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1章 転生したら推しの婚約者でした。
21話 プレゼント
小説で悪役令嬢に転生した主人公が悪女になるのを失敗してるのをよく見るが、私も失敗したかもしれない。考えても、どの答え方がまずかったのか全く見当もつかないがそうじゃなきゃこの大量のプレゼントに説明がつかない。
「多すぎるでしょ!」
応接間に溢れかえったプレゼントの山は、全部イーギス様からのもので。最初は婚約者の役割が必要だからつなぎとめようとしてるのかと思ったけど、にしても多すぎる。
「お姉様ばっかりずるいですわ!お父様、早く私をイーギス様の婚約者にしてください!」
「わがまま言うんじゃないよ、エイシア。イーギス様と婚約したのはナターシャなんだ」
後ろでエイシアの文句が聞こえてくる。これじゃあエイシアがさらにイーギス様を欲しくなっても仕方がない。
「ねぇ、これ全部返品してくださる?」
私は使用人に告げて部屋を出た。ボトッと何かが落ちる音がして、右を向く。イーギス様……。
「ナターシャ、気に入らなかった?何がダメだった?僕のこと嫌いなの?」
「イーギス様、落ち着いてください」
青ざめた顔で私に聞くイーギス様に申し訳なくなる。
「イーギス様のこと嫌いになったりしませんわ。何度も伝えてきたでしょう?私はイーギス様の幸せを願ってるって」
「でも、ナターシャ他の男が気になってるみたいだし」
しゅんとするイーギス様に罪悪感を覚える。お母様が亡くなったばかりだし、身近な私にまで距離を取られるのは精神的ストレスがあるんだわ。
「わかりました。これは受け取ります。でももう贈り物は控えてください」
「でも……」
私はイーギス様に近づいて両手でイーギス様の肩を掴む。
「私はイーギス様のことが好きですわ。だから嫌いになんてなりません」
「本当?」
おやおやとお父様が言い、あらあらとお母様が笑う。エイシアだけが怒った声を上げるが、イーギス様をなだめる方が大事だ。
「本当ですわ。だから安心してください」
今は母親が恋しい時期だし、私が突き放してはイーギス様の幸せになれない。フローラと出会ったらフローラを好きになるだろうし、今くらいはいいよね?
「よかった。ナターシャ、早速プレゼント開けてよ」
「ええ、数が多いから順番に開けますわ」
イーギス様が私の手を掴んで、応接間に入る。ドレスや宝石、おもちゃまで多種多様な贈り物に嬉しさと申し訳なさが葛藤する。それでも楽しそうに、「似合う!」と笑ってくれるイーギス様の笑顔にそんな悩みはどうでもいいなと思った。
「イーギス様、今度お返しさせてください」
「いいよ、お返しなんて」
ソファに座り直してイーギス様に言う。遠慮するイーギス様に何がいいか考えてると、「あ」とイーギス様が呟く。
「何ですか?」
「ナターシャからキスしてよ」
とんとんとイーギス様が自分の頬を指さして、その意味を理解した私の顔が熱くなる。
「む、無理ですわ!」
「ナターシャ、僕のこと好きって言ってたのに……」
それとこれとは話が違いますわ!そう思うのに、しょぼんとするイーギス様を前にして断るわけにはいかない。私は目を瞑って、決意した。えいっ。
ーちゅっ
目を開けるとイーギス様が唇を抑える。……あれ?何で正面向いて……。
「まさか本当にしてくれるとは……」
「からかったんですか?イーギス様!」
もう!とスカートを叩くと、イーギス様が笑う。
「からかってないよ。本気だもん」
私の手を掴んで、イーギス様がちゅっと私の頬にキスをする。
「これでおあいこ。でしょ?」
イーギス様の言葉に何も反論できなくて、口をパクパクとさせた後私が羞恥で倒れたのは言うまでもない。
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