少女の心臓に転生しました~白髪少女の異世界転生冒険記~

邪ま

文字の大きさ
62 / 69
第三章 魔法学園都市オクタグラム編

53 笑顔の意味

しおりを挟む
閑話はひとまずおしまい。
本編どうぞ。
----------------------

暗闇の中でイミナが立っていた。
心臓には穴が開いていて、苦しそうな笑顔で俺のことを見ていた。
やめてくれ、そんな顔をしないでくれ。
イミナがどんどん俺から離れていく。
やめろ、やめろ、やめろ!!!!

「「…っは!」」
(あ、見知らぬ天井だ。)
一度は言ってみたいセリフだが、さすがに言わなかった。

「…あ、イミナちゃん起きた!」
「…お、無事か。」
俺とイミナが目を覚ますと、そこには心配そうな表情のロイとフェイがいた。
体の感覚を確かめる。あ、制服破れてる。
「イミナ、大丈夫か?」
「はいリミドさん。ちょっとだけ体は痛みますが…。」
俺は急いで服の姿に変形する。よし。これでおっけーだ。
その際に俺自身の感覚を確かめたが、どうやらイミナの予測通り、魔力暴走を起こして意識を失い、また俺は暴走状態になっていたようだ。イミナの体のダメージを見るに、どうやら極装(ガイルドベント)を使っていたようだ。
「あ、トゥルガーさんは、トゥルガーさんはどこですか!」
「ここなのだ。」
寝た体勢のままイミナは上を向く。リヴァイアサンの股にイミナの頭が挟まっている感じである。
「おぉよしよし。よく頑張ったのだイミナ。」
「やっぱり暴走してしまいましたね。被害の方は?」
「グラウンドが一つ使えなくなっただけなのだ。」
「えっとねー、すごい怒られたんだけど。海龍帝王様と学園長が何とかしてくれて一切処罰がなかったんだよ。安心してねイミナちゃん。」
フェイは大きなため息をつく。
「危うく経歴に傷がつくところだった。まぁ…海龍帝王と白の悪魔の貴重な戦闘を見ることができたよ。」
「すごかったねー。私と戦った時とは全然違う雰囲気だったよイミナちゃん。」
「やっぱり、極装(ガイルドベント)を使っていたんですね…。トゥルガーさん、お怪我はありませんか?」
「ははは!まさか我の心配をしておるというのか、イミナは優しいのう。眷族であるおぬしに我が負けるなんぞあるわけなかろう!ははは!」
「そうですか、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
「なに、我にとっては赤子の手をひねるのと同然なのだよ!」
「えっとね、2人ともすごかったんだよ。イミナちゃん、私の闇魔法をパクっちゃったんだよ。びっくりしたよ?私の大事なアイデンティティ!」
「お前のアインティティなんてどうでもいい。問題は魔法を使ったところだ。お前が暴走しているときは、どうやら魔法は使えていたようだぞ。」
「どうなのだ?イミナ。魔法は使えるようになったのか?」
「えっと…今はどうやら魔力回路が疲弊しているようで。まったくの魔力切れです。」
「リミドから補充すればいいのではないか?魔力を共有しておるのだろう?」
「俺も魔力はすっからかんだ。」
この世界に来て初めてのことである。MPがゼロ。
今は浮遊も転翔も使えない。
「まぁ…じゃあ魔力が回復してからだね。」
「ちょっと待ってろ。魔力回復に効く食い物持ってくる。」
「あー私もついてく。」
「なんでお前までくるんだよ。」
「えーだってフェイ味音痴だから変なのしか選ばないじゃん…」


二人は言い争いながら部屋を出ていった。
それを確認して俺は口を開いた。
「ステータスを見る限り、魔力不可の呪いは消えていない。」
「魔力解放はどっちについたのだ。」
「俺の方についた。」
「…。魔法は、使えないんでしょうか?」
「たぶん、そうとも限らないと思う。極装(ガイルドベント)の時には魔法を使えていたんだよな?」
「あぁ。がっつり使っていたのだ。」
「えぇと…つまりどういうことですか?」
「俺の憶測だが…。おそらく極装(ガイルドベント)の時に魔法不可の呪いと魔力解放が打ち消しあって魔法が一時的に使える、みたいな状況だと思う。」
「えっと…じゃあなんで私は魔力暴走を起こしたのでしょうか?」
「俺のスキルもある程度はイミナに干渉する。そのせいで、しばらく使っていなかった魔力回路を魔力解放のスキルで強引に動かしたから暴走してしまったんだろう。」
「な、なるほど…。じゃあやっぱり、ガイルドベントの時しか魔法は使えないんですね。」
「なんなのだ、じゃあほとんど意味がないではないか。」
「まぁ…そういうことになるな。」
「そう…ですか…。」
イミナは激しく落ち込んだ。
「極装(ガイルドベント)の時だけ、魔法が使えるようになる。しかし、極装(ガイルドベント)はいわば暴走状態。制御ができない。余計厄介になったんじゃないか?」
「なぁに安心せい。おぬしがまた暴走したら我が鎮圧してくれよう。」




「イミナちゃん…どう?」
「どうだイミナ?」
「…。」
イミナは必死に魔力を込める。
魔法、魔法、魔法!
必死に頭の中で魔法術式を構築しようとする。
しかし、結果は目に見えていた。
「やっぱり、使えないようです。極装(ガイルドベント)の時しか魔法は使えないようです。でも安心してください、私は大丈夫です。魔法不可の呪いを解く、一歩になりました!この調子で頑張ります。」
イミナは笑った。
俺にはわかった。イミナはとても悲しんでいた。
その作った笑顔は、悲しい顔を隠すためのものなんだろ?

その夜。イミナは布団の中で泣いていた。


----------------------
イミナが魔力暴走を起こした原因について追加で明記しました。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

ポツンと建つ古民家食堂の店主(おっさん)は、元S級冒険者。

平木明日香
ファンタジー
かつて帝国を救った伝説のS級冒険者、ゼン・アルヴァリード。 すべてを捨て、山奥でひっそりと食堂を開いた彼の願いは、ただ一つ――静かな隠居生活。 しかし噂は広がり、旅人、商人、異種族の王女までが押しかけてくる始末!? 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだ……」 極上のグルメ、ちょっとズレた客人たち、時々バトルと懐かしき因縁。 笑って泣けて、腹が鳴る。異世界スローライフ×コメディ、ここに開店!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

処理中です...