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1章 転生したら推しの婚約者でした。
3話 最推し
しおりを挟む「ナターシャ、具合は大丈夫かい?」
「はい、もう大丈夫ですわ」
私はイーギス様に近づく。直視するとやっぱり美しすぎる顔がそこにはあった。照明に照らされ紫色の髪が輝き、紺色の瞳が私を映す。ナターシャ?と声をかけられて、慌てて挨拶をした。
「私はナターシャ・ユーリティスです。あなたと婚約できて幸せですわ」
「僕はイーギス・グランドル。僕も君みたいな綺麗な子と婚約できて嬉しい」
イーギス様は私の手をとって、甲にキスをする。ああ、また倒れてしまいそう。てか一人称「僕」なんだ……。可愛すぎる。
「ナターシャ嬢、僕とパーティーに参加してくださいますか?」
まだ子供なのに跪いて、王子様みたいに私に手を差し伸べる。はい、と手を重ねようとしたがグランドル公爵に止められた。
「ナターシャは倒れたばかりなんだ。今日のパーティーはきっと中止だよ」
「そんな……。私は元気です」
ぴょんぴょんと飛び跳ねて元気をアピールするが、グランドル公爵に肩を抑えられて止められる。
「無理は良くない。そうだろう?ユーリティス侯爵」
「ああ、ナターシャは部屋で休んでなさい」
そんな……。せっかくのパーティーなのに。私は病気じゃないし、イーギス様を前にして倒れるなという方が無理がある。
「もっとイーギス様とお話ししたいですわ」
「また今度にしなさい」
お父様が私の手を引いて、階段を上がる。私は振り向いて、イーギス様を見た。
「イーギス様!私、イーギス様の侍女になりたいんです!」
「ナターシャ!」
私の希望を言うと、お父様が私を咎める。でも私は婚約者じゃなくて、イーギス様とヒロインのフローラを間近で見れる侍女がいいんです。
「ナターシャはまだ熱があるようで」
「ナターシャは面白いことを言うんだね」
お父様が私の口を塞いで2人に言うと、イーギス様がくすくすと笑う。こら、とグランドル公爵がイーギス様を窘めるも、イーギス様は階段をゆっくりと登って私をじっと見つめた。
「僕の婚約者には誰もがなりたがる。それなのに、わざわざ侍女になりたいだなんて。ナターシャは変わってるね」
「いえいえ、ナターシャはイーギス様の婚約者になって照れてるだけです」
お父様の手が私の口から離れて、私は解放される。
「だって、その方がイーギス様を見ていられるでしょ?」
「婚約者も僕のそばにいられるけどね」
婚約者はフローラの場所だもの。まぁ、フローラがイーギス様ルートを選んでくれなきゃ無理だけど。でも絶対、イーギス様の幸せのためにフローラにはイーギス様ルートに進んでもらわなきゃ。
「ナターシャ、部屋に戻るぞ」
「えぇ……」
お父様は強く私の手を引っ張って、侍女に私を任せる。私はそのまま部屋に戻され、ベッドの中に入った。ずることもないから、【麗しの花姫】のおさらいでもしておこう。ゲームはフローラが学園に入ってから始まる。王子やイーギス様と出会って、数々のイベントをこなし好感度を上げて個別ルートに進んでいく。イーギス様のルートは、女好きでチャラいイーギス様にも闇があって家庭環境から来る孤独をフローラと関わって癒されていくっていうのが素敵なのだ。イーギス様は最初、フローラのことを数いる女子の一人だと思って接するけど、フローラの優しさや天然っぷりに惹かれ本気になっていく。最初は本気じゃなかったはずのイケメンが、絆されてくのがたまらないんだよねぇ!
「あー、早くフローラ出てきてほしい!」
あ、だけどもう少し幼少期のイーギス様をじっくり堪能したいかもしれない。あぁ、まさか私が転生するなんて。続編をプレイできなかったのは残念だけど、これは今まで頑張ってきたご褒美がすぎるわ。この世界の運命はすべて私にかかっていると言っても過言じゃない。ゲームのシナリオ通りに話を進めるか、ゲームから大きく逸らすか迷っちゃう。なにはともあれ、イーギス様が幸せになることが一番なのよ。
「ってことはイーギス様のお母様の病気をまず直さないとね」
イーギス様の様子はいたって普通に見えたから、まだお母様は病気じゃないのかもしれない。イーギス様のお母様は昔流行り病で命を落としたとイーギス様が話していた。それからグランドル公爵が再婚して、その継母と連れ子との相性が悪くてイーギス様はどんどん屈折していった。ってエピソードがあったはず。
「ナターシャ様、何をぶつぶつ言っておられるのです?早くおやすみになってください」
「はいっ、もう寝ます!」
キャシーが部屋に入ってきて私に注意する。病人も楽じゃないわね。私は電気を消して、ベッドサイドの明かりだけをつける。流行り病の情報を書きまとめないと。これはゲーム本編とは関係ないけど、ファンブックの情報で確か治療薬の材料書いてあった気がする。確か、4つのハーブを混ぜて作られてたはず。明日お父様に頼んで、お医者様を呼んでもらおう。こういう時、異世界転生小説のヒロインは現実の知識を使ってシナリオを変えていくんだよね。だからきっと私にもできるはず。
「あー楽しみ。イーギス様のお母様ってどんな方なんだろう」
きっとイーギス様に似て美人なんだろうなぁ。イーギス様はきっと母親似だよね。
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