20 / 30
第一章
19 愛称
しおりを挟む暗くなり始めている森の中
ヒュン、ヒュンと、空気を切る音と共に、行く筋もの光の筋が通り抜けていく。
三人で、射撃の練習を兼ねてレーザー小銃とレーザー拳銃の試し撃ちを続けていた。
ちなみに、レーザー小銃の射撃の腕前は、勇一がもっとも巧い。かなりの腕前だろう。
それに対して、ディケーネとニエスは、"射撃"と言う行為そのものを生まれて始めておこなう関係か、かなり下手だった。
若干、ニエスのほうが眼が良い関係で、"まだマシ"といったレベルだ。
だが、レーザー拳銃に持ち帰ると話が違う。
レーザー拳銃から発せられるレーザーを、まるで光の剣のように扱うディケーネの腕前は、圧倒的だった。
それに、ニエスが続く。彼女もかなり剣の扱いに慣れているようで、レーザー拳銃を巧く使いこなす。
それに対して、勇一はまったく駄目駄目だ。
剣の扱いなんてやったことない勇一は、普通に拳銃の構え方で使ったほうが、"まだマシ"といったレベルだった。
とりあえず、三人とも腰にホルスターを付けて、レーザー拳銃と、予備のバッテリーを常時携帯することにする。
レーザー小銃とに関しては、勇一とディケーネは、肩紐を使って肩に掛けておく事にする。
ニエスだけは運転の邪魔になるので、携帯しないことにした。
それから、他の兵装、例えば迷彩服、ヘルメットや防弾等を試す。
まずは迷彩服とヘルメットを試してみる。
ディケーネとニエスの二人は、とりあえずヘルメットを被ったのだが、サイズが合わずダボダボで使えなかった。
迷彩服も、どうみてもサイズが合いそうに無い。
勇一は、最初は安全の為に、常時ヘルメットを被ろうと考えていた。
だが、実際にかぶってみるとヘルメットが邪魔になって魔法のローブについているフードがかぶれないと言う問題が発生してしまった。
この異世界では、魔物達は、生き物すべての弱点である”首”を狙ってくる事が非常に多い。
ディケーネのような冒険者だって、頭でなくて首をねらう。
主に頭を守るヘルメットより、耐刃性のあるフードをすっぽり被ったほうが、”首”を守る意味ではずっと有効だ。
そんな訳で勇一もヘルメットを被るのは止めた。
迷彩服は、森の中で姿を隠すのに有効な気もする
だが、魔物は目でみるより、匂いや気配で敵を発見する物が多いので、殆ど意味が無い。
防弾チョッキは、弾丸に対しては有効だが対刃性能が低い。
この異世界では有用性が著しく低い。
結局、三人共、服装には大きな変化は無い結果となったいた。
ただ、勇一は暗視ゴーグルだけは、首にかけている。
もともとはヘルメットとセットの物だったのだが、別に単体でも使えるようになっていた。
見た目はスキーやスノーボードで使うような大き目のゴーグルにそっくりだ。
暗視だけでなく、熱反応探知や、望遠機能、録画機能もついているので、どこかで使う機会があるだろうと思い、とりあえず首にかけておくことにした。
他には、細かい点だが、三人とも無線機を取り付けた。
超小型のテレビのアナウンサーなんかが使っている集音マイクにそっくりの見た目で、服の襟元に取り付けている。
本来は、中継衛星を使って数百キロ離れた距離の相手とも話しが出来るという凄い代物なのだそうだが、現時点では、#装甲指揮車を中心に半径数キロくらいでしか使えないらしい。
それでも、無いよりはずっといいので、使用することにした。
「ユーイチ、ちょっと、いいか」
ディケーネが若干怖い顔で、声をかけてきた。
なんだろう。
勇一は、ちょっと身構えてしまう。
「ユーイチ、もう、くどくどと、これらの魔法具について詳しく説明しろとは言わない。
ただ、指示を受けたりする場合にも困るので、せめて各魔法具の名前くらいは教えてくれ。
それと、ついでといってはなんだが、あの妖精の名前も教えてくれ」
ディケーネはタツタを指差している。
「う、御免。たしかにそうだよな」
特にドローン『タツタ』は、もう今後はパーティーの仲間と言ってもいいような状態だ。
なのに、日本語が解らないディケーネやニエスには、ちゃんと紹介すらしていなかった。
さっそく三人でドローン『タツタ』のところへ行く。
「ディケーネ、ニエス。改めて紹介するよ。彼女の名は『タッタ』だ。
二人は彼女のことを妖精だと思っているようだが、正確には、彼女はドローンと言って、えーと……、まあ……、うん、人の手によって作られた、妖精の一種みたいなものだ。仲良くしてやってくれ」
「宜しくな、タッタ」
「よろしくお願いしますね タッタちゃん」
二人に挨拶されたドローン『タツタ』は、異世界の言葉は解らないものの、どうやら挨拶されていることは察したらしい。
日本語ながら、ちゃんと返事をする。
「私の方こそ、宜しくお願いいたします。
なお、蛇足かましれませんが、私のコードネームはタツタです。けっしてタッタではありません」
「ユーイチよ。タッタは何て言ってるんだ?」
「ああ、『私の方こそ宜しく』だってさ」
その後は各機器についての呼び名を改めて決めていく。
正式名称で呼ぶと、どれもこれも長すぎるので、愛称が有る物はその愛称で呼び、無い物は決めていくことにした。
まずは装甲指揮車だ。これはすでに愛称がある。
「このでっかい鉄の車の名は『クーガースリー』だ」
「スリーは三代目とかそんな意味だろうからいいが…クーガー? クーガーってピューマの別名だろう? この大きくて鈍重そうな乗り物の名がピューマなのか?」
「クーガーって言うより、ビッグトータスとか、アイアンヒポポタマスとかの方が似合いそうですよねー。なんでクーガーなんです?」
いや、俺に聞かれても困る。
名づけた奴に聞いてくれ。
非常に不評だったが、とにかく、呼び名は装甲指揮車に決まった。
次にレーザー拳銃と、レーザー小銃だ。
「なあ、タッタ。この二つって愛称ってあるのか?」
「レーザーピストルは正式名称『LB-P-02式』に対して、現場では『02式』あるいは『02』と呼ばれていました。
レーザーライフルは正式名称『LB-R-59式』に対して、現場では『59式』あるいは『59』と呼ばれていました。
なるほど。
とりあえず短い方の呼び方を使うことにしよう。
勇一が、ディケーネとニエスに説明をする。
「こっちの小さいほうが、『02』で、長くてでかいほうが、『59』だ」
「この光の剣のほうが『レイニー』で、十字を刻むボウガンのほうが『ゴーク』だな」
「『レイニー』と『ゴーク』ですね。覚えました」
うーん。
発音がかなり違う気がするが、こっちの異世界の言葉の発音だと、そうなってしまうんだろう。
まあ、こっちの人の発音に合わせるか。
そんな訳で『レーザー拳銃』 と 『レーザー小銃』に決まる。
そして、電動バギー、電動バイク、電動ジャイロらには、タツタの説明では"愛称が無い"との事だった。
「うーん、電動バギーとか呼ぶのもなんだし、なんか愛称つけるかな」
「はいはい、御主人様。この馬無しで走る馬車には、私が名前付けたいです」
ニエスが電動バギーを指差しながら、そういってきた。
電動バギーを一番運転しているのがニエスなので、もうすでにけっこうな愛着があるようだ。
「じゃあ、ニエスに名づけてもらおうかな。」
「やったー。それでは、私が名前つけますね。どんな名前がいいですかねー」
ニエスは電動バギーに近くで、腕を組んでちょっと悩む。
「決めました。 彼の名前は『ピェーピェー』ちゃんです!」
失敗した!
まさかニエスのネーミングセンスがこんなに特殊だとは思わなかった!
勇一は思わず頭を抱えるが、嬉しそうに『これからも、宜しくねピェーピェーちゃん』と、話しかけているニエスを見ると、いまさら駄目だとも言うわけにはいかない。
電動バギーに決定した。
残りの電動バイクと電動ジャイロは、勇一があわてて適当に名づける。
電動バイクは、バイクと言ったらこの名前しか思いつかなかった 電動バイクにして、
電動ジャイロは、もう単にインスピレーションにしたがって 電動ジャイロとした。
他にも機器はあることあるが、とりあえずこれだけ決めれば問題ないだろう。
0
あなたにおすすめの小説
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた
たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。
女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。
そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。
夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。
だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……?
※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません……
※他サイト様にも掲載始めました!
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる