6 / 44
1章 転生したら推しの婚約者でした。
5話 黒い天使
イーギス様を見ると、イーギス様はめんどくさそうな顔で私を見る。
「これは親同士が決めた婚約なんだ。僕が君を好きになるなんて思わないでね」
さらっと冷たく言い放つイーギス様。黒イーギス様!いいっ!ってあれ?
「屈折したの成長してからじゃないんですね?」
「何それ」
もともとそういう性格なのかな?まぁ、上級社会じゃ色々あるよねぇ。
「イーギス様、もっとお話ししましょう!イーギス様の好きな女性はどんな人ですか?」
「そんなのつまらない」
つまらないって。イーギス様の口からフローラの話聞きたかったなぁ。イーギス様はふと立ち上がって、窓に近づく。
「ねずみ飼ってるの?お嬢様なのに」
「あっ、それはちょっとその……」
あなたのお母様の薬を作ってるとは言えなくて、口籠る。
「ねずみすらも可愛がる私って優しい、みたいな?」
「いえいえ、そんなんじゃないんです」
黒い笑みを浮かべて淡々と話すイーギス様。昨日のことが嘘のように冷めた声で私に言うイーギス様。私は知ってるけど、フローラがびっくりしちゃうのも無理はない。
「まぁいいや、君がしてることに興味はないし君にも興味はない。ただ体裁的にお見舞いに来てあげた方がいいと思っただけ」
「イーギス様って、昔から捻くれてたんですねぇ」
でもそれも可愛い。天使みたいな見た目から発せられる言葉の数々。ギャップ萌えだわ!
「……そりゃ、周りの大人見て育ったらそうなるよ」
「それもいいですわ!でもそのうち変わりますから、楽しみにしててください!!」
フローラに出会ってイーギス様は変わる。その変化が堪らなくいいのだ。ぽかんと私を見ていたイーギス様がくくっ、と笑う。
「やっぱ変だね、ナターシャ」
笑った顔は本当にこの世のものとは思えない天使だった。まぁ、ゲームの世界だからこの世のものではないけれど。
「じゃあ僕は帰るよ。長居しても君の体調に響きそうだし」
「元気ですからもっと居てくださっていいんですよ」
もう帰っちゃうのか。ドレスをギュッと掴むと、イーギス様は振り返って私に近づく。そして頭にぽんと手を乗せて、私の顔を覗き込んだ。
「また来るよ。一応君は僕の婚約者だからね」
「はい」
部屋でイーギス様を見送って、ベッドに転がる。まだ2日なのにイーギス様の色んな表情が見れた。私が婚約者だってこと認めてないみたいだけど、それが普通だ。イーギス様はただの一度もナターシャを愛さなかったのだから。それよりも、シルクレードキャンティが貰えるかもしれないことの方がありがたい。イーギス様の幸せに一歩近づいたような気がした。
「ナターシャ様、イーギス様からの贈り物です」
その日の夕方に、それは届いた。私は急いで広間に向かう。
「早く早く」
「何が届いたんだい?ナターシャ」
執事を急かす私に、お父様が微笑ましそうに尋ねる。
「シルクレードキャンティですわ!」
「おや、そんな貴重なものを。すぐにお手紙書かなければいけないね」
もちろんですわ!私は小包を持って、部屋に戻る。手紙を書き終えてから、調合用と栽培用に分けた。ねずみを流行り病にさせないといけないから、明日街へ出かけよう。着々と計画を立てていた時だった。
「ナターシャ、明日グランドル公爵家に行くわよ」
お母様が慌てて私の部屋に入ってくる。婚約者だから行くのは良いとして、お母様の慌てっぷりが気になる。
「どうしたのですか?」
「グランドル公爵夫人が倒れられたそうよ。だからお見舞いに行くの」
えっ、もう……?思ったより早い展開に焦る。けど、グランドル公爵夫人から病原菌をもらってこれるから、まだいいか。いや、良くないんだけど。イーギス様は大丈夫だろうか?
私は取り寄せたハーブを石臼に入れて、ごりごり混ぜる。期限内に上手くいくのだろうか……。心配だけど、私は転生ヒロインだからきっと上手くいくはず。私は明日着ていくドレスを選んで、イーギス様のお母様の無事を祈る。ゲームの中ではいつ亡くなったか、ファンブックにすら書かれてなかったんだよね。薬の材料は載ってたくせに。
「長いなぁ」
イーギス様とフローラが出会うまであと9年もある。そんなの待ってたら、イーギス様が苦しくて堪らないと思う。どうする?シナリオ変える?いや、でも今イーギス様のお母様の死を阻止しようとしてるんだ。フローラとの出会いまで変えたら何が起きるか予測出来なくなる。あれこれ考えても答えは出なくて、私は眠ることにした。
あなたにおすすめの小説
【完結】仕事を放棄した結果、私は幸せになれました。
キーノ
恋愛
わたくしは乙女ゲームの悪役令嬢みたいですわ。悪役令嬢に転生したと言った方がラノベあるある的に良いでしょうか。
ですが、ゲーム内でヒロイン達が語られる用な悪事を働いたことなどありません。王子に嫉妬? そのような無駄な事に時間をかまけている時間はわたくしにはありませんでしたのに。
だってわたくし、週4回は王太子妃教育に王妃教育、週3回で王妃様とのお茶会。お茶会や教育が終わったら王太子妃の公務、王子殿下がサボっているお陰で回ってくる公務に、王子の管轄する領の嘆願書の整頓やら収益やら税の計算やらで、わたくし、ちっとも自由時間がありませんでしたのよ。
こんなに忙しい私が、最後は冤罪にて処刑ですって? 学園にすら通えて無いのに、すべてのルートで私は処刑されてしまうと解った今、わたくしは全ての仕事を放棄して、冤罪で処刑されるその時まで、推しと穏やかに過ごしますわ。
※さくっと読める悪役令嬢モノです。
2月14~15日に全話、投稿完了。
感想、誤字、脱字など受け付けます。
沢山のエールにお気に入り登録、ありがとうございます。現在執筆中の新作の励みになります。初期作品のほうも見てもらえて感無量です!
恋愛23位にまで上げて頂き、感謝いたします。
【完結】どうか、婚約破棄と言われませんように
青波鳩子
恋愛
幼き日、自分を守ってくれた男の子に恋をしたエレイン。
父から『第二王子グレイアム殿下との婚約の打診を受けた』と聞き、初恋の相手がそのグレイアムだったエレインは、喜びと不安と二つの想いを抱えた。
グレイアム殿下には幼馴染の想い人がいる──エレインやグレイアムが通う学園でそんな噂が囁かれておりエレインの耳にも届いていたからだった。
そんな折、留学先から戻った兄から目の前で起きた『婚約破棄』の話を聞いたエレインは、未来の自分の姿ではないかと慄く。
それからエレインは『婚約破棄と言われないように』細心の注意を払って過ごす。
『グレイアム殿下は政略的に決められた婚約者である自分にやはり関心がなさそうだ』と思うエレイン。
定例の月に一度のグレイアムとのお茶会、いつも通り何事もなくやり過ごしたはずが……グレイアムのエレインへの態度に変化が起き、そこから二人の目指すものが逆転をみせていく。すれ違っていく二人の想いとグレイアムと幼馴染の関係性は……。
エレインとグレイアムのハッピーエンドです。
約42,000字の中編ですが、「中編」というカテゴリがないため短編としています。
別サイト「小説家になろう」でも公開を予定しています。
社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった
木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。
今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。
せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。
床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。
その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。
他サイトでもアップしています。
悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました
神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。
5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。
お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。
その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。
でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。
すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……?
悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。
※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
※少し設定が緩いところがあるかもしれません。
『悪役令嬢』は始めません!
月親
恋愛
侯爵令嬢アデリシアは、日本から異世界転生を果たして十八年目になる。そんな折、ここ数年ほど抱いてきた自身への『悪役令嬢疑惑』が遂に確信に変わる出来事と遭遇した。
突き付けられた婚約破棄、別の女性と愛を語る元婚約者……前世で見かけたベタ過ぎる展開。それを前にアデリシアは、「これは悪役令嬢な自分が逆ざまぁする方の物語では」と判断。
と、そこでアデリシアはハッとする。今なら自分はフリー。よって、今まで想いを秘めてきた片想いの相手に告白できると。
アデリシアが想いを寄せているレンは平民だった。それも二十も年上で子持ちの元既婚者という、これから始まると思われる『悪役令嬢物語』の男主人公にはおよそ当て嵌まらないだろう人。だからレンに告白したアデリシアに在ったのは、ただ彼に気持ちを伝えたいという思いだけだった。
ところがレンから来た返事は、「今日から一ヶ月、僕と秘密の恋人になろう」というものだった。
そこでアデリシアは何故『一ヶ月』なのかに思い至る。アデリシアが暮らすローク王国は、婚約破棄をした者は一ヶ月、新たな婚約を結べない。それを逆手に取れば、確かにその間だけであるならレンと恋人になることが可能だと。
アデリシアはレンの提案に飛び付いた。
そして、こうなってしまったからには悪役令嬢の物語は始めないようにすると誓った。だってレンは男主人公ではないのだから。
そんなわけで、自分一人で立派にざまぁしてみせると決意したアデリシアだったのだが――
※この作品は、『小説家になろう』様でも公開しています。
やさしい・悪役令嬢
きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」
と、親切に忠告してあげただけだった。
それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。
友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。
あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。
美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。