法陣を描き、反対の手には魔法書かスクロールを持たなければ魔法を取り扱う事が出来ないのだった。
 つまり、片腕ではどうやっても魔法を取り扱う事ができないのだ。

 「それは・・・それは、今から考えます。必ず、必ず、卒業試験の日までに考えます。だから、お願いです。僕に時間をください。お願いします」最早、恥も外聞も無く僕は懇願した。
 「ふん、時間の無駄だと言う事が分からないかね。これだから、平民は嫌なのだ。君にはプライドが無いのかね。もう、お前には、ここに居る資格すらないのだよ」
 僕は怒りで身体が震えた。思わず教授に掴み掛ろうとした時、目の前に緑のケープが翻り身体が動かなくなる。
   緑のケープ・・・・ワイリー教授・・・どうして

 そこで又、意識がなくなった。






 気が付くと又、寮のベットに寝かされていた。ワイリー教授が覗いていて目が合った。
 「お前、馬鹿か?教授に掴み掛ってどうする。直ぐに着の身着のまま寮から追い出されるぞ」
 「・・・魔法使いになれないなら、一緒です」
 「はあ、せっかく猶予をくれてんだ。目一杯活用しろ。外に出てどうする?お金も持ってないのに何処に泊る?
何を食べる?故郷に帰る旅費もないんだろう。ここに居れば、食事は出るし屋根もベットも有る。ゆっくり養生するんだ、それから外へ出ても何とかできる。今、出て行けば野垂れ死には確実だ」

 「怪我を直してなんになるんです?魔法使いになれないのに・・・故郷にだって帰れません」
 そう、転生してからの人生を思い出せば出すほど、暗い気持ちになる。

 魔法使いは貴族の専売特許でも有り、例え才能(タレント)が少しでも金さえ有れば神聖魔法学校に入学でき、魔法使いに登録できる。魔法使いに登録すれば、少々魔法が下手でも生きていける。言わば、家を継げない貴族のニ男、三男の受け皿になっている。勿論、中には本物の才能がある魔法使いになる貴族もいる。
 
 だが、平民は才能(タレント)が全てだ。そして、魔法使いの才能が有ろうと、神聖魔法学校に入るには貴族の推薦と高い授業料が入り様で農民や平民にはとても無理だ。だから、たとえ才能の能力値が低くても、収入が得られる職種の方を選ぶ。
 僕はたまたま、才能が魔法に特化していて八才の時のタレント(才能)テストで魔法のみに反応し、その能力値はマックスに近い。だから、魔力は高くても他の能力は無いに等しいのだ。
 そんな僕がどうやって他の職業に就けると言うのか、しかも片腕となった今。

 「・・・まあ、怪我をしている時は暗い方向に考えがちだ。まず、怪我を直してから、ゆっくり考えろ。私も少なからず力になるから」そう言うと、僕の肩をぽんぽんと叩いた。
 行きかけた教授が戻って来て僕に囁いた。
 「そうそう、忘れるとこだった。お前は学校内で事故に巻き込まれたのだから慰謝料をふんだくってやったぞ。それと、教授陣からの見舞金と。・・全部で130ギガレルだ」
 「そんなに・・・」

 つまり、転生前の価値にすると、130万円くらいか。だが、ここの物価はもっと低いので、3倍くらいの価値になる。
     1ゴガレル(金貨)     
     100ギガレル(銀貨)   
     1000ドガレル(銅貨)
     (1ゴガレルは百万円・1ギガレルは一万円・1ドガレルは千円と同じくらいの価値)
     (他に、1エガレル(鉛貨)は百円相当の価値になる)
 
 普通に暮らせば二年、切り詰めれば三年は暮らせる大金だ。

 「まあ、少なくて済まん。これが精一杯だ。」そう言うと、今度こそ部屋から出て行った。

 慰謝料の話は本当だろう、でもきっと出たとしても雀の涙だ。そして、教授陣からの見舞金はありえない。
 つまり、ほぼワイリー教授のポケットマネーだ。
 ありがたかったが、申し訳無さが先に立つ。教授も決して金持ちでは無い。現に、いつも金が無い、研究費が足りないとぼやいている。この金はいざと言う時の為の虎の子だろう。

 僕は教授の思いを無駄にしないよう、ベットに戻った。起きていれば何かとんでもない事をしてしまいそううで。
 そうして、また、いつの間にか眠ってしまった。

 

 翌朝目覚めると、又、ワイリー教授が僕を覗き込んでいて吃驚させられる。
 「もう、心臓に悪いです。止めてくださいよ、教授」僕がそう言うと、ワイリー教授は二ヤリと笑った。
 「お前に見せたい物がある、傷はどうだ痛まないか?」
 「ええ、お陰さまで痛みは少ないです。ありがとうございます、治療費も碌に払えないのに」
 「ふん、こんな時に魔法を使わないで何時使う。相変わらず、守銭奴な奴らだ」
 
 この魔法学校に置いて、いや神聖魔法教会に置いて、魔法とはお金に換える手段であって、決して人助けの為の物ではない。だから、大怪我を負った僕は最低限度の治療は受けたがそれは魔法治療士からでは無い、医師の外科的治療のみだった。
 昨日旅から戻ったワイリー教授が現れて、それを見てとると僕に痛みの軽減と、傷の化膿止めと、回復を早める治療魔法を施してくれた。それだけでも凄いスクロールを使用した筈だ。使用したスクロールはその場で消えて無くなる。つまり、魔法を使用するには(自分に取って適応外の魔法は)スクロールや魔法書を買って発動しなければならない。つまり、魔法使い本人もお金を払って魔法を使うのである。

 では、自分の得意な魔法分野に置いては使い捨ての魔法書スクロールでは無く、魔法陣が映し取れる魔法詠嘆書を使う事ができるのである。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...