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1章 転生したら推しの婚約者でした。
15話 未来
首を傾げるイーギス様の前で私は俯く。どこぞの転生もののヒロインみたいに、私は役目を忘れそうになっていた。イーギス様といる日々が幸せすぎて、イーギス様とフローラが結ばれても私も平穏な日々を送れると思っていた。
「ナターシャ、幸せになれないってどういうこと?」
「……なんでもありませんわ」
イーギス様には言えない。この先の未来も、私の正体も。私は立ち上がって、帰ろうとする。イーギス様が私の手を掴んだ。
「ナターシャ、僕がナターシャを世界一幸せにするよ」
「イーギス様……」
イーギス様が私の手を引っ張って、振り返るとイーギス様と目が合う。
「イーギス様は他の方と幸せになるんです」
「何で?何でそんなこと言うの?」
吐き出した言葉に胸がずっしりと重く感じて締め付けられる。イーギス様が眉を顰めた。
「そばにいるって、あれ嘘なの?ナターシャまた嘘ついたの?」
「嘘ついてません。だけど……」
イーギス様が私から離れる日が来る。今は何を言っても伝わらないだろう。私は唇を噛んで俯く。何で今思い出してしまったんだろう。イーギス様が私の手の甲にキスをする。
「ナターシャ、僕から離れないようにしてあげる」
にやりと笑って、イーギス様が上目遣いで私を見る。子供らしい宣言に可愛いって思ってた私は知らなかった。この時すでに私の思う方向から道が逸れていたことを……。
「ナターシャ、他の遊びしよ」
「はい」
イーギス様がトランプをシャッフルして、配り始める。今日初めて触って、見ただけでシャッフル簡単に出来るようになるなんてやっぱりイーギス様は天才だなと思った。でも部屋の遊びもレパートリー少なくて飽きてきたし、職人さんに頼んでバドミントンも作ってもらおうかなと思った。イーギス様と色んなことして遊びたい。もちろんフローラとの恋を応援するけど、本編が始まるまではまだイーギス様と遊んでていいよね?
「イーギス様」
配り終わって、カードを整えるイーギス様の名前を呼ぶ。イーギス様は顔を上げてきょとんとした。
「私は今、十分幸せです」
この世界に来て、イーギス様に出会えて今までにないくらいの幸せを感じてる。私の言葉に、イーギス様が笑った。
「よかった」
「はい」
このイーギス様の笑顔を守りたい。ゲームではほとんどイーギス様は笑わなかったから。私もカードを整えて、イーギス様に大貧民の説明をする。もちろん、言い方は大富豪に変えたけど。私の地域では大貧民呼びだったんだよね。
「これ、2人でやって楽しいの?」
「お友達、欲しいですわね」
使用人の方たちはそれぞれの仕事で忙しいだろうし、2人でやる遊びにも限界がある。イーギス様に言われて、私は苦笑した。
「じゃあ、今度の誕生パーティーで作ろう」
「誕生パーティー?」
イーギス様の誕生日もナターシャの誕生日もまだ先だった。首を傾げると、イーギス様が目をぱちくりさせる。
「忘れたの?第三王子の誕生日だよ」
「そうでしたわ!」
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