推しの幸せのために婚約破棄を狙う悪役令嬢ですが、当の推しが独占欲の塊になって逃がしてくれません!

桜咲ちはる

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2章 夢は侍女になることです

24話 好きなタイプ


「フローラ様の好きな男性ってどういう方なの?」
「お、おい何聞いてんだよ」

 私の質問にセリが慌てる。フローラも赤面して、え……と固まった。

「フローラに聞いてどうすんだよ。男でも紹介するのか?」
「もし該当する方がいるならそれでもいいですわ。でも単純な興味本位です」

 イーギス様を紹介するなんて言えないから。私の言葉にセリがため息を吐く。

「くだらねぇ。いきなりなんだよ」
「言ったでしょ?恋バナしたことないって。憧れてたんだもん」

 前世だって恋愛とは縁遠すぎて、恋バナしてる友達を羨ましく眺めていただけ。

「ナターシャ様は?」
「ナターシャはイーギス様だろ。婚約者なんだし」

 フローラが私に聞いて、答える前にセリが口を挟む。

「好きなのはイーギス様ですけど、私にも好きなタイプはありますわ。紳士で女性の扱いに慣れていて、いつも余裕そうな笑みを浮かべる。そんな男性素敵じゃない?」
「素敵ですね!婚約者の方もそうなんですか?」

 私の言葉にぽーっとフローラが頬を染めて尋ねる。

「イーギス様は可愛らしい方よ」
「かっこいいって言ってほしいな」

 頭が重くなり、聞き慣れた声が聞こえる。セリとフローラが驚いた顔をした。

「イ、イーギス様!?」
「僕に内緒でバームズ侯爵子息に会いに来たの?」

 何で?セリに会うことイーギス様に言ってないのに。

「お前、言ってないのかよ」
「私はフローラに会いたかったから、言う必要ないと思ってて」

 まさかこんなに早く、イーギス様とフローラが出会うなんて思わなかった。私はイーギス様とフローラの顔を見比べる。お互いどう思ったのだろう。

「ナターシャがどうしてるかなんて、使用人に逐一報告させてたからね。手紙でやりとりしてるのも知ってる」
「え、そうなんですか?」

 そんな気配全く気付かなかった。それを知ってて今まで泳がされてたというのか。

「で、それがナターシャのおすすめの本?僕にも見せて」
「は、はいどうぞ」

 フローラが戸惑いながら本をイーギス様に渡す。パラパラと捲って、イーギス様はフローラに本を返した。

「題名は覚えたから、僕も帰ったら読むことにするよ。恋愛小説みたいだけど、ナターシャはこういう男が好きなの?」
「え、ええ。そうですわね」

 ゲームに登場するイーギス様に似てるから。イーギス様が私の手を掴んで立ち上がらせる。

「今日は帰るよ。また会おう、セリ。フローラ」
「あ、ああ」

 イーギス様!と名前を呼ぶけど、イーギス様は私の手を引っ張ってすたすたと進んでいく。まだフローラとあまり話せてないのに。でもまぁ、あの本を渡せただけで今日は十分かな。

「イーギス様、フローラ可愛かったですよね?」
「そう?」

 馬車に乗り込んで、イーギス様はようやく手を離してくれる。正面に座ろうとしたら、イーギス様に腕を引っ張られて膝に乗る形になった。

「イ、イーギス様?」
「僕はナターシャの方が可愛いと思うけどね」

 にこっと笑って言うイーギス様に裏があるんじゃないかと思える。確かにナターシャは美少女だけど、ヒロイン補正のあるフローラの方が異性からは可愛く見えるはずだ。だけどお世辞にも浮かれそうになるほど、私は浮かれていたのかもしれない。
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