異世界スクワッド

倫敦 がなず

文字の大きさ
14 / 30
第一章

13 天使

しおりを挟む
「私は、反対だ」

 ディケーネは強い口調でそういった。

 "話しかける扉"の話を聞いた勇一は、もちろん、その隠し扉があるダンジョン『嘆きの霊廟』へ行こうと提案した。
 だが、その提案はディケーネに強く反対されてしまった。

「なんで反対なんだよ?」
「『嘆きの霊廟』の周りの森には強力な魔物も多く生息している。それにここから行くだけでほぼ一日掛かる。数日間宿泊する為の道具や、水や、食料、それらの荷物をかついで一日歩くだけでもかなりの重労働だ。今のユーイチには荷が重い」

 そう、はっきりと実力不足だといわれるとちょっと辛い。
 またまた、勇一は心がへこむ。

 ディケーネとしては、『嘆きの霊廟』には何度か行っているが、結局たいした成果を挙げれずにいる。
 借金があったときは、お宝をみつけて一発逆転を狙って無茶をしていたが、今は違う。
 危険を冒し、重労働してまで、勇一と一緒に行くメリットがまったく感じられない。

 しかし勇一も諦められない。

「いや、危険かもしれないけど、ディケーネも行ってるんだし、何とかなるだろう。
 それに、ちょっとその隠し部屋の"扉の言葉"に心当たりがあるんだよ」
「なに? 扉の言葉に? ひょっとして扉を開けられそうなのか?」

「いや、そこまで確実じゃないけど、でも、行って確かめる価値は絶対にあると思うんだ」

 その説明に、ディケーネは腕を組み、眉間にしわをよせて"うーむ"と悩みこむ。
 美人は、眉間にしわをよせても美人だな。
 などと、まったく関係ないことを、勇一は心の中でちょっと思う。

「解った。そこまで言うならば、『嘆きの霊廟』行こう。ただ、ひとつ提案させてもらう」
「提案? どんな提案だ?」

「ああ、その提案とは、荷物運びポーターを雇うことだ。
 単なる荷物運びだけではなく、多少は戦闘もこなせる荷物運びポーターを雇おう。
 一人荷物運びポーターが増えるだけで、往復の工程で運ぶ荷物の量がかなり減る。
 それだけじゃなく、夜の警戒などで交代で寝るのも三交代できるなど、パーティメンバーの1人1人に掛かる負担が格段に軽減されるからな」

  ――――――

 まあ、そんな訳で、『嘆き霊廟』へ向かう際に荷物運びポーターを雇うことにした。

 もちろん荷物運びポーター用の奴隷を買うような金はないので、奴隷を貸出レンタルしてもらうのだ。

 過去にディケーネも、何度か荷物運びポーターとして、奴隷を借りたレンタルことがあるという。
 その経験を元に、奴隷を貸出レンタルしてもらうために奴隷商店へ向かう。
 もちろん、ディケーネを奴隷として売買しようとしたバルフォ奴隷商店とは別の店だ。

 話を聞くと、その奴隷店は基本的にかなりブルジョワ向けの奴隷を取り扱っている商会らしい。
 なにせディケーネは、女性一人の身で荷物運びポーターを雇って遠出していたのだ。
荷物運びポーターはもちろん女性で、それでいて沢山荷物を持てる体力があり、さらにある程度は信頼できる者でなければならない。
 多少貸出レンタル料金が高くても、信頼できる高品質な奴隷を取り扱っている店を使っていたのだった。

 そのブルジョワ向けの奴隷店、ニルダムア奴隷商店は、表道理に面する所に、立っていた。

「すっげぇ」

 ニルダムア奴隷商店の入り口で思わず勇一は思わず呟いてしまった。
 ゴクリとつばを飲みこむ。
 建物も見るからに豪華で目も見張る程に立派だったが、勇一が驚いたのは別のモノ・・だ。

 建物の入り口には、扉の左右に、槍をもった門番が立っている。
 その門番の、扉の左側に立っている女性は、なんとビキニよろいを着ていたのだ。

 ボン、キュ、ボンと言う擬音をそのまま形にしたような体型の女性。
 その女性の上半身は、巨大な胸の頂__いただき__#はその全貌を殆どむき出しにしていて、先っぽに、鎖でつながった小さな三角形の鎧がわずかに乗っかっているだけだ。
 下半身も、これまた大事なところに逆三角形の鎧が僅かに張り付いているだけだ。
 もう、色々あふれて見えてしまいそうだ。

「やっぱりこれだよね これ! 異世界つーたらビキニよろいだよね!
 冒険ギルドにいる女性冒険者の着てる鎧は色気の欠片もない、実用重視って感じのばっかりだったからな!
 ビバ ビキニよろい!」

 横からディケーネが『何を言ってるんだ、お前は』的な冷たい目で見ているけど、まあ、いいか。

 ちなみに門の右側に立っている人物は、ある意味もっとすごい。
 なにせ上半身、裸だ。
 むき出しだ。乳首もむきだし。まるみえだ。
 そう、右側に立っているのは、むっきむっきのマッチョマンだ。
 こっちの下半身は、股間の物をつつむような布しかつけていない。
 つつむように・・・・・布を巻いているので、股間の物のサイズが解ってしまう。もちろんメガマグナム、いやギガマグナムサイズだ。

 門の左右に立っている二人共、ハリウッド映画で主演できそうな程の美形だ。
 そして二人共、首に『奴隷の首輪』をつけていた。
 ようするに、この二人は門番と言うより、『こんな凄い奴隷を扱っています』という広告看板なのだろう。

 店に入ると、音もなく一人の男が寄ってきた。
 若い男なので、この店の店員なのだろうが、物静かで気品さえ漂っている。

「バルシュコール様、いつもご利用有難うございます」

 そう挨拶されて、勇一は『バルシュコールって誰のことだ?』とちょっと悩んでしまった。
 だが、となりにいるディケーネが「また荷物運びポーターを借りにきた」と軽く答えるのを聞いて、ディケーネの苗字がバルシュコールだということを思い出す。
 この異世界でも、基本はファーストネームで呼び合うのだが、相手を強く敬う場合は家名を呼ぶ習慣があるらしい。

「前にも貸出レンタルしてもらった奴隷をまた荷物運びポーターとして借りたい。まだいるか?」
「ニエルエンスのことですね。今でも貸出レンタル可能となっておりますよ。お連れしますのでそちらにおかけ頂き、少々待ちください」

 豪華なソファを薦められたので腰を下ろす。びっくりするぐらい座り心地がいいソファだった。
 さらに、お茶まで出してくれた。なんともすごい対応だ。
 小市民で貧乏症の勇一などは、落ち着かないぐらいである。
 ちなみにディケーネは、その横で、平然としてお茶を味わっている。

 肝がすわってんなあ。
 勇一は思わず関心してしまう。
 あれ、いや、そういえばディケーネって、元は貴族なんだっけ? 
 ひょっとして慣れてるのか?
 そんな事を思っていると、さほど待つこともなく、店員に連れられて、彼女が現れた。

 ぬわにぃいいいい?!!
 彼女をみて、勇一の目が飛び出そうになり、心の中で叫ぶ。

『元の世界のアイドルが、泣きながら裸足で逃げ出すレベル』の美少女が、
 ボーイッシュなショートカットが良く似合う、ネコミミの少女が、
 太陽のような光あふれる笑顔でにっこりと微笑む、天使の様な少女が、そこに立っていた。

「ニエルエンス・スィンケルです。宜しければ"ニエス"とお呼びください」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

30歳の英雄王は転生勇者を拾い無双に育てます

蒼井青龍
ファンタジー
山奥の小屋でのんびり暮らしていた 英雄王のライに、現世から転生してきた赤ん坊を立派な無双勇者に育て世界を魔王族から守る 英雄譚

処理中です...