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34話 あるべき居場所
コツコツとヒールの音が響く。暗く冷たい地下は生活するには酷な環境で、ここにヒロインであるアミューゼがいるのは信じがたかった。
「出しなさいよここから!私はヒロインなのよ!!」
泣き叫ぶ声が耳に届く。牢を掴んで長いボサボサの髪を前後に振る姫奈先生。私はそっと近づいた。
「姫奈先生」
「あっ、あんた!ここから出しなさいよ」
私に手を伸ばし、姫奈先生が言う。こんな状態の姫奈先生を見るのが辛い。だから、
「出してあげます」
私が告げると、姫奈先生が止まる。姫奈先生がこうなってしまったのも私のせいだ。
「幻の花で作った紅茶です。飲んでください」
「……私に毒を飲ませようって言うの?」
キッと私を睨んで姫奈先生が言う。私は首を横に振った。
「これが、現代に帰る方法です」
「嘘よ!幻の花はリリーを助けるために使って残ってないのよ!」
私もそうだと思ってた。でもあの時、私の話を聞いたセイヴァンが2枚だけ花びらを保管してくれていたらしい。
「嘘だと思うならそれでもいいです。一生ここにいるだけですが」
「~わかったわ、飲むわよ」
カップを受け取って、姫奈先生は口をつける。これは賭けだ。私は魔王の力で元に戻ったし、リリーは転生者じゃないから行き来してないけど……幻の花を飲んで私がこの世界に戻ってきたこともあるから、アミューゼと分離して元の世界に帰れるんじゃないかと思ってる。疑いの眼差しを私に向けながら、姫奈先生がごくりと紅茶を飲んだ。アミューゼの体が光る。
「姫奈先生どうかお元気で」
消えゆく姫奈先生に最後の言葉をかけた。姫奈先生が手をぼーっと見つめながら体が透けていく。姫奈先生が消えても、アミューゼの体はどこにもなくて、驚いたけどすぐに納得した。アミューゼは元々転生者だから、この世界に存在しないのかもしれない。
「おい、お前何をした?」
私に剣を向けて、守衛が声を荒げる。この後のこと考えてなかった……。焦ってると、コツコツと足音が聞こえてくる。
「マイは浄化したんだ、魔王と同じように」
「セイヴァン様っ、でも……」
セイヴァン、来てくれたんだ。セイヴァンは守衛に巾着を握らせる。守衛は頭を下げて、後ろに下がった。
「ありがとう、何から何まで」
「マイの頼みなら何でもするよ」
私の腰を引き寄せ、セイヴァンが微笑む。私はセイヴァンの頬にキスをした。
「外に出ようか」
「うん」
セイヴァンに手を引かれ、牢屋を出る。姫奈先生とのことが解決したとは言えないけど、これが最善だったと思う。空を見上げた私の頭を撫でた。
「マイ、久しぶりにデートしよう」
その言葉にセイヴァンを見上げる。前にデートしたのもきっとそんな時間は経ってない。けど色々大変だったから、随分久しぶりな気がする。私はセイヴァンの腕に自分の腕を絡めた。
「賛成。どこ行く?」
「まずはドレスを見よう。マイに似合うのを選ばないとな」
そう言って笑うセイヴァンの腕を叩く。
「もう、買わなくていいって」
「だってレイン嬢とマイの似合う服は違うだろ?」
それはそうだけど……。レインの時は派手な服が似合ってたけど、日本人顔に派手なドレスは似合わない。私はセイヴァンに連れられるまま、ドレスショップに向かった。セイヴァンが選んでくれたピンクのドレスを着て、花畑に行く。魔王の問題が解決した今、心穏やかにこの景色を目に焼き付けられる。
「マイ」
セイヴァンに呼ばれて顔を上げた。セイヴァンが私の手を掴んで、指を撫でる。セイヴァンを見ると、やっぱりこの世界に戻ってきて勇気を出してよかったと思う。私には、この世界が一番好きなんだ。セイヴァンが私の左手の薬指に指輪をはめる。ダイヤモンドがキラキラと光る。セイヴァンが跪いた。
「マイ、俺と結婚してほしい」
セイヴァンの言葉に目を開いて驚く。付き合ったばかりだし、まだ子供だし……って思ったけど今の私はアラサーで問題ないのかと思い直す。
「マイ?」
「あ、うん。私で良ければ喜んで」
私が言うと、セイヴァンが私を抱きしめる。レインの姿じゃない私がセイヴァンと結婚できるか、という問題もあるけどそれよりもセイヴァンと一緒にいたくて私も抱きしめ返す。
「俺はこの先もマイしか愛せないと思う」
「私も、セイヴァンしか愛せないわ」
セイヴァンが私の頬に触れて、キスをする。この瞬間が最高に幸せで、永遠が続けばいいと思った。
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