24 / 44
2章 夢は侍女になることです
23話 セリとフローラ
バームズ家に到着し、バームズ家の執事に挨拶する。
「ナターシャ様、坊ちゃんはこちらに」
「セリ様~」
裏庭の方に案内され、私はセリの名前を呼ぶ。馬の手入れをしていた少年が振り向いた。
「おう、ナターシャ。久しぶりだな」
「久しぶり。会えて嬉しいわ」
セリに警戒されないように、慎重に手紙のやりとりをしていたから会うのが遅くなってしまった。そんなセリは最近手紙で幼馴染の話をしてくれるようになり、幼馴染含めて会いたいと言ったのだ。それなら婚約者がいる私でもセリとも会いやすいと思った。まぁ、目当ては最初からフローラなんだけど。ひょこっとセリの後ろから、ピンク髪の美少女が現れる。
「可愛い!」
さすが乙女ゲームのヒロイン。大きな声を出した私にびくっと肩を震わせる。
「おいおい、俺はおまけかよ」
「そんなことないわ。セリにもセリの幼馴染にも会いたかったわ」
呆れるセリにウインクして、私はフローラに近づく。
「初めまして。ナターシャ・ユーリティスです。仲良くしていただけると嬉しいわ」
「ナターシャ様……、私はフローラ・キュロスですわ」
馬の後ろから少し顔を見せ、フローラが挨拶をしてくれる。
「こいつ、良いとこのお嬢さん見るの初めてだから緊張してんだよ。でも手紙でも聞いたけどいいのか?侯爵令嬢が侍女の娘と友達になって」
「身分は関係ないわよ。セリだってそうでしょ?」
そう、フローラはお嬢様ではなくバームズ家に使える侍女の娘でセリの家に住み込みで働いている。そんな彼女が、バームズ侯爵のご厚意で学園に入学したのがゲームの始まりだった。
「セリから聞きました。ナターシャ様が私に会いたがってると……。本当ですか?」
「ええ、だって女の子のお友達いないんだもの。令嬢同士だと色々複雑ですし」
イーギス様の婚約者の座を狙ってる女子はたくさんいる。常に比較される空気が耐えられなくて、そんなことより私はフローラを愛でたい。
「だから仲良くしてください」
「私で良ければ、ぜひ」
手を差し出すとフローラが目を輝かせて、私の手を握る。小さくて柔らかな手に、私はきゅんとした。セリが案内してくれて、テラスに向かう。3つ置かれた椅子の一つにセリが座って、私は正面に座った。
「セリ様からよくフローラ様のことを聞きますの。可愛らしい方だって」
「可愛いなんて言ってないだろ」
セリが頬杖をついて否定する。頬は少し赤く染まってて、周りから見たらきっとフローラを好きなのがバレバレ。
「あら、でも今日フローラが何をしたこうしたって話が全部可愛くて興味を持ちましたのよ」
「恥ずかしいです」
まぁセリから聞かなくてもフローラが天然で可愛いのは知ってるけど。
「フローラ様と恋バナしたくて、なかなか出来る相手がいないんですのよ」
「恋バナですか?」
不思議そうに聞き返すフローラと、セリは嫌そうな顔をする。悪いけど今日はフローラに未来のイーギス様を好きになるための布石を打つ日でセリの気持ちは二の次だ。
「私ね、この小説にはまってるの。フローラ様がもし読書嫌いでなければ、読んでみてくださらない?」
「いいんですか?」
取り出した本をフローラの前に置くと、小さな手でフローラが本に触れる。
「ええ。ぜひ感想を聞かせて」
「わかりました」
フローラの趣味は読書だから、きっとすぐに読んでくれるはず。ひとまずミッションが終わったことにほっとした。
あなたにおすすめの小説
『悪役令嬢』は始めません!
月親
恋愛
侯爵令嬢アデリシアは、日本から異世界転生を果たして十八年目になる。そんな折、ここ数年ほど抱いてきた自身への『悪役令嬢疑惑』が遂に確信に変わる出来事と遭遇した。
突き付けられた婚約破棄、別の女性と愛を語る元婚約者……前世で見かけたベタ過ぎる展開。それを前にアデリシアは、「これは悪役令嬢な自分が逆ざまぁする方の物語では」と判断。
と、そこでアデリシアはハッとする。今なら自分はフリー。よって、今まで想いを秘めてきた片想いの相手に告白できると。
アデリシアが想いを寄せているレンは平民だった。それも二十も年上で子持ちの元既婚者という、これから始まると思われる『悪役令嬢物語』の男主人公にはおよそ当て嵌まらないだろう人。だからレンに告白したアデリシアに在ったのは、ただ彼に気持ちを伝えたいという思いだけだった。
ところがレンから来た返事は、「今日から一ヶ月、僕と秘密の恋人になろう」というものだった。
そこでアデリシアは何故『一ヶ月』なのかに思い至る。アデリシアが暮らすローク王国は、婚約破棄をした者は一ヶ月、新たな婚約を結べない。それを逆手に取れば、確かにその間だけであるならレンと恋人になることが可能だと。
アデリシアはレンの提案に飛び付いた。
そして、こうなってしまったからには悪役令嬢の物語は始めないようにすると誓った。だってレンは男主人公ではないのだから。
そんなわけで、自分一人で立派にざまぁしてみせると決意したアデリシアだったのだが――
※この作品は、『小説家になろう』様でも公開しています。
【完結】仕事を放棄した結果、私は幸せになれました。
キーノ
恋愛
わたくしは乙女ゲームの悪役令嬢みたいですわ。悪役令嬢に転生したと言った方がラノベあるある的に良いでしょうか。
ですが、ゲーム内でヒロイン達が語られる用な悪事を働いたことなどありません。王子に嫉妬? そのような無駄な事に時間をかまけている時間はわたくしにはありませんでしたのに。
だってわたくし、週4回は王太子妃教育に王妃教育、週3回で王妃様とのお茶会。お茶会や教育が終わったら王太子妃の公務、王子殿下がサボっているお陰で回ってくる公務に、王子の管轄する領の嘆願書の整頓やら収益やら税の計算やらで、わたくし、ちっとも自由時間がありませんでしたのよ。
こんなに忙しい私が、最後は冤罪にて処刑ですって? 学園にすら通えて無いのに、すべてのルートで私は処刑されてしまうと解った今、わたくしは全ての仕事を放棄して、冤罪で処刑されるその時まで、推しと穏やかに過ごしますわ。
※さくっと読める悪役令嬢モノです。
2月14~15日に全話、投稿完了。
感想、誤字、脱字など受け付けます。
沢山のエールにお気に入り登録、ありがとうございます。現在執筆中の新作の励みになります。初期作品のほうも見てもらえて感無量です!
恋愛23位にまで上げて頂き、感謝いたします。
【完結】どうか、婚約破棄と言われませんように
青波鳩子
恋愛
幼き日、自分を守ってくれた男の子に恋をしたエレイン。
父から『第二王子グレイアム殿下との婚約の打診を受けた』と聞き、初恋の相手がそのグレイアムだったエレインは、喜びと不安と二つの想いを抱えた。
グレイアム殿下には幼馴染の想い人がいる──エレインやグレイアムが通う学園でそんな噂が囁かれておりエレインの耳にも届いていたからだった。
そんな折、留学先から戻った兄から目の前で起きた『婚約破棄』の話を聞いたエレインは、未来の自分の姿ではないかと慄く。
それからエレインは『婚約破棄と言われないように』細心の注意を払って過ごす。
『グレイアム殿下は政略的に決められた婚約者である自分にやはり関心がなさそうだ』と思うエレイン。
定例の月に一度のグレイアムとのお茶会、いつも通り何事もなくやり過ごしたはずが……グレイアムのエレインへの態度に変化が起き、そこから二人の目指すものが逆転をみせていく。すれ違っていく二人の想いとグレイアムと幼馴染の関係性は……。
エレインとグレイアムのハッピーエンドです。
約42,000字の中編ですが、「中編」というカテゴリがないため短編としています。
別サイト「小説家になろう」でも公開を予定しています。
やさしい・悪役令嬢
きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」
と、親切に忠告してあげただけだった。
それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。
友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。
あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。
美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。
転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます
山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった
「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」
そう思った時すべてを思い出した。
ここは乙女ゲームの世界
そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ
私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない
バットエンド処刑されて終わりなのだ
こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった
さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
リアンの白い雪
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
その日の朝、リアンは婚約者のフィンリーと言い合いをした。
いつもの日常の、些細な出来事。
仲直りしていつもの二人に戻れるはずだった。
だがその後、二人の関係は一変してしまう。
辺境の地の砦に立ち魔物の棲む森を見張り、魔物から人を守る兵士リアン。
記憶を失くし一人でいたところをリアンに助けられたフィンリー。
二人の未来は?
※全15話
※本作は私の頭のストレッチ第二弾のため感想欄は開けておりません。
(全話投稿完了後、開ける予定です)
※1/29 完結しました。
感想欄を開けさせていただきます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました
神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。
5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。
お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。
その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。
でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。
すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……?
悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。
※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
※少し設定が緩いところがあるかもしれません。