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第一章 迷宮の国テルミア編

9 巨大遺跡迷宮アスモデウス1

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鼻歌交じりにイミナは大通りを歩く。とても上機嫌だ。
「なんだ、イミナ。そんなにうまくいってうれしかったのか?」
ううん、とイミナは首を横に振る。
「リミドさんの予想通りだったんだもん。やっぱりリミドさんはすごいなぁっと思って。うれしくなっちゃった。」
ふふふ、イミナは可愛らしく笑う。そう、実は俺はあの状況を予想していたのだ。通常は孤児として身分証だけをちゃっちゃと作って教会とかに預かってもらうのだが、冒険者として働くというのだ。必ず絡んでくる、絶対にだ。ましてや白髪の幼い少女だ。イミナの住んでいた地域、東出身のことを知っている人当たりが必ずだ。俺の予測をあらかじめイミナに伝えておいたのだ。そして予想通りビンゴだ。
「悪いねうちのが、小さな戦士ちゃん。あとでたっぷりしごいておくから。ロリコンなんだ、こいつ。」
「あぁ~。はい。」
「私はCランクのパネラだ。君みたいな小さな子がいると目立つかもしれないけど私みたいな女の冒険者だって結構いるからそういう人たちに仲良くしてもらうといい。」

優しい女の人にこんなことを言われた。
いや~そのあとは大変だったよ。女の冒険者の人たちががーっと近づいてきて「きみすごーい。」とか「私と一緒に冒険しなーい。」とか言われた。くっ、冒険者の女の匂い…汗…ぐっ!イミナの体になってから女には慣れていたと思うがまだ大人には慣れていなかったようだ。
「そういえばリミドさん。」
上機嫌なイミナが急にスキップをやめて立ち止まる。
「冒険者の人たちが近づいてきたとき、心拍数あがってたよね?」

「…。」

汗という概念の存在しない俺だが、汗をかいた気分になる。
「え、えーな、なんのことですかー。」
「あとでお風呂ね。」
「やめて!それだけは!」

そんないかがわしい刑は本当にやめてほしい。




「改めて見るとでかいですね。」

「そうだな。」

俺らは迷宮の前についていた。実はカウンターの人に止められたのだがそれを振り切ってきたのだ。さっきの男の話でも出てきたが、冒険者にはランクというものがある。それぞれ貢献度によってE~A、特例でSというのがあるらしい。普通は壁の外に沸きでる魔物討伐や薬草探し、お掃除とかそんなのをやってちまちまとランクを上げるらしい。しかしそんなのはめんどくさいわけだ。迷宮に入るには冒険者カードがあればそれでいい。まぁステータスのこともあったのだろう、カウンターの人はそれ以上強くは言わなかった。

そういうことだ。いやー仕方がないんだよ。だってイミナがやりたいっていうんだもん。
俺は心臓だから?従うしかないんだけど。

「とか言いながらリミドさんもわくわくしてるじゃん。」
「はぁ?これはイミナのわくわくだろ。」

心拍数が上がる。まぁイミナにあぁは言ったが俺が楽しみにしているのは本当だ。
ましてやずっと龍としか対峙していなかったのだ。様々な魔物との戦闘、仕掛けられた罠、そしてその先に待つお宝。くぅ~わくわくっすぞ。

ダンジョンの入口はだいぶ整備されていた。出店が並び、冒険者必須!とかいう宣伝文句でいろいろなものが売られている。俺らはそそくさとダンジョンに入ろうとする。しかし入口に立つ人に止められる。


「おいおい嬢ちゃん、ここは冒険者しか入れないんだぞ。危ないから帰りな。」
がさがさ、ばっ!
イミナは自慢げに冒険者カードを見せる。ふんす、という鼻息交じりに胸を張った。
「おぉ!?冒険者?それただの身分証じゃないかい?ちょっと貸して…うわ、本当に冒険者だ。」
カウンターの人に頼んだら快く了承してくれたのだ。あの(たぶん?)えげつないレベルを見たらそりゃあねとは思うのだが。
「まぁ…まだ駆け出しのEランクだ、低階層だけにしとけよ。ほれ、通れ。」
よし大成功。
俺とイミナはガッツポーズする。
「未知の魔物との戦闘だがんばるぞー!」
「「おーっ!」」

子供のようにはしゃぐイミナとリミドであった。
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