少女の心臓に転生しました~白髪少女の異世界転生冒険記~

第三章 魔法学園都市オクタグラム編

閑話 図書館に住む女

イミナがロイとフェイと仲良くなり、一緒にオクタグラムの図書館に出入りするようになり、それを良く思わない人物が一人いた。ホホミ=ジャバー、ツヴァイ級の生徒である。赤茶色の長髪の持ち主であり、あまり手入れしていないのか伸びた前髪は彼女の目を隠すほどであった。彼女は無類の本好きで、講義の数を最低限にしてそれ以外の時間をほとんど図書館で費やしているほどである。彼女がこの学園に入学した理由ももちろんこの図書館が目当てである。小さい頃から魔導書に触れているためか異常なまでの本への愛着を見せ、その本の香りや紙質、文字のインクや筆圧までも愛しいと思うほどである。彼女はその本とともに、静寂なときの中を永遠と彷徨っていたいと夢見ていた。ここ、変わった魔術についての書物が多く存在するエリアでは、その内容が故かめったに人が来ない。そこで彼女は図書館の中で最も静かな場所と言っても過言ではないこの場所で、一風変わった魔導書と静かな時を過ごしていたのだ。しかし、この滅多に人の来ない静かなエリアの空気を乱す輩が現れたのだ。それがイミナとリヴァイアサン、ロイとフェイのことである。彼女の唯一の心休まる時間と言っていいほどの、静寂の中での読書の時間を妨げるもの。こちらにも聞こえるほどの大きさの声で話すイミナたちは、ホホミにとっては憎悪の対象であった。
(どうして静かにできないのかしら。書物とは静かな時の中で嗜むのが礼儀なのに。)
彼女は恨みを込めてイミナたちをにらむ。その長い前髪からちらっと見える眼に、イミナは気づいた。
(やばい、にらんでるのばれた！やばいやばい何いちゃもんつけられるかわからない！)
彼女は根っからの暗い性格である。人と関わることを好まない、というかできない。それがゆえに彼女は自分の世界の中に浸りたいというタイプであり、静寂を好むのである。彼女にとって、群れを成してワイワイ楽しそうにする人種は危険な存在である。まともに意見のいえない彼女にとって、そういう明るい性格の持ち主と関わることはタブー。
「あの、こちらのこと見ていましたよね？」
「あ…あ…。」
(ぎゃあああやっぱりばれてたばれてたどうしよう！)
ホホミはうつむき、イミナと目を合わせないようにしている。
「すみません。」
え？
ホホミは顔を上げる。
「少し、うるさかったですよね。ご迷惑をおかけしてすみません。もう少し静かにしますので。図書館では静かに、常識ですよね。ふふ。」
ほほ笑んだ、可愛らしい白髪のイミナの笑顔。
ホホミは今まで感じたことない感情を抱いたのだ。
高揚感？興奮？緊張？不安？恐怖？
いな…それは…

ホホミ=ジャバー　ツヴァイ級109位　属性:火